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Zな彼女とネクロマンサーの僕  作者: キノコ二等兵
巨大人工浮島《ギガフロート》編
160/194

妹の誘拐

 放課後司とシフィルは即座に合流した後、カードゲームのルールをシフィルから聞きながら時折カードを買って遊んでいた。


「アタックフェイズに入るぞ。まずは、ハンターαで攻撃だ」


「ライフで受ける」


 司の置いたモンスターのカードでシフィルを削り切ると、一度残念と言わんばかりに項垂れるがすぐに立ち直り、素直に司を褒める。


「いやぁ、数時間でここまで上手くなるとは思ってなかったよ」


「30対1だぜ?勝ったうちに入らないでしょ。それもシフィルと同じデッキで事故をした所だしさ」


「それでも勝ちは勝ちさ。勝ち方に拘ってたりすると、嫌になっちゃうよ。カードでもリアルでもね」


 シフィルはそう呟くと携帯を覗く。司も時間を確認するために同じように自身の携帯を覗いた。


「(メッセージが来てる。相手は・・・・・・モモなのか?)」


 司がメッセージをめくろうとすると、シフィルは立ち上がりカードを鞄に入れてその場を発つ。


「シフィル!ちょっと待てよ」


 即座にカードを片付けた司はその後を追ったが、店外を出た時にはシフィルは遠くにいて追うことは出来なかった。


「どうしたんだよ・・・・・・いきなり飛び出してさ。腹痛くなったのか?」


 理由も分からないまま、司は先程見逃したメッセージを覗く。


 連絡の相手はクルミでなにか焦っていたのか打ちミスが文章内にいくつかみられた。


「大体の内容は分かるからいいけど・・・・・・」


 流すように見ているとたったの2文字に司は血の気が引き口を押さえてしまう。


「がっ・・・・・・うっ」


 その2文字は誘拐だった。そう、モモの誘拐だった。仕事の途中で行方不明になったようだ。


 行方不明になったと分かった理由は通勤の際にはGPSの使用が義務付けられており、その移動中に切れたから、という理由だ。


「ツゥー?」


 カオちゃんの声で我に戻った司は通勤の際に通る予定だった道へと急行すると、そこにはエヴィルとサブそしてハチの3人がモモを探していた。


「3人とも何かわかったことは!?」


「悪いが何もだ。どうやって移動していたかさえ事務所の方から連絡があればいいんだが、向こうも把握出来ていないらしい」


「文句を言っても始まらない。しらみつぶしで行くしかないだろ!」


 司は息を上げながら捜索を始めようとするが、ハチはその肩を掴んでエヴィルが引っ叩く。


「まずは深呼吸だ。目が点になっていては見つけることは出来ない。違うかツカサ?」


「それはそうだけど・・・・・・」


「そのままエヴィルちゃんはゼロワンと捜索を。俺はサブと行うさ」


「了解だ。行くぞ」


 司は再びエヴィルに叩かれると別の道を探し始めた。


 それから数時間かけて捜索を続けたが、足跡ひとつ見つからなかった。


「くそっ・・・・・・モモ、どこいるんだよ」


 太陽は沈み車の明かりが目に入り眩しさを感じるぐらいになったころ、なにか情報が入っていないか確認するために、司は事務所に電話をかけた。


「赤街・桃の兄、司レッドフィールドと言うものです。そちらで働いているモモのことですが、未だに帰宅しないのでそちらに連絡させていただいたのですが」


『そちらに関してはこちらも捜索を行なっておりますので伝えられることはございません』


「じゃあパートナーのナナさんは?彼女はどうなんですか?」


『同じく彼女も同時に・・・・・・』


「そうですか・・・・・・もし何かわかったら連絡下さい。お忙しい中すみませんでした」


 司は電話を切ると右手で近くの壁を殴りつける。本来なら痛みが出るはずだが、現在は痛覚を切っているため特に感覚はなかった。


「俺がシフィルと遊んでいたばっかりに・・・・・・」


「ツカサ、お前が遊ばなくても変わらないだろ。ふたりとは別の場所にいるのだから」


「それはそうだけどさ・・・・・・」


「逆に言い換えれば妹を信用していないということにもなる。それはお前が1番気にするところなんじゃないか?」


 どう返せばいいか分からないまま司はエヴィルと共に捜索を続けているとコンテナ置き場の方からシフィルの声が聞こえてきた。


「シフィル・・・・・・?どうしてこんなところにいるんだ?」


 慌てるように店を後にしたシフィルがここにいる理由を聞くため司は彼女の元へと向かう。


 コンテナ置き場へ入ってみたものの当然ではあるが広い故に音が響いて聞こえるせいで具体的な場所までは探し当てることは出来なった。


「今は妹の方が優先だ。どうしてこっちに向かう必要がある?」


「分かってる、シフィルは本命じゃないさ。うまく説明できないけど、こっちの方にモモがいる感じがするんだよ」


「家族だから何となくその気配が感じられるような?」


「ああ。そう思ってくれ。でもシフィルが動いているせいか波があってそれでずらされているような感覚なんだ」


 司はコンテナの1ブロックを抜けるたびに横断歩道を渡る際の左右確認のような動きをしていた。


 そうやって10つ目のコンテナブロックへと向かった所でシフィルがのコンテナに隠れるように滑り込んできた。


「シフィル、その腕の傷・・・・・・」


 誰が声をかけたのかわからなかったようで、シフィルは素早く袖下のナイフを滑り出しながら司をコンテナへと叩きつけてナイフを突きつける。


「・・・・・・何でついて来たのさ?君はさっさと家に帰ればよかったのに・・・・・・」


 シフィルはナイフを収めて司から手を離す。急なことで息が詰まった司は呼吸を整え妹が誘拐されたから捜索してと伝えるが、いまいち信用が得られないようでナイフが再び袖下からにょきりと飛び出す。


「苗字は違うがそれはただ仕事が理由だ。俺にとってはモモは大事な家族なんだよ!」


「・・・・・・」


 司の瞳を見て真実だと判断したシフィルはナイフを持ったまま離れると再びコンテナ越しに何かを見始める。


「それが本当なら君は妹を助けることに集中すればいい。僕はこの先にいる誘拐犯の目を引き付けるから」


「分かったが、相手は誰なんだ?」


「君には関係ない。誘拐された人は北口方面だから。また会おうね」


 そう言うとコンテナから身体を出して敵へと攻撃を仕掛けにいった。


「ツカサ。ここはあいつの言う通り私たちが」


「そうだな。でも何であいつはこんな所にいたんだろうな」


「後で確認する方向でいいだろう。行くぞ、見つからないようにな」


 ふたりは一度コンテナから離れるように移動するとシフィルから与えられた情報である北口へと向かった。

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