伝説の傭兵3
司たちが帰宅して木下と話していたごろ、学校では少女と男子学生の決闘が行われていた。
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!手も足も出ないかぁ!?あんだけの事をしておいてさあ!所詮は無能力者の戯言よ!」
「くっ・・・・・・」
決闘の空間は森林エリアとなっており、手入れされたものではない森林なため、非常に視界が悪くそれが少女の行動妨げていた。
しかしそれだけではない。彼女の足元にはそこから絶対に動かしてはいけないとばかりに数名の男女問わずの生徒が噛みつくように足を掴んでいた。
当然このような状態では動くことは出来ない。その上で高速で男子生徒は攻撃を続ける。
「ほらほらほらほら!見ろまるでチリのようにお前の命は飛んでいっているぞお!」
少女のライフが半分を下回った。飽きがきたのかいちど足を止めて少女に投降しろと言うと少女は小さく笑みを浮かべる。
「ふふふ、決め手が無いから投了しろってことかい?それも良いけど、ボクはゲームは最後までやるたちでね。例えどんなに不利な状況でもやるのさ」
「じゃあ望み通り最後までやってたらあ!」
「ま、待て弟よ!」
兄の言葉には耳を貸さず、弟は少女へと飛びかかる。高機動から放たれるナイフの突きは少女に届くことはなく、逆に弟の首は溶けるように身体と分かれた。
「んな!?」
足元の生徒たちは何が起きているのか理解出来ていない。
「へえ。クリティカル・・・・・・人間の重要な部分を切り落とせばワンパンか・・・・・・」
「ひ、ひえ・・・・・・」
逃げる動作を行おうとした時にはもう遅かった。足元の生徒たちは一瞬でそのライフを底まで散らした。
「お兄さんの方は結構冷静だね。ボクのこと知ってる感じかな?」
「伝説の傭兵と呼ばれているのはただのプロパガンダだと思っていたが、真実だったようだな」
「あんまり戦場では呼ばれてなかったけどね。他の名では呼ばれてたけど」
男子生徒は特定の場所に留まらないように移動しながら少女の隙を窺う。
右膝から小太刀を取り出すと、今度は自分の攻撃をする番というように森の中を走る。
「言っておくけど、もう君の立ち回りは覚えたよ。戦闘中に今よりも速くならないと勝ち目がないね」
「・・・・・・言ってくれる!」
男子生徒は太い針葉樹を粉砕するほどの脚力で少女へと飛びかかると、自らの得物を振り下ろす。
少女は小太刀を振り回すことはなく、男子生徒の腕を流すように地面へと落とす。
受け身を取りながら再び森へと消えていく。そしてもういちど同じように攻撃するが、先程と同じ返しが返る。
「ただの直線じゃ意味ないよ」
「貴様は俺の先生か!」
「ただあれだけ無能力者とか言うんだから余裕で勝てると思ってね。君たちと同じように煽ってるだけなんだけど?」
複数回繰り返していると、少女は小太刀を収める。素手だけでやれると判断したのだろう。
男子生徒はその油断が最後のチャンスとばかりに少女へと飛びかかる。
しかしその動きは先程までの直線的軌道ではなく、曲がる球のような軌道を描き少女の眼球へと差し込んだ。
「俺の勝ち———」
「片目を奪われたぐらいで勝ちだと思ったのが君の敗因だ」
「何っ——————?」
確かにその得物は少女の眼球を貫いている。しかしそれに一切狼狽えることはなく、逆に両腕から放たれる光の刃が男子生徒を斬り裂いていた。
「痛みが鈍いこのシステムで良かったね。少しでも勝利を確信出来る時間があって」
男子生徒ふたりのライフが尽きたことで決闘は終了し、少女———シフィルは通学鞄を片手に学校を後にした。