伝説の傭兵2
森林が生い茂り中の様子は全てカメラの映像で把握するような状態になっていた。
「いくらなんでもタイマンじゃないならキツいんじゃ・・・・・・」
カオルは映像を見ながら呟くと、司とマツナガは荷物をまとめて教室を後にしようとしていた。
「まっちゃんも司も見ないのかいな?」
「師匠にゃったらこういうの好きにゃと思うんにゃけど」
司は義手を弄りながら振り返ると、心底つまらなそうな表情でぼやく。
「前回の事をまとめ終わってないし、彼女がデータ通りの人なら、あの生徒に勝つ未来はないよ」
「それに決闘システムの映像はその場でなくても見ることはできる。賭け事にも使われるぐらいだからなこれ。司はどっちに賭ける?」
「堂々とやるんじゃないのまっちゃんや。ウヒョー綺麗に分かれてら。こりゃやっても儲かんねえな」
「勝っても1単位ぐらいしか変わんないなら俺もパスしよ」
「非にゃんしておいて結局にゃろうとしたじゃにゃいか!」
政府公式の賭博サイトを覗きながら正門を抜けると、エヴィルを含む数名が暑い中コートを着込んで待っていた。
「ツカサ。盛り上がっているようだが、何かあったのか?」
「お迎えご苦労さん。前に俺はサヴとやったやつだよ。今回は賭け事も入ってるから余計に盛り上がってる感じだけど。お前らも賭けるか?」
「知らんやつに賭ける金なんてない。私が賭けるのはツカサ、お前だけだ」
「中々嬉しいこと言ってくれるじゃないの。俺嬉しい」
言い終わった後恥ずかしくなったのか、司の元まで行き頬をつねる。理不尽だと思いながらも司はその行動を受け続ける。
つねられている司は無視して松長はエヴィルたちに個別行動中にあったことを尋ねながら支店兼自宅のマンションへと帰宅すると、リビングでは液晶テレビを騒ぎならみる木下たちがいた。
「ただいまー・・・・・・エヴィルさんやいい加減つねるのやめてくれませんかねえ?」
エヴィルにつねられたまま帰宅した司と松長たちには目もくれず、一喜一憂を繰り返していたので、何かの試合でも見ているのかと、足早にリビングへと向かう。
「キノ、何みんなで見てんの?」
「お帰りなさい主任。社長たちも」
「どこぞの決闘か。そんなことでいちいち騒ぐな———ってお前ら身内内賭博してんのか」
「師匠がこうなら部下もこうってわけにゃねこにゃ」
「ありがとさん」
「だから褒めてないから・・・・・・」
「んで賭けてる対戦カードは俺の学校のやつのシフィルとランク4のやつだろ?」
「シフィルって前に巨大人工浮島に来た人だよね?」
「はい。確か燐火って言う国のルナって言う人の専属の兵士で、二つ名は伝説の傭兵って言われてますね」
「伝説ってつくほにょとっても強いの?見にゃ所そんにゃに強くにゃいけど・・・・・・」
「私も言伝に聞いただけなんで伝言ゲームのように変わってるかもしれませんが、人型兵器バトルアーマーを一撃で破壊できるらしいですからね」
バトルアーマーは全長10メートルの機動兵器で、戦車の持つ砲身を六連装にしても片手で撃てる始末の化け物だ。
ニアとカオルの背中が冷や汗が流れると、司はその空気を変えようとパンパンと手のひらを叩く。
「夜からの仕事もあるんだ。ニアとカオルは準備してこいよー」
会話もそこそこに自室へ戻ると、レッドフィールドが前回使用していた義手と同型のものを製作しており会話は難しそうだ。
司は通学鞄を棚にしまい衣服を取り替える。
「休憩しよっかな・・・・・・ん?もうひとりの僕じゃないか?もうそんな時間かぁ。おかえり」
「おうただいま。修理の方は進んでるみたいだな」
ゴーグルを外して義手を掴むと自信満々にふふーんと鼻を鳴らす。
「今度はガンヴォルト君の電気でも炭に変えられないように強度を強化してるのだ。負けることは皆無だね!」
「んじゃ今から試すか?」
そう言い携帯を手に取ると、視線をずらし自信を一気に失ったような表情をするとやめとくと呟く。
「これで壊れたらメンタル持ってかれそうだからもう少し予備が出来てからね・・・・・・」
「それもそうだ」
司は脱ぎ捨てた学生服を見ながらぼやくようにレッドフィールドに尋ねる。
「まさか性別を誤魔化せる服が一般的な服にも組み込めるとはねえ。これのおかげで俺は男のまま暮らせるから本当感謝だよ。今でも女子の裸を見るとあれになるからな」
「衣服には結構隙間ばっかりだからそこに詰め込めばいいからねえ。難しい話じゃないよ。問題は水着とかの素肌を見せるものだよねえ」
「やっぱり難しいか?」
「水に触れても問題ないけど、もしものこと考えるとね上半身裸の女の子が生まれちゃう」
「痴女扱いは嫌だなぁ」
「理論上は大丈夫だから気にするレベルじゃないけどね・・・・・・あくまでも理論上だからねえ」
「・・・・・・・・・・・・じゃあ試してみるか?」
司の突拍子もない発言にレッドフィールドの頭は固まる。
「海に行って実験を行ってデータ収集。俺は妹たちと息抜きが出来る一石二鳥じゃないか?」
司の言葉に思わず笑い腹を抱えながら数秒経つと、笑いすぎて涙が出た顔を拭き取ると、良いねと賛成した。