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1日目の朝(5)

 司はスラスターを使わず、砂の丘を登る。ニアは口や目に入るであろう砂をゴーグルとマスクで防ぎつつ、砂に足を取られそうになる司の後を追う。強化装甲パワードスーツにはスラスター以外の武装はない。スラスターの実験なのだから、武装がないのは仕方ないし、そのスラスターも、ほぼ一瞬と言って良いほど短い時間しか使えない。その一瞬をどのタイミングで使うかのシュミュレーションだ。根本から勝つ気が無い。基本はただ避けるだけだ。端に行かないように回避すれば、多少のダメージは強化装甲パワードスーツで何とか出来る。

「(うむ、取り付けてみたはいいが、思った通り足の圧迫感がすごいな。それに、この浮いた感覚が結構きつい。専用の靴とかもセットでの販売になりそうだ)」

「ちょっと!まじめににゃってるの!?師匠」

「(どのタイミングで攻撃するか、武装がない以上ただ殴るしかない。投げるのも良いが、その前にニアの速度に追いつくので精一杯だし。それに掴もうにも、攻撃が全部死角からだし)」

「もう我慢出来にゃい!手加減なしにゃ!」

「(あの時はトリシュが間に入ってくれたから、助かったわけだが、あの男の戦い方を俺に投影して回避すれば、対策になるかな?)っ!?」


 砂に足がはまり取られた。抜こうとしても、その度に落ちていく。ニアの攻撃が来るときには、もう膝まで埋まり抜け出せそうにない。

「(やばいやばい!この状態まずいって!どうする!?投影してみるしかない!あの男ならどう避ける?今ある武装で最大限出来ることは!これだ!)」


 右足のスラスターを使うことで、ニアの目を奪い、砂ごと吹き飛びつつ体勢を立て直す。無論ゴーグルとマスクを付けているため、一瞬見えなくなった程度だが、それでも体勢を立て直すには充分な一瞬だった。

「(もう限界か・・・・・・今さっき取り付けた奴だから調整が出来てない上にこの暑さだ。1回でなるのはしょうがないか)」


 砂煙を利用しつつ、回り込んだニアの首への重いストレートが飛んできたが、ギリギリで避ける。先程までの回避と違い、無駄な動きを削っている。無論プロの回避と比べれば、まだまだ改善しなくてはならない点が多いが、何の武術もやってない人間としては、十分な回避行動だろう。


 司はブックスを開き、カオちゃんを自分に同調させ残った左のスラスターで一気に近づき、体当たりで吹き飛ばした。ニアも高速で近づいていたので、司の体当たりを重く受けてしまった。

「にゃばっ!」


 ゴロゴロドッカーン!いくら内部を砂漠地帯にしても広さまでは変わらないので、見えない壁にぶつかったニア。背中からな上、飛ばされていたら受身なんて取れるわけがない。頭からぶつけなくて、よかった。

『ニアが戦闘不能状態なので、シュミュレーションを終了します。お疲れサマー』

「おーい、ニアー大丈夫だよな?少し強く突っ込み過ぎた。すまない」

「むきゅうう・・・・・・やっぱり師匠強いにゃり。ニアじゃあ速くても決定的にゃやつ打ち込めにゃいし」

「だから師匠って呼ぶなし。運が良かったのと、スラスターがあったから出来たことだ。何も無けりゃ勝てるわけがない」


 運も実力のうちと言われるが、運があっても何かのサポートがなければ、運を使うことは出来ない。そういう意味である。


 司は、強化装甲パワードスーツを脱ぎ、メンテ用の台に乗せ自動メンテを使う。

「トリシュどう見えたか?こいつの機能は」

「あってもなくても、あまり関係ないように見えます。確かに砂煙を起こすのには使えますが、一般の道では何の使い道もない。二段ジャンプとして使えないこともありませんか、スラスターとしての役目を果たしていませんので、機能としては失敗というしかないですね」


 部下達は落ち込んでいく。殆どのメンバーが戦闘経験がない分戦闘に相性が悪いものも時には作ってしまう。これは何処の会社でもあることだし、経験のない部署に作らせる上がミスしているとしかいいようがない。ちなみに数少ない戦闘経験者は、木下だけである。他にもいるにはいるが、ただ見ていただけや、トラウマで殆ど憶えていないとかが多い。司は別だぞ。経験したところでそれを人に伝えるコミュニケーション能力が低いから。


 そんな空気が重くなっているときに、内線電話がかかる。それを1番電話に近かった木下が出る。

「はい、製作班です。んと、はい、はい、今からそちらの方にお伺い致しますので、はい、失礼します」

「何処かにゃ?電話は」

「資金提供者の一人みたい。主任、私はこの資金提供者の所に行くので、後のことはよろしくお願いします」

「俺が行くよ。主任としての務めだろ?キノの方がまとめられるしな。そう言うことで、俺はもう行くぞ」

「適当に手土産調達しにゃいと、評価下がるからね師匠!」

「おう、そう言うところの気配りは出来るし、任せとけ!トリシュ行くぞ」


 司とトリシュはすぐに部屋を出て行った。

「しっかし、あれで司は大丈夫なのかな?ちと心配」

「師匠の不倫相手もいるんにゃし、大丈夫にゃりカオル」

「だからあれは、司のボディーガードであって、不倫相手じゃないからね?ニア。相手は資金提供で1、2を争う人だからね。変なミス起こさなければ良いんだけどさ」


 部下から心配受けているなんて、思ってない司は大丈夫なのかな?トリシュはここの社員ではないし、その前に何故行くかも知らない。まあ、司も同じと言えば同じだけども。




 


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