2ndプロローグ2
『本部聞こえるか!こちらゼロワン』
「聞こえてるよ。さっきの爆発は?」
『人質の爆発だ!爆破させているのは能力者と思われる。空に飛んでる飛行船が奴らの指示船だと思われる』
「公式船なのにそんなこと出来るかな?」
『わからんが、位置的に可能性が高いのがあそこだって話だ!』
「はぁ・・・・・・了解。ハチ行ける?」
「しゃあねえ。ゼロスリー本部は任せたぜ?」
ハチは司と同型の強化装甲を取り付けると作戦車から降りると、飛行船に最も近いビルまで走る。
「ハチなんだけどよ。この飛行船は一般販売されてるやつか?」
『資料にはそう書かれてる。だがこういうことに使われている以上、隠して何か積んでるかもしれない。注意してくれ』
「分かった。俺も死にたくないからお前さんも攻撃を仕掛けろよ」
『当然だ。同時攻撃するから連絡を待っていてくれ』
ビルの屋上までハチが向かうのとほぼ同時に司からの連絡が入る。
「オレは右舷から行く。お前は左舷から飛び上がれ」
『分かってる。突っ込むぞ』
ハチと司は互いにゼロと叫ぶと、背部に取り付けたスラスターを起動させ一気に飛行船へと近づく。
弾が届く距離まで近づいた所で2人は壁に衝突したような感覚に襲われ態勢を崩す。
「ビームフィールド!?民間はまだ提供されてない筈じゃないのか!?」
『武器は目立つからそれを付けたか。大型タイプの分で突破は俺じゃ難しい。ハチは突破出来るものあるか?』
『じゃあこれを使って!もう1人の僕!』
作戦車からの無線が司に入ると、槍が一直線に司へと飛んでくる。
司はそれを回収すると1度地に足を付ける。右腕の義手が耳障りな音を立てると同時にその槍を飛行船の操縦席目掛けて投げ込んだ。
「全てを貫くはこの一撃!破壊の聖槍!」
右腕が悲鳴を上げつつも音速を超えたその槍はビームの膜を容易く貫き飛行船の扉を砕いた。
『行くぞ!ハチっ!』
司は割れた膜へと飛び込み、ハチはその膜を修復しようとしたことで全体的に薄くなった膜に鉄塊を差し込むことで2人は飛行船への侵入に成功した。
侵入と同時に銃撃に襲われるが、それをハチは即座に作り上げて鉄塊で、司は投げた槍の形状を変化させ壁に変化させることでそれらを防いだ。
「投降しろ!お前達も目的を達成出来ずに死ぬのは嫌だろ!」
「投降する気があるなら元々こんな行動を起こしていない。逆に僕たちの前に現れてくれてありがとう」
主犯格はカツンカツンと音を立てながら歩みを司達へ進める。
「ここに来ないで飛行船を落とせば楽だったものを」
やれやれと呆れるようにため息を吐くと、足下に青い稲妻模様の蛇が床を走り壁を貫いて司を攻撃を放つ。
「痛っ!」
義手だった為静電気で痛みを覚える程度だったが、隙間から見える主犯格の表情から予想外の反応だったらしい。
「絶縁体を使用しても無駄な筈なのに君の能力は資料とは違うのか?」
空いた穴から見えるその姿はおさげ髪を腰まで伸びる青年が立っている。
「(絶縁体関係ってことなら電気系か)」
「ゼロワン!後ろみろ!」
ハチの忠告で後ろを振り返ると、先程の青年と同様の服装をした青年が突きを放つ。
スラスターを噴射させて何とか回避するとお返しにとばかりに弾丸を青年に放つ。
その弾が近づいてきた青年に当たることはなく、その前にいたのはおさげ髪の青年だった。
「僕らに復讐の機会を与えてくれて感謝する」
「レッドフィールドじゃなくて司自身への殺意・・・・・・試作品関係か!」
「今度はあなたが苦しむ番だ!」
そう叫ぶと同時に青年は蒼い電気を身体に纏い、司へと飛びかかる。
「サンダーブリッツ!」
白兵は選択肢には選べない。司は距離を取りつつ即座に製造した拳銃の機能を持った蛮刀を作り、そこから弾を撃つ。
電気が弾の軌道を変えてしまい当たらない。ハチも援護に入ろうとするものの、ただ触れようとしてきたもう1人の青年と見合って司に近づけないでいた。
『もう1人の僕!フェイカーの開発したあれを使うんだ!そうすれば!』
「まだ早い!」
「何か手があったとしても、君だけは持っていく!」
蒼い電撃は司を捉えると、その右手に持っていた蛮刀は弾け飛んだ。
「くそっ!」
がむしゃらに殴りかかるとそれも綺麗に流されてしまい、大きな隙を生むことになってしまった。
次の攻撃は避けられない。そう判断した司は攻撃に転じられる前に外部装甲を強制排除しつつ左手の蛮刀の弾倉を入れ替える。
「無駄なっ!」
外部装甲の破片はその電気によって司へと襲いかかる。
ザクザクと同時に刺さり司は呻き声を上げる。
「おわりだぁ!」
おさげ髪の青年は左胸にあったナイフを取り出してそれを突き出しながら司へと近づいた。
「・・・・・・!」
1つの銃声がなると、おさげ髪の青年は足を止めてしまう。
先程の衝撃は何だったのかと視線を動かすと、なんと自身の胸から出血が見られたのである。
「対能力者用の弾丸だ。弾の表面にも同一加工が為されてるから、その圧倒的防御性能でも無駄だ」
受け入れることが出来ないようで、青年はもう一度電気を纏おうとするものの何も起きない。
司はこの時間を無駄にしないために、右手を強く握りしめて拳を放つ。
「鉄屑の拳ォォォ!」
「がっ・・・・・・」
ゼロツーの技だったそれは司の腕力では劣化したものでしかないが、義手だったおかげでおさげ髪の青年意識を刈り取るには十分な火力だった。