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Zな彼女とネクロマンサーの僕  作者: キノコ二等兵
レッドフィールド編
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心配と考察

「よし!当たり前だが何も仕込んでないな。すいばりを皮膚から飛ばすみたいなことされたら無理ですけど」


「すいばりが何かわからんが、監視はほぼあの拘置所で済ませている。元々こんな行為は必要ないだろ」


「そうだなぁ・・・・・・」


 おしまいだと言うように背中をパンっと叩くとそこが痛むのかその部位をさすりながら立ち上がる。


「本当に好きなことをしても良いんだな?」


「人間性を疑うもの以外ならいいよ。君が傭兵活動を続けたいならそれでもいいし」


「それじゃあな」


「1日3食は個人で食べてもいいが決まった時間に出すからそれは認識しといてくれよ」


「了解した」


 傷を持つ少年は松長に対して適当に答えると、指定された個室へ行くために廊下を進む。


「(あんな奴らに負けるなんてな。やはり俺たちは旧人類(オールドタイプ)なんだろうか?通常薬物投与をすればそれが使えるかどうかは別として能力は発現する。故の化学能力者と呼ばれる物があるわけだ。しかし俺たちのように発現しないケースもごく稀に存在する。するのが前提だからこそ、差別されてきたわけだが)」


 部屋の1つから音が大きく漏れていた。扉が微かに開いてるのが原因のようだ。


 傷を持つ少年は忍び寄るように近づき覗き込む。


「くっそー誰だよ床に物を置いたやつー」


 司は部屋の中では靴を脱いでいたようで、タンスの端に指をぶつけて倒れ込んでいた。


「履いてるのが前提なんですから、それは主任の自業自得でしょう」


「いやね?ずっと靴履いてたら蒸れちゃうじゃん?妹たちに会ったら臭いって言われて俺のメンタルボロボロになっちまう」


 木下と突撃銃を持った少女は呆れながらため息を吐き、少女は司に手を伸ばす。


「ほら立て」


「ありがとさん」


 司はベッドに腰を降ろすと大きく息を吐く。


「久しぶりに訓練しないといけないなぁ。やっぱり毎日体動かさないと体力結構落ちるし」


「・・・・・・なあレッドフィールド。あんた本当に今目の前の景色見えているのか?」


「どゆ意味?視線は合ってる筈だと思うが」


 司の言う通りその視線は確かに少女を見ていた。それは覗き込む少年の位置からでも見ることが出来た。


 木下と少女は1度目を合わせると互いに頷き合い司から離れると指の1つを立てる。


「今どの指を立ててるのが分かるか?」


「ちょっと待ってくれ・・・・・・薬指か?」


「やっぱり見えてないんだな・・・・・・キノシタ氏は気づいて?」


「まあ。検査はしていましたから」


「自分の上司なら放置はまずいのでは?」


「俺がそう言ったんだよ。家族に心配して欲しくなったからな」


「その結果がこれか?」


 少女は睨み付けるが、司は気づかぬままただ少女を見つめる。


「・・・・・・キノ。説明を」


「よろしいので?」


「心配してくれてる人に何も説明しないのは問題だろ?だからさ」


 木下は数秒の沈黙ののちに口を開く。


「まず初めに主任はここに来るようになってから睡眠は取れていません」


「へえ。ベッドでいびきかいているのを見たんだか、違うのか?」


「俺はもう1人の俺、つまりはレッドフィールドと同調して初めて1人の人間な訳だけどさ。俺はこうだろ?」


 ありもしない右腕を上げると少女はその動きを見て理解を見せる。


「レッドフィールド女史の方は腕の損失はないがお前はある。どっちが主人格か分からないのもあって1人に戻ったときにどうなるかは分からないと言うことか」


「普通なら分かるんだと思うんだけど、俺自身初見でやっちゃったのが原因だなぁ」


「2人で1人である以上分裂しているということは常時エンジンをかけているような形ですね。どちらかの身体を展開し続けなければならない。元々主任は1人で有機生命体の展開にはとても負荷がかかる」


「俺もレッドフィールドも互いに負荷の症状がある。それもわからなくなってる原因だな」


「主任の場合は肉体疲労ですね。睡眠が取れたとしても筋肉疲労を解除は出来ません。それが長時間続けば五感にも影響は出ます」


「レッドフィールド女史の方は逆に精神疲労か?」


「ああ。本人も胃がむかむかするとは言っていたけど、俺よりはマシってことで妹たちにも会ってくれてた」


 本来なら司本人が1番会いたいだろうに会って心配させるよりも、表向きは変化が見られないレッドフィールドが会いに行っていたと言うわけだ。


「厳しいな・・・・・・手を伸ばせばいつでも会える距離にいる時もかかわらず、会えないのはどれだけ苦しいか・・・・・・」


「同情はなしで頼むよ。俺が選択した結果だからな。きっと妹たちも分かってくれるだろうし」


 そんなことを言っているが、司の目はいつ泣き出してもおかしくないように見えた。


「はぁ・・・・・・キノシタ氏、信用は私にはありませんがこいつの面倒見させていただけますか?」


「私が決めるものではありませんので」


「俺としては嬉しいな。正直言って歩くのがキツいし警護が付いてくれるのは助かるよ」


「だが、この警護はお前たち2人が同調するまでの話だ。それ以降は一般的な護衛に戻る」


「この建物のみんなも守ってほしいからそれでもいいよ、ありがとな。ええと・・・・・・」


「資料読んでないんですか・・・・・・主任」


「この視力で見れるわけないでしょうが。名前を聞くタイミングだってなかったし」


「なら教えてやる。エヴィル・S・ギガフロートだ」


「エヴィルねえ・・・・・・いい名前じゃん。よろしく頼むよ」


 司は虚空に手を伸ばすと、少女は突撃銃から手を離しその手を掴み握手していたのを見ると、外で覗き込んでいた傷のある少年は思うところがあるような表情を浮かべつつ、自分の部屋へと足を進ませた。

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