司&雷電VSフェイカー
司が動く前に雷電は矢に身体を貫かれる事を気にもせず3人の間に入り小機関銃の弾を全て弾く。
「雷電!」
「司動けるか!」
「瞳さんのほうがやばい!一度退がる!」
銃弾を弾きつつ司と瞳へ近づけさせないように攻撃を加えていく。司の援護がないとみたフェイカーは目標を雷電に変更し、盾内部の銃口を開くと光の刃が雷電へと飛ばされた。
高速で放たれたその刃に小太刀を当てるが、衝撃もないまま、雷電の腹部へと吸い込まれた。
「ぐっがっ!?」
痛みに対して損傷は少なく、行動に支障をきたすものではない。
右手の小太刀を鞘に納めると同時にバックパック内を改造した空き缶をフェイカーへと投げつける。
小機関銃でそれを撃ち抜くと白い煙がフェイカーを包み込んだ。
フェイカーは冷静に盾を背中のユニットに横向きで固定すると、左腕部の装甲を盾になるように展開しつつ煙の外へと飛び出す。
気配はない。どちらもこの部屋を一度出たのは確実だろう。
その間に銃の弾倉を入れ替える。
『(レッドフィールドはあの女の化け物を目的に来ている。追いかける必要もなくここを通らなければならない)』
待っているだけでどうにかなるのなら、わざわざ追う必要もない。敵地で怪我人を放置するような人間なら元々こんな所に来ていない。
だが彼らは化け物だ。想像できないことをやってのけてくるに違いない。
フェイカーは準備を怠ることもなく、煙が薄れていくのを待った。
その頃部屋を出た雷電が見たのは切り口から出血を抑えるために圧迫を泣きながら続ける司だった。
「司・・・・・・」
「止まらない・・・止まらないんだ・・・俺に力がないから?場所が悪いのか?どうすればいいんだよぉ・・・」
肩まで切られたしまったせいか圧迫がうまくいかずにダラダラと血が流れていく。
雷電は自分に刺さった矢を抜きその部分を熱で赤くなった刃で焼くと、司と同じように膝をつく。
「とりあえず焼いてみる。処置はその後でも問題ない筈だろ?」
「う、ああ」
その場を退き雷電が右腕に刃を当てる。
呻き声を上げる彼女に心を痛めながらも処置を施す。
出血が落ち着いたところでバックパック内の消毒液と包帯を取り出しそれを巻きつける。
「取り敢えずはこれで小康状態になるまで観ておくしかないな。お前はどうする?」
無力な自分に絶望しながら腰を下ろしている司は、返す言葉もなくただ1人黙り込んでいた。
「・・・・・・司!」
「はっ!」
強く叫んだ雷電の声でふわふわしていた意識が身体に戻ってくる。
「お前のせいで怪我をしたわけじゃないんだ。気にすんな」
「あいつ・・・・・・今回だけは許せない。正規品を殺してからはもう2度と殺さないって決めたけど、やつは仲間・・・いや、部下でさえ自分の命令とは少しでも違うことをしたら殺すような人間だ。飛躍させれば能力者に関係する人間も化け物として殺す。つまりは俺の家族を、妹たちを殺すってことだ」
「・・・・・・司」
「だから殺す。今回は自分の意思で殺してやる」
ふらつきながら立ち上がると、ニアたちに連絡を入れる。
「ニア、カオル。例のやつを射出してくれ」
『了解にゃ!でもまにゃりにアンニョウンがいるからそれを仕留めてからにゃ!』
「構わないから射出しろ」
『にゃー壊れても知らにゃいよ?』
「時間がないんだ」
『仕方ないにゃー15秒待ってにゃ』
無線を切ると即座に2人に座標を送りその場所に鉄の塊でできた箱が壁を砕いて司の前に降り立った。
「10秒じゃないか。本当俺が師匠って呼ばれる要素ねえな」
ぼやきながら箱に触れるとガチャンと音を立てながら中身を現す。
「・・・・・・雷電。最初で最後の命令だ」
「なんだよ。姫のことなら当然だが守るぞ?」
「それが聞ければそれで良かったよ。小太刀を一振り借りてもいいか?」
「それが最後の命令か?」
雷電は鞘に収めたままの小太刀を司に投げ渡す。それを手に取った司は即座にそれを抜き、包帯が外れた右肩の上に刃を置く
「バカ!何をするつもりだ!」
「瞳さんに腕を返す。彼女が本物とか偽物とか関係ない。この腕で俺は助けられたんだ。それにな雷電———榊、もうこれ以上耐えられないんだよ」
「お前・・・どこでその名前を・・・」
「俺が知らない筈なんだよな。けど知ってる。つまりはそういうこった・・・」
乾燥した笑いを出すと刃をゆっくりと下ろしていく。そして司は遺言のようにこぼす。
「あとは任せた」
痛みを感じないように、司は一気に刀を振り下ろした。