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プロローグ01

 鳥がちゅんちゅんというツイートを呑気に聞けるような朝。人々はその音(実際には目覚まし時計だろう)で目を覚ましている。一軒家としてはかなり大きいこの家を除いては。


つか兄!いい加減起きてよ。学校遅れちゃうよ!」


 ペチペチと可愛い音で叩かれやっと起きた兄はう~んと体を伸ばしながら起き上がる。そして起こすために自分と同じベッドの上にいた妹の方を向いて自分の髪をカシャカシャ触りながら、

「おはよう~モモ。いつも通り起こしてくれてありがとな~」と目を瞑りながら言い、おはよう司兄と妹も笑顔で挨拶を交わす。

 

モモは司が起きたのを確認して、ベッドから降りて司に、ご飯出来てるから早くね。クルミも待ってるからと、笑顔で言って部屋を出て行った。

 

 寝間着から普段着に(彼の行く学校は制服制ではないため)素早く着替えた司は、授業道具が大半を占める大型のポーチを肩にかけ、妹のいる1階に向かう。


 1階のリビングには、うとうとと今にも瞼を閉じて寝てしまいそうなクルミと、ほかほかのご飯を注いでいるモモがいた。


「おはようクルミ~」

「おはよう…司兄さん。今日も髪爆発してるね…いい加減でた後髪を拭いたら……?」

「そう言われてもさ~これでも拭いてるけど、長いのが悪いんだ……今日髪切りに気分が乗ったら行くわ」

「はいはい司兄は早く食べて、司兄が起きるのが遅いから話す時間ないんだからね!分かってる?」

 起こした時とは感じが全く違うと思われるだろうが、モモが言うことは正しい。普通新学期が始まる日に早く出ないはずがないが、司はそんなのは関係ないのか、タイマーをセットせず寝てギリギリなのだ。注意されるのもしょうが無い。


 へいへいと司は適当に答え、椅子に座り、モモが注いでくれたご飯をたくあんと海苔の三点コンボで素早く食べる。あっ、もちろんしっかりかんでいるぞ。


 現在の時刻は7時15分。人によってはもう出ないと間に合わない、司たちは(司は歩いて行ける距離だが、基本二人と一緒に学校に向かうため早く出る必要がある)そこまで早く出ないといけないわけではないが、それは司の所有するバイクに乗ったときだ。


「おっし!ごっさっさとっ」

「司兄は本当よく分からない言い方するよね。まったく」

「ん?そうか?ごちそうさまを言っただけだが?」

「多分あれじゃ普通の人、理解できない」

「状況を見ればさ、どういう言葉かは理解出来るだろ?」


 司は食事を終えたが、その言い方について文句を言うモモとクルミだが、司はそれを察すれば理解出来るという人任せなところが、人から好まれない。二人はそれを理解しているからこそ注意し続けているのだ。いいよなあ、そんな家族で。

 

 3人は皿洗いをロボットに任せ、ガレージにあるバイクに乗る。無論これは、サイドカー付きのだ。一応二人も免許は取得している為、司が乗らず、妹二人が乗って行くなら付けなくてもいいが。


「それにしても司兄?」

「ん?何だ?」

「いつもありがとうね。本当、司兄がいなかったらあの学校まで行くの大変だもん」

「感謝するのは毎日起こして貰っている俺の方だろ。それに、朝早く起きたほうが三文の得とも言うしな。この程度分けない」

「そう言ってまたまた~。きつかったら、言ってよ?モモ達電車で行くから」

「きつい?そんな時は来ないさ。来るのは睡魔だけ」

 

 こんな感じで話をしつつも、司のバイクは一般レーンから高速レーンに移る。金がかかるとはいえ、一般レーンを使っていたら、通勤ラッシュで、まともに進むことも出来ない。朝は使うのを強いられていると言っても良いぐらいだ。


 高速レーンを使うと言っても、そんな長い距離ではないため、もう一般レーンに移るとこまで来てしまった。そんなに飛ばしてはいないぞ。


 二人の通う学校は、改修工事が進んでおり、設備も充実して来ているため、学力向上の面で一般の学校より優れている。そのため生徒も多い。まだ、8時前だというのにもかかわらず、正門前には四~五十人はいそうな生徒の数だ。


 ちなみに司の所では、ホームルームが始まる寸前でも学校に来ていない生徒の方が多い学校だ。そこに学力の差が出るのだろう。当然と言えば当然だが。


 正門前で降りるのはかなり目立ち、二人に迷惑なので、正門が見える所に止める。


サイドカーから降りた元気いっぱいのモモと、いまにも睡魔で倒れそうなクルミに、行ってらと声を掛け、司本人も学校に向かおうとしたその時、バイクの燃料が底を尽きてしまい、止まってしまったのだ。


 一応このバイクには、自転車に付いていそうなペダルやチェーンが取り付けてはいるが、それを漕ぐとなるときついどころのレベルではなく、さらに今はサイドカーが付いている。どうやって向かおうか……。


 司は結局漕いで行くことにした。せめて、ギアが付いていればもう少しは楽だったろう。だが、文句は言ってられない。普通はペダルは付いていないのだから文句は言ってられない。


 司は立ち漕ぎで、どんどん進んでいく。無論、先程家から妹達の学校に行った時のようには行けない。見た目はバイクでも、今は自転車もどき状態の為、一般レーンを使っての通学しか出来ない。こういうときに限って渋滞なのがいつもだが、運が良いのか悪いのか、今日は司の学校方面に進む車両は少ないようで、レーンは空いている。おかげで歩道を走らずに済んでいる。だが、いくら車が少なくても司のバイクもどきはかなり遅いため、クラクション鳴らされる可能性はあるが……。


 それから30分後、学校の駐輪場に司は雨に濡れたと言ってもばれないぐらい汗だくの状態で到着した。これだけなら後で拭いたりすればいいのだが、司のクラスがある校舎は学校の中でも最も奥にあり走らずに行くと、良くても5分。走って行っても3分と、今の時間だと少々きつい。けれども諦めて遅刻になる訳にはいかない。頑張れ司。走って間に合えばいいことがきっとある!。


 汗だく司は間に合うことを信じて走って校舎へ向かった。


 


 


 

 


 


 


 


 

 




 


 



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