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バーチャルwar  作者: ムーンライズ
7/34

未知の艦、航空母艦

 あれから一週間、毎晩のように菊地と小野は

 開発部に通い詰め平田と他の研究者達と

 議論を交わしていた。

 議題は総て空母や飛行機に関連する兵器開発で

 菊地は無線機とカタパルト、ロケット砲の開発

 を平田に頼んだ。

 平田は毎日増えていく注文に疲れ始めていたが

 菊地が遅くまで一緒になってやっている姿を

 見て自分を奮い立たせて頑張ることにした。

 そして今日は午後から造船会社、各社を

 長官室に呼びだし空母と新造艦種の生産計画

 と合わせて発注を行う事になっていた。

 一週間の時間を費やしたのは、新造艦と改修艦

 の性能を決めるのに時間がかかったからである。

 長官室には菊地と小野と平田、造船会社からは

 大手の川島造船と三島造船、中堅の市川造船と

 釜一造船の代表と設計技師が集まっている。

 本来であれば正規の手順を踏まなければ

 ならないが、時間の短縮と何よりも

 大鑑巨砲主義者達の知らない所で済ませた

 かったのが本音なのだ。しかし予算の都合上

 経理部には内々で話を通しておいたのである。

 会議は小野少佐が進めた。


「それではこれより急務となりました新造艦と

 改修艦の発注計画をさせて頂きます。

 お手元の資料に目を通しながら聞いて頂きたい

 のですが、海軍としては戦術の見直しを計り

 現在の砲雷戦から航空戦主体に切り替える

 ために航空母艦と防空艦の配備を第一優先と

 考えております。」


 室内が少しざわついているが小野少佐は続ける


「航空母艦ですが海軍では新種になり皆さん

 理解できないと思いますが航空輸送船のよう

 なものであります。

 資料にありますように新造艦として四隻を

 一年で、また退役の決まっている航空輸送船の

 飛龍型の改修工事を六ヶ月でやって頂きたい。

 また、防空艦ですがこれも海軍では新種になり

 現在の艦隊戦の装備ではなく対空戦に特化した

 艦艇とします。

 防空艦ですが既存の巡洋艦の改修を六隻と

 新造で八隻、駆逐艦の改修を十五隻と新造で

 二十七隻の建造を海軍から発注したいと

 考えており各艦の諸性能は記してある通り

 であります」

 長官室に集まった造船会社の面々は誰もが

 予想外の発注に戸惑っていた。

 ラーズ島の海戦の事は関係者であれば周知

 の事で今回の発注も損失した戦艦等の建造

 だと思っていたからで、まして今まで聞いた

 事のない航空母艦や防空艦と言った艦を

 造れと言われれば無理もない。

 最初に口を開いたのは川島造船の社長の川島

 だった。


「長官殿、大変言いにくい事ですが海軍さんは

 先の海戦で多数の戦艦を失ったと聞きます。

 正直な話、今日の新造艦は戦艦かと思って

 おりましたから我々も色々と資料を持参して

 参りました。しかし聞いたこともない航空母艦

 を造れと言われましてもなぁ、海軍さんは

 飛行機で戦艦と戦うおつもりなんですか?

 あれだけの重装甲を撃ち破れるとお思いですか?

 当社、いえ三島さんも同じだと思いますが

 我々が造る戦艦は飛行機なんぞには絶対に

 負けない自身があります。あと3ヶ月しない

 うちに当社で造っている大和型は三島さんの

 所で造っている改大和型と同様に飛行機

 なんぞには負けません。

 この自信は代々戦艦を造り続けてきた

 我々の誇りです」


 川島が言い終えると三島も話に乗ってくる。


「長官殿、私も川島さんと同じ意見です。

 戦艦が飛行機に沈められる事など想像も

 出来ない」


 菊地は造船会社の社長の口から大鑑巨砲主義

 を聞かされるとは思っていなかったので

 正直うんざりしていた。

 すると市川造船の二人がそろばんをはじき

 ながら話しているのを見て川島や三島を

 無視して市川に話しかけた。


「市川さんどうですかね?」


「今現在、当社のドックには建造中止命令を

 受けた巡洋戦艦三隻が、進水待ちの状態で

 放置させられておりまして、これを改修

 したらおおよそ三万トンクラスの航空母艦と

 と仰られている艦を建造出来ると思われます」


 菊地がそうした場合の工期を聞こうとしたら

 川島が横槍を入れようと口を開き始めたので

 手で制した。


「川島造船と三島造船はもう出て行けや!

 あんた方の意見なんて聞くだけ時間が

 勿体無い、海軍はもう戦艦は建造しない!

 よって海軍からあなた方の会社に発注する

 事はもうないでしょうさぁお引き取りを」

 川島も三島も顔を赤くして怒っている

 様子だが小野少佐と平田少佐に部屋から

 連れ出された。

 残った市川造船と釜一造船の人達は

 驚いてた。何時だって儲かる大型船、特に

 戦艦クラスしか造って来なかった会社が

 目の前で連れ出されたのだ、内心では

 ざまあみろと思っていたに違いない。

 菊地は話しを進めた。


「市川さんその案なら六ヶ月でやれませんか?」

 市川は設計技師と相談している


「長官すみませんが航空母艦というものが

 いまいちピンと来ないのですが…」

 もっともな話である。

 菊地は可能性があったので構想図をスケッチ

 しながら市川に説明しその話を釜一も聞いて

 いた。

 菊地が提案した空母の性能はというと

 まず三十ノット以上で航行でき航続距離は

 八千海里、新型機の搭載機数を最低でも

 六十五機、甲板はアイランド型とし

 エレベーターは艦首中央に一台と左舷にせり出す 甲板に対して右舷側にサイド式のエレベーターを

 二機、艦橋は右舷とし煙突一体型、着艦用の

 ワイヤーとカタパルト二機、搭載兵器は

 新型連装高角砲八基、新型連装機関砲四十挺

 新型ガトリング砲四十丁と大まかに説明した。

 説明を聞いた市川の設計技師は難色を示したが

 了承した。説明を聞いていた釜一造船は飛龍型

 の改修工事を引き受けてくれる事になった。

 そして次は防空艦の説明に入った。

 性能としては三十ノット以上で航行でき

 武装は艦首に新型連装高角砲三基、艦中央両舷に

 二基づつ、艦尾に三基、新型連装機関砲十二挺

 ガトリング砲十丁となっていて魚雷発射管

 は廃止になっている。

 駆逐艦は三十五ノットで武装は新型連装高角砲

 を艦首に二基、艦中央に一基、艦尾に二基

 新型連装機関砲は六挺、ガトリング砲は十丁

 爆雷発射管二基、魚雷発射管一台となっていた。

 市川と釜一は難色を示した。

 これだけの艦艇を新造と改修するとなると

 市川と釜一だけでは無理な話であった。

 そこで菊地は市川と釜一に一つ提案をした。

「どうでしょうか?合併されては?資金面でも

 海軍が力を貸しますので」

 この一言から後の日本造船が誕生する事になる。

 逆に大型船ばかり建造していた川島造船や

 三島造船は海軍から直接受注させて貰えず

 日本造船から仕事を貰うようになり衰退

 していった。

 菊地は何とか艦艇が揃いそうな目処がついた

 ので安心していると長官室のドアをノック

 する人物がいた。

 情報部の高橋少佐であった。

  

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