小野少尉の反抗
菊地は家に入り夕食を食べ子供達と風呂
に入りいつもと変わらない時間を過ごしていた
ただ違うのは、ここがゲームの世界だということ
を除いては。
子供達が寝静まった後、ゆかりと二人で今日
あった事を教えあった、
ゆかりには難しい話しで理解できないみたいだ。
ただ一つお互い口にださなかったのは、現実の
世界の自分達はどうなったのか?
その事だけは怖くて口に出せなかった。
疲れもあったのだろうゆかりは先に寝て
しまった。俺も持ち帰った書類を眺め色々
考えにふけっていたがいつの間にかねてしまった
翌朝、眩しくて起きてしまい部屋中を見渡し
てみたがやはり全てが夢ではなくてゲームの
世界のようだ。
窓から突き刺す光に吊られて縁側に出てみた。
澄み渡る青空を見上げながら決心した。
この世界で勝とうと…
朝ご飯をみんなで囲んでいると玄関から
声がした
「失礼いたします!おはようございます
小野少尉であります。長官をお迎えに
参りました」
菊地は軍服に着替え家族に見送られ家を出た。
ドアを開けて待っていた小野少尉に
「おはよう」と挨拶して車に乗り込んだ。
車が走り出すと菊地は小野少尉に話しかてた
「小野少尉、また今日も何かの会議かな?」
「ハッ!昨日はたまたま会議が有ることを
知っておりましたが、私の仕事は長官の
運転手でありましてご予定までは存じて
おりません」
「そうかわかったよ、じゃあこの書類に書いてある 航空輸送艦て空母の事かな?」
小野少尉が少し戸惑った感じがした
「長官!我が海軍の艦種で空母というものは
ございませんが?」
「そうか!やっぱりそうなのか」
小野少尉には菊地の言っていることがさっぱり
わからなかった。
「小野少尉、今からこの航空輸送艦に行こう
観てみたいんだ早く、さぁ行こう」
「軍令部には行かれなくても宜しいので
しょうか?」
小野少尉の問いかけに菊地は「軍令部より
こっちの方が大事に決まってる、さぁ早く
行こう」と促した。
「小野少尉、航空輸送艦はここから遠いのかな?」
「ハッ!輸送艦は第八ふ頭に係留されて
おりますからここからですと30分ほどで
しょうか?」小野少尉は車を走らせながら
言った。
わかったよ、菊地が返事をすると小野少尉は
言いづらそうに言った
「しかし長官、航空輸送艦ですが来月には
退役の予定になっているはずですが…」
「ハッ?何言っているの何故退役になる?
古いのか?
「いいえ、艦歴は7年位でしょうか、軍と
しては使い道が無いのでしょう、航空輸送艦
と言いましても実際に飛行機を運んだのは
数回しか無いと聞いておりま。
そもそも航空輸送艦の飛龍型四隻は当時
巡洋戦艦として建造されていました。
搭載する主砲は36㎝砲、しかしその頃
ガルーナ帝国は41㎝砲を搭載する戦艦を
竣工させ配備していると諜報部からの情報
を得まして、軍令部ではその情報を精査して
いくら速度が出ても36㎝砲では太刀打ち
出来ないと言うことになりその上を行くため
大和級の建造が開始されました。
飛龍型はとりあえずドックを開けるために
簡易的な状態で進水させ艤装されることもなく
しばらく放置された後、輸送艦に改装された
のです。
軍としては除籍として四隻分の排水量を利用
して新造戦艦を造ろうとしていたんです。
因みにこの戦争が起きるまでは各国…といい
ましても海軍大国の我が国とガルーナ帝国しか
ありませんが建造、保有する艦船の上限を
排水量で取り決める条約を四カ国で結んで
いました、各国の軍備拡大を防ぐために。
しかしそれもこの戦争でもって紙切れに
なったと思いますが」
小野少尉の話しを聞いている間に車は
目的地の第八ふ頭に着いたみたいだ
小野少尉は検問所で衛兵と話しをつけて
車は施設の中に進んだ、建物や倉庫が
建ち並んではいるがあまり人の姿は見ない
駐車場に車を停め小野少尉と歩いて
建物の中に入った。
入り口には輸送艦隊司令部と書いてある。
そこで小野少尉の紹介で将校とあった。
見た目は無精ひげで小太りな50過ぎの
オヤジで階級は少将みたいだ。
「山口司令官!ご無沙汰しております。
本日は昨日任官されました司令長官の
菊地大将をお連れして参りました!」
「どうも!航空輸送艦隊司令官の山口で
あります。」
山口は敬礼しながら挨拶をし菊地も答礼
して「菊地ですよろしくお願いします」
と返事をした。
菊地は早速、空母が観たくて山口に言った。
「早速で悪いですが航空輸送艦とやらを観たい
のですが案内宜しいでしょうか?」
菊地が訪ねると山口は快く引き受けてくれ
自ら案内すると言う。
お言葉に甘え三人で建物を出てなんぼも
しないうちに空母は見えてきた。
菊地は間近で観るのが始めてなので
少し興奮しているみたいだ。
大きな艦体で海に浮かぶ飛行場のようだ。
菊地が甲板を観たいと言うことで三人は
タラップを登りきると長さ240メートル
幅24メートルの甲板にたどり着いた。
見渡す限り遮蔽物も無くよく見ると武装類
もついてなくただの輸送艦といった感じで
菊地は少々がっかりしているみたいだった。
そのまま三人で艦尾に向かって歩きながら
菊地は山口に聞いてみた。
「山口さん、ここに飛行機が着艦出来ると
思いますか?」
山口は驚いた顔で答えた「長官、この距離
でわとても飛行機は着陸出来ませんよ
長さが足りないもう300メートルはいりますよ」
「いや、山口さんここ甲板にワイヤーを張って、
飛行機にはフックを付けて強制的に
止めるんですよ」
この話を山口よりも小野少尉が真剣な顔を
しながら聞いている
「しかしフックですと壊れませんかね?
機体の重量と速度にとてももつとは思えま
せんが?」
山口の質問に菊地は答える
「ええもちろん機体自体強化しなくてはいけ
ませんしワイヤーも強度がありフックが
引っかかった時に伸びるようにしないと
山口さんが言うようにす飛行機は壊れる
でしょう。でも大丈夫なんですよ」
菊地は自信満々に言い切った。
この自信の根拠は菊地が知り得る知識から
きている。基本的に軍事オタクなので
浅く広い知識を持ち合わせていた。
今度は小野少尉が質問した。
「長官、でわ飛び立つ時はどうなるのですか」
菊地は艦首に歩きながら説明した
「風上に艦首を向け最大速力で切り上がり
合成風力で浮力を得られれば100メートル
足らずで飛行機は浮くはずです。
欲を言えばカタパルトで強制射出させれば
いいのですがね」
小野少尉は少しずつ興奮した感じで
「射出機ならば水偵を飛ばすのに使っており
ますが」
「確か火薬式ですよね、それでは良くないんです
せめて油圧式でないと…山口さんこの下は
格納庫ですよね?最大何機収納できますかね?」
「いやぁ…正直な話し、びっちりなんて積んだ
事がありませんのではっきりしたことは言え
ませんが60か70位でしょうか」
菊地は考えた、四隻で240位か…足りないな。
そこに小野少尉が目をギラギラさせて聞いた
「長官は先程から飛行機にこだわっておあり
のようですが、失礼ながら我が海軍いえ
世界は皆、大鑑巨砲主義でございます。
誰もが戦艦が最強だと思っておりますし
戦艦が国力を示しているのです。
より大きい艦体、より大きな砲門を積んだ
船が一番強いのです!
長官は飛行機でどうされるおつもりですか?
飛行機で戦艦と戦うおつもりですか?」
小野少尉が言い切ったとき、山口はニヤリと
笑った。
菊地は圧倒されたがその物言いに少し
ムカついた顔をしながら小野少尉に言った。
「ずいぶん噛みついた言い方だな小野少尉!
ああ確かに戦艦は厚い装甲、圧倒的な火力
確かに今は最強かもしれない、だが全てが
揃ったとき戦艦は過去の物になるだろう」
菊地が吐き捨てた言葉に小野少尉は反論
しなかった…