戦果報告
会議室
山形少佐の進行で戦果報告がすすめられていく。
「昨日行われましたラーズ島沖海戦の戦果報告
をさせて頂きます。
お手元に用意してござおます書類の
1ページ目をお開き下さい。
我が日本海軍中央艦隊がガルーナ艦隊に
与えた損害を記してあり下記のように
なっております。
戦艦 撃破確実 5
大破確実 4
中破確実 3
小破確実 1
巡洋艦 撃破確実 4
大破確実 2
中破確実 2 ないし3
小破確実 2ないし3
軽巡洋艦 撃破確実 3
大破確実 2
駆逐艦 撃破確実 11
大破もしくは中破 多数
「以上となっております」
会議室の雰囲気は誰も声には出さないが
あえて代弁すれば、よくやった、我が海軍
の敵では無いわと言わんばかりの感じに
なっている、只一人を除いては。
菊地は書類を真剣に見ていた。
「続きまして我が艦艇の被害になります」
戦艦 扶桑 山城 伊勢 比叡 撃沈
日向 長門 霧島 大破後に魚雷処分
加賀 中破
金剛 土佐 小破
重巡洋艦 青葉 妙高 那智 撃沈
愛宕 鳥海 大破後魚雷処分
軽巡洋艦 北上 撃沈
大井 名取 川内 大破後魚雷処分
駆逐艦 春雨 村雨 有明 初霜 弥生
白雪 夕暮 夕立 若葉 海風
山風 潮風 山雲 夏雲 大潮
朝潮 全て撃沈ないし魚雷処分
「以上であります」
さすがにこの結果には会議室内は意気消沈
しているが、菊地は相変わらず書類を真剣
に見ている。
「結論から申しますと本作戦の目的で
ありました、ユカラシア国に展開している
ガルーナ艦隊をおびき寄せ、我が海軍の
得意としている夜戦に持ち込み
我が艦艇の全ての砲力を持って
ガルーナ艦隊艦隊を撃滅しユカラシア国近海の
制海権取る第一段階の目的は
達成したのではないかと思われます。
当初の作戦では残った残存艦艇の援護の元に
第二段階として上陸作戦を予定しておりましたが
特に戦艦の消耗が激しく遂行不可能と判断し
中止になりました。ですがどれも
旧式で退役間近の艦艇ですし、後3ヶ月も
すれば最新鋭艦の大和級が四隻、その半年後
には改大和級が三隻が配備予定になって
おりますので部隊配備、訓練終了次第
本作戦の第二段階になりますラーズ島上陸作戦
の準備に取りかかりたいと思います」
山形少佐は菊地の顔を伺いながら言い終えた。
当然菊地は詳しい上陸作戦の内容も知らない、
しかし会議室内の雰囲気からは
作戦決行は当然だと言っている。
菊地は、今は何を質問してもわからないな
と思い、場の雰囲気に合わせ
「いいでしょう」と返答した。
その後の会議の内容は上陸作戦の話になり
3時間ほど続き会議は終了した。
会議室には夕日が差し込んでおり
菊地は一人残り書類に目を通していた。
そこに新兵が清掃の為に会議室に入ってきた。
新兵は菊地の顔は知らないが大将の階級を
付けた人が居たものだから慌てて
「失礼しました」と会議室を出て行こうとした。
すると菊地に呼び止められ
「君は小野少尉を知っているかい?」と
尋ねられ
新兵は「ハッ!作戦部の…いや車両部の
小野少尉でありますか?」とオドオドしな
がら答えた。
菊地は、「そう車両部の小野少尉を呼んで
きてもらえないかな」と頼むと新兵は
ハッ!と返答して新兵は居なくなった。
しばらく待つと聞き慣れた声で
「まだこちらにおいででしたか」と小野少尉
が表れた。
菊地は色々とわからない事があるので
小野少尉に聞こうと思っていた。
まだ味方とも言えるのは小野少尉しか
居なかったのである。
「小野少尉、いくつか聞きたい事が
あるんだけども」
小野少尉は「ハッ!私で宜しければ
何なりと聞いてください、しかしもう
時間も遅いですから帰りのお車の中で
伺いましょう、その方が早くご自宅に
戻れますから」そう言って菊地を
車に案内した。
菊地は車に乗り込むと早速聞いてみた。
「大変聞きにくいんだけど、驚かないで
聞いて欲しいんだけれども、この世界の
情勢を知りたいんだけれども」
確かにそうである。
通常ゲームであれば最初にストーリーや
あらすじがあり、そこから話が展開していく
のだが、菊地はまだ誰からも?と言うべきか
ソフト?から説明を聞いてないので
この世界の地理、地形は勿論なぜ戦争に
なっているのか知らないのであった。
小野少尉は驚きもせず車を走らせ初め
淡々と説明してくれた。
「この世界には四つの国があります。
一つは我が日本になります。
二つ目はユカラシア国
三つ目はガルーナ帝国
四つ目は清共和国であります。
地理的に言いますと世界を平面にし中心
からみて右下が日本、右上が清共和国
左下がユカラシア国、左上がガルーナ帝国
になっております」
菊地も国名は知らなかったが、会議室に
貼ってある地図を見ていたので位置関係は
理解出来た。例えれば日本がオーストラリア
位の面積でユカラシア国はイギリスほどか
ガルーナ帝国はオーストラリアの1・5倍位で
清共和国は3倍位の面積比率だろうか?
4つの国は海で繋がっている感じだ。
話は世界情勢に移っていく。
「過去に何度か大きな戦争を繰り返してきましたが
ここ50年程は国の内乱はあっても国と国が争う
戦争は起きていませんでした。
ところがガルーナ帝国が突如ユカラシア国に
進行し、ガルーナ艦隊は上陸部隊を伴い
国土面積が割と小さなユカラシア国は6日で
ほぼ占領されてしまいました。
我が国はユカラシア国と安全保障条約を結んで
おりましたのでガルーナ帝国に宣戦布告をし、
その初戦が先ほど長官が会議室において聞かれた
ラーズ島沖海戦が起きました。
そもそもなぜユカラシア国と安全保障条約を
結ぶ事になったかと言いますと、我が国の資源
の問題に繋がっております。
我が国は工業力もあり資源も豊富にあり経済も
豊かでありますが油が採れません。
しかしユカラシア国は国の全域に油田がある
ほど豊富に石油が採れますが資源はほとんど
採れません。
そこでお互い穴埋めするように我が国は
ユカラシア国の領土で本国より50キロ程離れた
所にあるラーズ島の油田の採掘権を買い取り
石油を輸入し、ユカラシア国は我が国から
採掘料と資源を輸入する関係になりました。
過去の経験からユカラシア国は国民の総意で
軍隊を保持しない国家法があり
油は国を豊かにしますがいつの時代も戦争の
火種が油にある事も理解している国柄なのです。
だからといって他国からの脅威から自国を
護らなくてはいけません、また我が国も国益を
護る観点からラーズ島に軍事力を置いておきたく
利害が一致したことにより安全保障条約を結ぶ
事になりました。
他国はというとガルーナ帝国は経済も豊かで
工業力は我が国より上を行っておりますが
あまり資源は採れませんし我が国同様に油が
採れません。ガルーナ帝国は油と資源を隣の国
清共和国から輸入しております。
また清共和国は度重なる内乱で経済は弱く工業力
は一世代遅れています。
しかし資源も豊富で油も採れるのでガルーナ帝国
輸出しその資金で国を成り立たせている国です」
小野少尉がそこまで話すと車を停めた
「長官、ご自宅に着きました、話しの続きは
また明日の車中で宜しいでしょうか?」
菊地は小野少尉の話しに夢中になって
いたのでまだ聞いていたかったが、ドアの
向こうに家族が居ることを思うと、明日でも
いいかなっと思い
「じゃあまた明日お願いします」と答え車を
降りた、辺りはすっかり暗くなっていた。
その頃、軍令部の一室で密談をしている
二人がいた
「本当に宜しかったのでしょうか?」
「なあに当初の戦果報告をしたまで、あの時点
ではまだ報告を受けて無かっただの言い訳は
何とでも着くわい、仮にこの諜報部からの
報告を言ってみろ、東大将だけでなく私や
貴様の首も飛びかねないわい」
「ハッ!そうでありますが…」
「もういい!その内頃合いを見て皆に諜報部
からの戦果を伝えろ、私が上手くやるから」
「ハッ!わかりました」