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バーチャルwar  作者: ムーンライズ
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闇と光

 脳は動いているみたいだ。

 そう判断出来たのは暗い世界がイメージ

 出来たからだ。

 ただ、何故暗いのかわからない、考える

 事も面倒のような感覚で脱力感自分を

 支配しているみたいだ。


 それでも聴覚は働いているようで

 やんわりと何かが聞こえてくる。

 それが何の音なのか知りたいとも

 思わない。

 何かの振動なのか体じゅうが揺すられ

 ている気がしてくるが、何故揺すられ

 ているのかわからない。


 何故自分は暗闇の中にいるのか…


 ふと自分が目を閉じているから暗闇

 なのかそれとももう目は開いているのか

 興味が湧いて来て目を開く動作をしてみた。


 目を開いてみると暗闇から抜け出し

 眩い光が眼球に突き刺してきて、思わず

 また目を閉じた。

 次はゆっくりと開いてみた。

 どうやら体が揺すられていたように

 感じたのは車に乗っていたからだと窓の

 向こう側の景色が流れていることで

 気がついた。

 少しの間、視界に映る景色を眺めていたら

「生」への執着心が急に湧いてきて目から

 涙がこぼれていた。


 自分は今、「生きている」と実感してくると

 ゆかりや子供達の事が心配になり、周りを

 見渡してもその姿は無く、居るのは

 車を運転している男の姿しかみえない。

 とっさにその男に話しかけていた。


「俺の妻や子供達はどうした?何処にいる?」


 つい怒鳴り口調な大きな声で聞いてしまった

 せいで運転している男はびっくりしたのか

 背中が一瞬浮いたように見えた。

 

 運転している男はルームミラー越しに菊地

 と視線を合わせるなり


「奥様とお子様はつい先ほど長官を玄関先

 でお見送りされていたので、お家の方に

 いらっしゃられるのではないでしょうか」


 そう答えた男に対して間髪入れずに菊地

 は問いかける。


「お前は一体誰なんだ?」


 確かにそうである。気がついたら知らない

 男が運転している車に自分が乗っているの

 だから。


「ハッ!私は車両部の小野章一であります」


 小野章一はルームミラー越しに菊地を

 見ながら答えた。


 しかし菊地は気が動転しているせいで

 小野少尉の返事が耳に入っていない。


 菊地の言動に少し困り気味の小野章一は

 菊地に聞いてみた。


「ご自宅に一度戻られますか?」


 この小野章一の言葉は菊地に届いたようで

「お願いします」

 と答えていた。

 

 車は方向転換をし、今来た道に向かって

 走り出した。

 菊地は家族に逢える安心感からか少し

 気がおさまってきた。

 窓の外を見るとさっきと同じ景色を

 見ているはずなのだか今度は冷静に

 なっているせいか違和感を感じた。


 おかしいな、いつも見慣れているはずの

 景色なのに視界というか空が開けている。

 そうだ!高層ビルや高層マンションといった

 物が見当たらない、街全体がなんかレトロ

 のような建物ばかりで出来ていて

 すれ違う車はみな旧車を通り越し博物館

 でしか見たことしかない車が沢山走っている。

 何かが変でわなく全てが変だ。

 この疑問を小野章一に聞いて見ることにした。

「ん…」ちょっと待てよそもそもこの小野章一

 と名乗る男を後ろから観察してみると、 

 白い帽子に白いシャツ?肩には軍服でよく

 見かける階級を示すバッチが見える。

 

 菊地はハッと思いついた!

 車を運転している男は小野章一でわなくて

 小野少尉なのでわないか?

 そして今、自分がゲームの中なのでわないか?

 そう考えると今見ていた不思議な景色も

 納得が出来る。

 そうなると小野少尉が言っているのは全て

 ゲームの設定なのでわないか?という

 仮説をたてたとたんに嫌な胸騒ぎがしてきた。

 そんなまさか!その胸騒ぎは家族の事で

 あった。

 小野少尉に直ぐにでも確かめたかったが

 何と聞いていいか考えている内に、

 車が立派な門構えの屋敷の前に停車した。


「菊地長官着きました」


 菊地は小野少尉に聞くよりも自分の目で

 確かめたく急いで車を降りようとすると

 小野少尉に呼び止められ


「菊地長官、急いで頂かないと会議に

 間に合わなくなってしまいますので

 急いで頂けませんか」


 そう言っている小野少尉に少し手を

 上げながら答え、玄関に向かって

 走り始めた。

 門構えから玄関先まで10メートル位の

 距離だろうか、心臓の鼓動が胸を叩いて

 いる。走ってなる鼓動でわなく緊張感から

 きている鼓動だと菊地は気がついていた

 玄関の引き手に手をかけ恐る恐る開けて

 見ると、玄関先で靴を並べている女性が

 目に飛び込んできた。

 

 目の前の女性が少し驚いた顔で自分に

 話しかけていた。


「旦那様、何かお忘れ物ですか?」


 菊地は無気力になりながらも女性に


「いやなんでもない」と答えるので精一杯で

 玄関を出て引き戸を閉めようとすると

 目の前の女性が大きな声で


「奥様、旦那様が戻られましたよ」


 と奥の部屋に向かって呼んでいる。


 菊地は振り返り奥の部屋から出てきた

 女性の姿を見て目頭が熱くなった。

 奥の部屋から出てきたのは妻のゆかりと

 その後から子供達が出てきた。

 菊地は靴を脱ぎ捨て廊下で家族4人

 ガッチリと抱きしめ逢った。

 肌で感じる温もりをかみしめあった。 


 菊地は知らない女性がいた事を思い出し

 振り返ると女性は目のやり場に困って

 いるように見えた。


「ゆかり、この方はどちら様なの?」


 菊地が女性の顔を見ながら聞くと


「お手伝いさんの由美子さんよ。

 私達と歳が近いの」


「そうでしたか、夫の善泰です。家族みな

 お世話になります」 


 と由美子に向かって挨拶すると

 由美子は慌てた様子で


「精一杯やらせて頂きます、よろしくお願い

 します」大きな声で挨拶を返してきた。


 そこに慌てた様子の小野少尉が玄関に現れ

「菊地長官、もうそろそろ出ないと会議に

 遅れますのでよろしいでしょうか?」


 菊地は分かりましたと返事をし、妻や子供達

 には帰ってきたらゆっくりと話しをしよう

 と言って屋敷を出たのである。

 


 

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