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バーチャルwar  作者: ムーンライズ
16/34

私は、画上校

 今日は大和型戦艦の公試運転が横須賀沖およそ

 百キロ付近で行われていた。当初は大和型四隻  により行われるはずであったが出航して六十キ  ロ辺りで大和の機関部が何らかの原因で出力が  出せなくなり横須賀に引き返す事になった。   よって公試運転は武蔵と信濃と播磨の三隻で行  われた。中央艦隊の指揮官である梅田副長官は  大和に座乗していてが、急遽武蔵に乗り込み指  揮を執っていた。あいにく天候は昨日の試験飛  行のようにはいかず空はどんより曇っていた。


「副長官、以上で公試運転は終了になります」


 副長官の梅田に話しかけたのは参謀の石上だっ  た。


「そうか、28ノットが限界だったか…」


「ハッ!後の2隻は判りませんがこの武蔵は28ノ

 ットが限界ではないでしょうか」


「わかった、でわ横須賀に戻ろう」


 一通りの公試運転を終えて横須賀に戻ろうとし

 た時だった。武蔵の速度は落ちて行き、洋上で

 止まってしまった。


「おいどうしたんだ?石上、機関室に問い合わせ

 ろ!」


「いいえ、その必要はありません副長官」


「何を言っている?いいから早く止まった理由を

 聞けと言っているんだ!」


「だから、その必要はないんだ!この船は我々が

 頂くのだから」


「何を言っている貴様は?」


「副長官!レーダーに反応あり、距離40キロ、艦

 多数!」


 レーダー員が報告し終わったとき、艦橋のハッ  チが開き短機関銃で武装した乗組員が数名入り

 込んできた。武装した乗組員は艦橋に居る一人

 を除いて全員に銃口を向けた。


「なんだ貴様達は?」


 そう叫びながら抜刀しようとした艦長の上野に

 向かって短機関銃が火を噴いた。上野は後方に

 倒れ込み意識はすでに無くなっていた。上野の

 元に駆け寄り安否を確認した梅田は怒りに狂い

 抜刀しようとした時、一発の銃声が響いた。

 梅田は撃たれた腕を押さえながら銃声がした方

 を睨みつけると、拳銃を構えた石上が立ってい

 た。


「石上!貴様何のまねだ?ふざけとるのか!!」


「いいえ副長官、ふざけてはおりません、ですか

 ら無駄な抵抗は止めて頂きたい。この武蔵は我

 が同胞が既に抑えました。副長官には今まで大

 変可愛がって頂いたので乱暴な事はあまりした

 くありません」


「石上、言っとる意味がわからんぞ、同胞とはな

 んだ?貴様の目的はなんなのだ」


「私は石上でわない、本当の名は画上校!私、い

 や、我々は清共和国の工作員だ。」


「そんなハズはない?貴様は日本の戸籍ではない

 か、日本の戸籍が無い者は軍隊には入れないの

 だぞ」


「その通りです。我々は産まれて直ぐに日本に送  り込まれ、親の顔すら知らないままに日本に居  る工作員の手引きで日本人から産まれた子供と

 して育てられてきた。その事実を聞いた時は驚

 きましたよ。そして事実を受け入れられた時、

 私は国の為に尽くそうと誓いました。ここに居

 る同志も皆同じ志です。そして祖国から受けた  命令は、この大和型戦艦の強奪だったのです。

 まあ経緯としてはこんな所です。副長官には若

 い頃からお世話になったので少し話ましたが

 もう終わりです。我々の指示に従ってもらう」


 画は言い終えると艦橋の乗組員を全員外に出し

 甲板に誘導した。梅田達が甲板に着くと既に他

 の乗組員達が整列させられていた。海を見渡す

 と1キロ程の間隔で信濃と播磨が停船して甲板

 に乗組員が整列している。画はあるだけのボー

 トを海に下ろし、乗れない奴らは海に飛び込む

 ように指示を出す。甲板には二千人近くが並ん

 で居るのでほとんどが海に飛び込む事になる。

 血気盛んな乗組員が工作員に飛びかかろうとす  ると短機関銃が吠え、見せしめとばかりに数十  名が犠牲になった。梅田は余計な犠牲を増やす

 前に、全員に海に飛び込むように命令した。


「しかし石上よ、お前達だけでこの武蔵を動かせ

 るのか?」


「余計な心配はしなくていいですから、さぁ副長

 官も海へどうぞ」


 梅田は悔しい顔をにじませて海に飛び込んだ。

 波のうねりは以外と大きくボートに乗れない乗

 組員はボートの縁にしがみつき、それでも溢れ  る乗組員は交代しながらボートの縁にしがみつ

 いてこれから何時間と海上をさまようことにな った。


 その頃、菊地は梅田達に起こった事は知る由も

 なく軍令部の会議室に居た。会議室に集まって

 居た面々は新たに新設された機動部隊に選ばれ

 た司令官及び参謀と艦長の面々だった。機動部  隊は3つに分けられ、第1機動部隊は菊地が司  令官を勤め、空母天城、葛城、赤城、第2機動  部隊は司令官が山口中将、空母飛龍、蒼龍、第

 3機動部隊は司令官が沖田中将、空母雲龍、神

 龍で各空母1隻に対して防空巡洋艦2隻と防空

 駆逐艦6隻から構成されている。防空巡洋艦や

 防空駆逐艦は全て新造している時間も無いこと  から水雷戦隊や中央艦隊の艦艇を多く改装して

 穴埋めする事にしていた。この会議室に集まっ

 ている面々は生粋の砲雷屋出身なので空母の運

 用に関しての勉強会が開かれていた。まず菊地

 は航空機の可能性から説明し、卓上演習を交え

 ながら空母の運用法を確認していった。基本の

 陣形は輪陣形で空母を中心に両サイドに防空巡  洋艦、そのとなりと前後に防空駆逐艦が3隻づ

 つ合わせて9隻で1つの戦闘群を形成する事に  した。本来ならば防空駆逐艦が更に4隻づつ欲  しい所だがドックの数からして不可能なので随  時補充する事になっていた。最初は皆、戸惑っ

 ていたがこの勉強会は空母が完成するまでほぼ

 毎日開かれ、卓上演習でわ大方の運用を理解し

 て、後は空母が完成してからの演習で体が覚え  るだけとなった。

 そこに会議室のドアをノックして情報部の高橋  少佐が入ってきた。


「長官!やっていますね!」


「おぉ高橋少佐!どうしたんだ?こっちに何か案

 件でもあったかな」


「はい!今日は長官に逢いたいと言う方を連れて

 参りました、さぁ入って下さい」


 会議室のドアの向こうから姿を表したのはオリ  バー博士だった。オリバーは以前より陽に焼け

 たせいか少し若返って見える。会議室に居た面  々はオリバーの事は知らないのでどこぞの異人

 が来たのかと興味津々な顔をしている。


「おぉ!オリバー博士、お元気でしたか?どうし  たのですこんな遠くまで?」


「その節は大変お世話になり本当にありがとうご

 ざいました。長官の計らいでリング島では家族

 共々幸せな時間を過ごさせて頂きました。この

 3ヶ月余り、家族との平温な時間を過ごしてい

 る間に、何か何か恩を返したいと言う気持ちに

 かられまして、高橋少佐に連絡を取りここまで

 連れてきてもらいました。私なりに考えまして

 以前に長官に頼まれましたレーダー開発のお手  伝いをさせて頂こうと思い参りました。以前は

 研究、開発はもうしないと決めたのですが長官

 に言われた言葉が引っかかってまして、私の研  究が人々の生活に少しでも役立つのならば続け

 たいと思いました。ですからレーダー関連の開  発はお任せ下さい、その合間や後でいいので私

 が従来からしてきた研究を続けさせてもらいた  いのです」


「本当ですか!本当に有り難い!勿論オリバー博

 士の研究は続けて下さい、我々も協力は惜しみ

 ません」


 その後、オリバー博士は開発部において様々な

 開発を行い日本に貢献し続けてくれる事になっ

 た。そして高橋はもう一つ菊地の耳に入れてお

 きたい事があり、こっそり菊地に呟いた。


「高橋少佐、それは確かな情報なのか?」


「吹田少尉の情報なのでほぼ間違いないかと思わ

 れま」


 菊地は高橋がもたらした情報を聞いて焦りがで

 始めていた。

 一方その頃、大和はと言うと更に速度を落とし

 て10ノットで航行し横須賀まで20キロ程の所に

 いた。大和には工作員の指揮官として作戦部の

 山形少佐が乗り込んでいた。当初は画の補助と

 して大和に乗ったが機関部の故障で梅田と共に

 画が武蔵に移ってしまったため急遽、乗って居

 る工作員の中で階級が上で尚且つ艦橋に出入り

 出来る山形が指揮する事になったのだが、山形

 は今一つ度胸が無く人を引っ張る器ではなく今

 だにどうするか焦っていた。山形が決断出来な

 いでいた理由として1番はやはり速度の問題で

 あった。引き返す事が決まった時点では、大和

 はまだ20ノット程はでていたが段々と速度が落

 ちて行き今は10ノットしか出なくなっていた事

 で仮に大和を奪取しても逃げ切れない事が決断

 を鈍らせていた。艦内の工作員も横の連絡が上

 手く取れず決行時間になっても、誰もアクショ

 ンを起こせずに時間だけが過ぎていった。



 日本沿岸部上空  二式飛行艇


「村田機長、今日は大和の公試運転がこの海域で

 やっているはず、ちょっと見に行きませんか?


「おぉそうだな、よしっ!大和の勇士を見に行く  か!しかし今日は雲が厚いなまだ高度を下げる

 ぞ」


 村田が操縦する二式飛行艇は大和型の姿を求め

 高度を下げて飛行していた。するとなんぼもし

 ない内に武蔵達の姿を発見する。しかし数をか

 ぞえて行くと一隻足りない、村田は上空を2回

 程旋回してから翼を傾けバンクしながら遠ざか

 った。村田はいささか気になっていた、それは

 数が足りない事よりも武蔵達が進んでいた方角

 だった。それでもむ武蔵達の乗組員は手を振っ

 てくれていたので村田もそこまでは気にしなく

 なった。その後、沿岸の警戒飛行をしていた村

 田は基地に戻るため飛行していると海面に無数

 の黒点とボートを発見した。


「おいっ!あれはなんだぁー!おいおいおいっ!

 あれは人じゃないか!」



 村田が目にしたのは、先ほど海に放り込まれた

 梅田や乗組員達の姿だった。

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