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バーチャルwar  作者: ムーンライズ
15/34

十式試作戦闘機その名は…

 時間の流れは早く菊地達がオリバー作戦を決行

 してから3ヶ月の月日が流れていた。この間に

 ラーズ島からの撤退作戦が行われた。ラーズ島

 はオリバー作戦から間もなくユカラシアから戦

 艦分隊が出張って、約六百発余りの艦砲射撃を  行い、ラーズ島の石油精製所を始め、港、飛行

 場に壊滅的被害を与え、島周辺に機雷をバラま  いて海上封鎖を行った。幸いに人的被害は少な  かったが精製所の油は半年あまり燃え続けた。

 報告を受けた菊地は小野に作戦の立案を行わせ

 撤退作戦が始まった。参加兵力は四十機の二式  飛行艇と洋上補給を行うため補給艦が三隻と護

 衛の為に第六水雷戦隊が出動した。作戦は順調

 に進められ、まず事前に空中から投下していた

 補給物資と一緒にエンジン付きのゴムボートも

 投下しておいた。ラーズ島の守備隊は作戦決行

 の数日前から夜間にゴムボートが進行していけ  る分の機雷の除去を済ませた。ガルーナ軍は島

 に上陸する気配は全くなく、日中は駆逐艦が島

 を周り警戒に当たっているが夜間は機雷が危険

 でユカラシアに引き返していた。作戦は夜間に

 行いゴムボートに乗った陸戦隊員と民間人はラ

 イトを点けて、二式飛行艇の為に進入灯の役目

 も果たした。二式飛行艇はライトを頼りに着水

 していき全機が収容を完了するのに二時間近く

 かかったがガルーナ軍は現れなかった。まだこ

 の時期に夜間戦闘機が存在していなかった事が

 成功した要因の一つだろう。その後大きな戦闘

 は発生していなかったが、ユカラシアに潜入し

 ている吹田からの情報では、ラーズ島の海戦で

 損傷していた艦がドックを出た事と新たな艦艇

 がユカラシアに派遣されているとの報告を受け

 ていた。菊地はこの間に正式に陸戦隊から海兵

 隊へと変更の手続きを行い、当初は三個師団の

 兵力を大統領を通して陸軍から二個師団の編入

 に成功して合わせて五個師団になった。また、  機動部隊の人選から航空母艦の運用、艦隊編成  と手探りな議論を毎晩のように開発部に集まっ  ては議論していた。この頃の開発部には多方面

 の人々が夜には集まり酒を交わしながら話あう  のが半ば当たり前のようになっていた。艦艇の

 建造も順調に進められており、空母は残り二カ  月程で就航出来そうな目処が立っており、明日  から大和型の合同公式運転が予定されており着

 々と反攻作戦の準備が進められいた。      そして今日、菊地は朝早くから開発部に顔を出

 していた。その理由は待望の十式試作戦闘機が

 完成して試験飛行が今日行われるからである。

 空は澄み渡り雲が一つもない絶好の試験飛行日

 和だ。菊地達、関係者が完成した十式試作戦闘

 機に見とれていると、遠い空から爆音が聞こえ

 てきた。爆音は段々大きくなり菊地達が外の滑  走路に出てみると、一式戦闘機の小隊による綺  麗な編隊飛行が目に映った。一式戦闘機の小隊

 は滑走路上空を一周してから着陸に入った。

 着陸した一式戦闘機から降りてきたのは陸軍所  属の織田であった。織田達は開発部に来たのは

 初めてのようで敷地の広さに驚いていた。

 

「やあ織田君!長旅疲れたろう」


 菊地が握手を求めながら話掛けると織田は白い

 歯を見せながら返事を返す。


「いえ大丈夫です長官!ありがとうございます」


 そういい終えると織田は周りをキョロキョロと

 見渡した。菊地は織田の仕草を見て早速、十式  試作機へ案内し、格納庫に入った織田の目に跳

 びこんできたのは目をつぶりたくなるほどに眩  しい銀色の戦闘機だった。織田が驚いたのはま  ず機体の大きさだった。一式戦闘機よりは一周

 り大きく、エンジン部分が太くて尾翼に向かっ  て絞らさった機体は少し不格好に見えるが力強

 さも感じさせる。風防は水滴型で視界は良好そ

 うに見える。ぐるっと機体の周りを歩いて織田

 が気になったのは武装だった。十式試作戦闘機

 には二十ミリ機関砲二丁と十三ミリ機銃が四丁

 も装備されていた。一通り見学した織田は昼か

 らの試験飛行の予定だったがはやる気持ちを押  さえきれずに菊地に申し入れた。


「長官!早速乗ってみても宜しいですか?」


「それは構わないけど休まなくてもいいのかな?」


 織田は昨日から何千キロと飛んで来て疲れては

 いたが、好奇心が勝って疲れは何処かに飛んで

 行ったようだ。織田は菊地に大丈夫ですと答え

 全員で十式試作戦闘機を押して格納庫から出し

 た。織田が連れて来た部下達は少し羨ましそう

 な顔つきをしている。そこはパイロットである  以上は気になるのだろう。そんな眼差しを気に  せず織田は颯爽と飛び立っていった。織田は計  器類を確かめながら一気に六千位まで昇った。

 腕時計を見ながら上昇していくと織田は体中が

 何か熱く感じた。驚きか喜びか自分でも感情が

 わからなくなっていた。一式戦とは別次元の体

 験を今、体と脳でしていたのだ。織田はペダル

 を踏み込み操縦桿を倒し旋回から急降下に入る

 速度はぐんぐん増していき速度計は七百九十キ

 ロを差している。その割に機体は意外と安定し

 ていて体が先に悲鳴を上げそうだった。

 操縦桿をひっぱり、また六千まで昇って今度は

 最高速に挑戦してみる。速度計を見ると針は六

 百七十位で止まった。そこから急旋回に入り巴

 戦に入るイメージで操縦桿を操ると予想を遥か

 に越えて小回りが効く事に体と意識がついてい

 かない。一連の動きを確かめ地上に戻った織田

 は十式試作機のエンジンを止めてしばらく操縦

 席に座り込んだいた。この十式試作戦闘機は、

 最終的にエンジンは二千二百馬力にまで引き上

 げられ、図体の割に機敏に動くのは自動空戦フ  ラップの開発に成功したからだった。しかし全

 てが望み通りとは行かず、航続距離は少ししか

 伸ばす事が出来なかったので対策として増槽タ

 ンクで対処する事になった。織田は興奮が醒め

 ないままに午後からは部下の操縦する一式戦と

 模擬戦を行い手も足も出させないまま七戦七勝

 と完勝してみせた。その後、部下達にも十式試

 作戦闘機を体験させてやりその反応は聞くまで

 もなかった。試験飛行が終了して開発部の一室

 に集まった頃には既に夕方になっていた。

 菊地は織田に十式試作戦闘機についての感想を

 聞いてみると織田や織田の部下達は口を揃えて

 十式試作戦闘機が一式戦闘機より遥かに優秀で

 有ることを認め賞賛した。菊地は織田達の話し

 を聞いて正式に十式試作戦闘機を量産する事に

 決め、出席していた中ノ島飛行機の社長と量産

 する契約を交わし山田設計士と固い握手を交わ  した。


「ところで山田さん、コイツの名前は何か考えて

 いるのですか?」


 菊地の問いかけに山田は驚いた。まさか自分が

 命名出来ると考えていなかったからだった。

 菊地は山田に任せる事にし、後日決まった名前

 は烈火と決定した。またこの機体は五百キロの

 爆装を行える事から、急降下爆撃や雷撃にも使

 える事から戦闘攻撃機として採用された。しか

 し急降下爆撃のパイロットは腕っ節のいい根性

 が座ってる奴が選ばれた。それは機体が重い事

 から投下して機体を引き起こす時に半端じゃな

 い力と体にかかる負担が大きかったからだ。

 逆に一機種に絞れる事で部品や整備の面で効率

 が良くなり整備兵には喜ばれる結果になった。


 外はすっかり日が沈み暗くなっていた事から

 今日集まった人々でもって開発部で宴会が始   められた。いつもと違った面子に話は大いに

 盛り上がっていた。そんな中、織田は一人抜

 け出して格納庫に烈火を見に来ていた。織田

 は今も少し興奮していた。昼からの模擬戦で

 わ一式戦にも乗ったが、全くと言っていいほ

 ど色あせてしまい心は烈火に取り憑いてしま

 ていた。織田はしばらく烈火を見つめながら

 一つの決心をして宴会の席に戻った。


「長官!お願いがあります、私を海軍に入れて

 もらえないでしょうか?私は烈火に魅せられ

 てしまいました。どうしてもあれに乗りたい

 のです」


 菊地は密かにこうなる展開を期待していた。

 現実的に一からパイロットを育てるよりも陸

 軍から優秀なパイロットを引き抜いた方が間   違いないからであった。かといって露骨に陸

 軍からパイロットを引き抜くと只でさえ仲が

 悪い陸軍と揉める事からそれが出来なく、あ   くまでも自分から辞めてもらい海軍に来ても   らう形を取りたかったのだ。菊地は烈火の性

 能に賭けて今回の試験飛行に陸軍のパイロッ

 トを適用して見事に作戦を成功させた。

 織田が海軍に行くのならと今日参加した部下

 達もついて行く事になり、その後は各地の陸

 軍パイロット達が続々と烈火と織田の噂を聞   きつけて海軍に移籍する者が増えていった。


「我々は歓迎しますよ!しかし一つ条件があり

 ます。戦が始まるまででいいから教官となり

 若手の育成をして貰いたい」


 織田は心良く引き受けて「わかりました」と

 返事を返した。




 横須賀  第一ふ頭 検問所


 二人の兵士が乗った軍用トラックが検問所の

 前に到着した。


「時間通りだな、中で仲間が待ってるから急いで

 片付けてくれ」


「わかった、見張りは任せた」


 トラックは検問所を通り暗闇に消えていった。



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