オリバー作戦2
バーター飛行場 ガルーナ軍検問所
「軍曹!我々も早く戻れましょうよ、早くしないと
イイ女みんな持ってかれちゃいますよ」
「バカヤロ!後少しだ交代が来るまで我慢しろ!
それに強引に連れてきた女と遊んで何が楽しい」
「そういいますがこっちに来て楽しみったら酒と女
しかありませんよ。
こんな田舎町の飛行場に誰が来ますか?もう戻り
ましょ」
「ダメだ!」
「ん?おい車のライトだ!こっちに来るぞ」
「こんな時間に誰だ?とっとと追い返してやる
こっちはイライラしてんだ」
二人は小銃を手に検問所の小屋を出て向かって
来る車に停止を呼びかけ手をあげた。
「長官、キャリーは納得してくれましたかね?」
トラックを運転しながら吹田が聞く。
キャリーとは砂浜で別れていた。
キャリーは自分も連れて行って欲しいと何度も 菊地に懇願したが「これは我々の戦いだからあな たを巻き込みたくない」と言うとキャリーは
「同盟国のあなた方が戦うのなら私も戦う」
そんなおしもんどを何度か繰り返したが菊地は
最後まで首を縦に振らなかった。
「さぁ…してないだろうなきっと」
「キャリーは夫と子供がガルーナ軍に酷い目に
あわされてそれがきっかけでレジスタンスに
参加しようと思ったみたいですよ」
「その気持ち判らないわけじゃないがな…やっぱり
女性を戦場に連れて行く訳には行かないよ」
「確かにそうであります、あっ!長官、小さい
小屋が見えます!検問所ではないでしょうか?」
菊地達が乗っているトラックはガルーナ軍の
トラックで荷台には鉄のフレームにビニール製の カバーが掛けられていた。
助手席に乗っていた菊地は振り返り荷台の中にい る山田を探した。
「山田大尉、この先の検問所で止められると思う
から荷台の屋根に登って敵兵が寄ってきたら
撃ってくれるか?」
「ハッ!わかりました、倉田ついてこい!」
二人は消音器を付けた拳銃を片手に走っている
トラックの後ろから屋根の上によじ登った。
検問所の前に二人の兵士が腕を上げてトラックを
止めようと出てきた。
「オイ!お前ら何処から来たんだ?こんな……」
これが最後の軍曹の言葉だった、もう一人の兵士 も地面に倒れていた。
「山田大尉、倉田もいい腕だな!」
「ハッ!ありがとうございます」
「ここからは歩いて行こう管制塔らしき建物が
見える、誰か検問所に無線機があったら壊し
といてくれ、それと倒れている奴らを茂みに
かくすんだ」
全員トラックを降り言われたことを手際よく
済ませ飛行場に通じている道路を左右に別れ
周りを警戒しながら進んでいく。
道路の両側は深い森なのか月明かりに照らさ
れていても真っ暗闇になっている。
三百メートルほど進と飛行場の駐車場なのか
ガルーナ軍のトラックやジープが止まっている。
その奥に管制塔とターミナルらしき平屋の建物が
建っていて窓からは電気の明かりがみえる。
菊地は山田大尉に偵察を指示すると部下の高野を
連れ、かがみながら建物に近づいて行く。
ターミナルの造りは中央に出入り口のドアが
あって左右対象に大きな窓がついている。
山田と高野は左右に別れトラックの影に隠れ
ながらターミナルに近づいて行く。
山田は管制塔の上にも注意を払うが人の気配は
しないようだ。ターミナルの壁に張り付き窓
から中の様子をうかがうと、中では男と女が
入り乱れ酒を飲んで騒いでいた。
反対側に回った高野も似たような光景をみていた
山田は内心ムカつきながらも中を見渡すと横の方
にいくつかドアがあり向こう側にもデカい窓が
付いている。山田は周囲を警戒しながら菊地達に
合図を送ると壁づたいに建物の側面に移動する。
側面には小さい窓が高い位置に付いていて中が
確認出来ない。
そのまま裏に回ると滑走路がターミナルと平行
して走ってあり幅は二百メートル位だろうか。
滑走路の向こう側にうっすらと格納庫らしき建物
二棟と小屋が一つ建っている。
滑走路の周りは真っ暗で森に囲まれているようだ
裏手でおちあった山田と高野は一旦引き返して
報告に戻った。
「そうか、でわ先に格納庫と小屋を調べよう」
「ハッ!何名かここに配置して置きますか」
山田の提案に菊地は考えたが全員で動く事にした
分散してもしもの時に孤立する事を嫌ったので あった。
二手に別れてなるべく遠回りするように滑走路を
横切り山田達は左側の小屋に辿り着く。
小屋は三坪ほどの大きさで窓が無く山田がドアを
調べると鍵が付いていない、山田は倉田に手で
合図してドアを開けさせ確認するが人の気配が
しない。「ハズレか」そう思ってドアを閉め
ようとすると中から声がしたような気がした。
今度は踏み込んで中に入ってよく見ると女性と
子供が柱に結ばれていた。山田は怯えている
女性に話しかける。
「オリバー博士の奥様でいらっしゃいますか?」
女性は震えた声で返事を返した「ハ…イ」と。
右の格納庫に着いた菊地達は裏にあったドアを
こじ開けて中に入ってみるが人はおろか飛行機も
入っていない。気を取り直してもう一つの格納庫
に移動した時に小屋で奥さんと子供を発見した事
を聞いてこの残りの格納庫に期待を寄せる。
同じく裏手にドアがあったのでこじ開けて中に
入ってみるが、又も人の気配がしない。
ただ、さっきと違うのはこの格納庫に輸送機が
一機止まっている。
菊地は高橋と吹田を連れ輸送機に近づいて行く。
吹田がハッチを開け菊地と高橋が中に入ると
奥の席に誰か座っている「オリバー博士でありま すか?」
菊地が訪ねるとその男性ほ首を縦に振った。
「私は日本海軍司令長官の菊地であります!時間が
ありませんので単刀直入にお話ししたいのですが
是非ともオリバー博士の知識を我々日本にお教え
ねがいないでしょうか?」
オリバーは顔色一つ変えずに菊地に答えた。
「お断りいたします」
「…わかりました。しかし我々もここまで来て
手ぶらで帰るわけにも行きません!せめて
博士がユカラシアに亡命した理由を教えて
頂けませんか?」
オリバーは少し考えてから口を開いた
「私がやってきた研究は平和利用であって戦争目的
でわなかった。拒み始めると家族に危険が及びそ
うになってきたから奴らの隙を見て逃げ出した。
それだけです」
「博士、私は戦争が好きではありません。しかし
いつの時代も戦争が起こることによって技術革新
は進んできました。自動車や飛行機や船といった
色々な分野のものが戦争を通じて飛躍的に進歩
するのです。そして民間にも技術は浸透して行き
社会の生活を楽にするのです。
博士が開発したレーダーも戦争が終われば船の
航海や飛行機の安全に大いに役立つでしょう。
戦争は悪ですが技術の進歩を考えれば必ずしも
悪でわないと私は思います」
菊地が話し終わる頃に山田がオリバーの家族を
機内に連れてきた。オリバーも妻や子供もお互い 近くに居ることを知らないようだった。それまで あまり顔色を変えなかったオリバーが涙ぐんでい た、高橋がナイフを出してオリバーの手の縄を
切ってやると家族三人抱きしめあった。
菊地達は遠慮して機外にでた。
すると格納庫の前で周囲を監視していた高野が
双眼鏡を片手に慌てて中に入ってきた。
「ターミナルにいた女どもが外に出てきて森の
方に走って行き窓越しに中が慌ただしくなって
おります」高野が言い終わる前に管制塔の上から
眩しい光が刺してきた、探照灯の光だ、ターミナ ルの出入り口から数名の兵士が出てくるのが見え る、菊地達は見つかったことを悟った。
今から五分ほど前に飛行場に一台のジープが
近づいていた。
ジープには運転手の兵士と助手席にはテーラ大佐
が乗っている。テーラは師団本部から飛行場に
やってきた。明日、本国に移送されるオリバーと
共に輸送機に乗るつもりだったのである。
検問所に着いたテーラ達は何か異変に気付く。
人が居ないのも変だが無線機が壊されている
のはおかしい、テーラは運転手に周りを捜すよう
に指示を出す。ライトを照らしながら足で茂みを かき分けて捜すと人が倒れていた。
それを見たテーラは急いで飛行場に向かうように
運転手に指示した。
ターミナルに着いたテーラは目を疑うと共に
一気に怒りがこみ上げてきた。
「ここの指揮官はどいつだ!」
指揮官の中尉は驚いていた、まさかこんな時間に
大佐が来ると思わなかったからだ。
「自分であります大佐!」
テーラは怒りが頂点に達していた、中尉の前に
立ち右足を踏み込んで力の限りぶん殴った!
「貴様、オリバー博士がどれだけ我が軍の重要
人物か分かっておるのか?検問所では二人
やられておったぞ、無線機も壊されていた
誰かが侵入したんだ早く探し出せ!
オリバー博士はどこだ?早く身の安全を確保しろ とっととやれ今すぐやれコノヤロー」
中尉は急いで部下に指示を出し女どもを外に
追い出しオリバーを確認させに行かせた。
テーラはこんな酒臭い奴らでは話しにならないと
師団本部に連絡して応援をよこすように指示を
出した。