ゲッター、世界を学ぶⅠ
『ゲッター』
この言葉に疑問を抱いた人は、とりあえずその手に持った辞書をおろしてほしい。多分載ってないから。
それどころか、この単語にピン! ときて一一〇番通報よろしく日常生活で使いこなしてる人ですら、とても少ないだろう。
なにせこれは地方の方言。それも、日本最南端に位置する都道府県、沖縄県の物だからだ。
沖縄県。
かつては独立した一国家、琉球王国として当時の中国に多大な恩恵を受けながら独自の文化を育んでいったのだが、江戸時代に薩摩藩の侵略に遭い、なんやかんやで日本に組み込まれてしまった島国である。
亜熱帯に属しており、天然記念物や世界遺産に恵まれ、ついでに海がとても綺麗だ。本島からの観光客も後が絶えない。
いや本当に。内地(県外のこと)の海を初めて見た時は本当にびっくりした。そこが極端だっただけかもしれないが、真っ黒くて汚くてまるでドブ川のようだった。
その点、沖縄は白い砂浜に蒼い海、色とりどりの素敵な貝殻をちりばめた素敵な場所だ。
泳ごうと思えばオールシーズン泳げるし、トコトコと歩くかわいいヤドカリやしきりに足を狙うウミヘビ、刺されれば昇天確実ハブクラゲ、普通にキモいナマコなどなどお姉さん方が泣いて喜ぶサービスも各種揃えている。仕舞には小麦色に日焼けして皮膚ガン発病率アップといったアフターサービスも万全だ。
それとついでに食べ物もおいしい、というか安くて量が多い。観光客目当ての店や内地から来たチェーン店とかはそうでもないが、ちょっと田舎の方に行くと量が多くて安くておいしい店なんかいくらでもある。
中でもおすすめなのはタコライス。
ひき肉を微かに味付けして、それに玉葱や人参、トマトソースなどを加えて炒める。タコライスはそれをご飯にぶっかけたものだ。お好みでレタスや専用のソースをかけたりする。
ミートのこうばしい香りもさることながら、ソースの辛みと新鮮な野菜たちのシャキシャキという食感がたまらなくおいしいのがツボだ。
残念ながらこれは内地ではあまり食べられていない。もったいないな、おいしいのに。これだけでボクが内地で暮らしたい理由が一つ減ってしまう。沖縄サイコー。他の食べ物? 豚にでも食わせとけよ。
色々長いこと語ってはいるが、要するにボクが言いたいのは、沖縄はいい所ということだ。
自分が住んでるところだからというわけではなくて、本当に住み心地がいい。
戦闘機の騒音や成人式での五月蠅いアホどもの馬鹿騒ぎを除けばだけど。
閑話休題。
ゲッターとは……表現に困るのだが要するに、ダサい奴のことである。
例えば、制服のズボンをやけに高い位置で穿いて、常時何かに追われてるようにとてもきびきびと歩き、突然意味もなくナ○ト走りをする奴のような。
ほとんど中二病なのだが少しだけ違っていて、なまじ中途半端にスペックが高いせいで妙に自信過剰な節があり、結局何もできないのに他人を見下してるような。
そんな奴のことである。
そんな奴は当然周りから、口だけの木偶の坊という評価を受ける。何をしても『役立たずがなんかやってるぞ』と、人差し指と嘲笑を添えられ言われるのである。
「ふっ……」
何て哀れなんだゲッターよ。だがボクはそんな君らに同情なんかしない。
なぜならボクもまた例によって例にもれず、人差し指に(笑)を添え、君らを馬鹿にするのが好きだからだ。
「そんなことが出来るボクは! ゲッターなんかじゃ決してない!」
『おい、ゲッターが何か言ってるぜ(笑)』
『一人言とかデージウケる』
『ウトゥルサよ』
……だから、ボクがゲッターだなんてウソだ。