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僕の誕生日

作者: 倉名 東

誕生日推しです。

今日は僕、一ノ瀬三太の誕生日だ。どうでもいいけど、三太ってどういう名前だよ。妹しか兄弟いないよ。って思いながら生まれて16年間毎日物心付く前から思い続けてきました(多分に嘘が含まれています)。

そんなわけで誕生日。祝ってくれるのは母さん父さん、妹にあと一人――幼なじみ(腐れ縁とも言う)だけだろう。数いる悪友たちはきっと僕の誕生日なんてそもそも覚えちゃいない。


というわけで、期待もせずに登校し、教室に入った瞬間。っパーン! となにかの破裂音。敵襲か!? と身構えて持っていたカバンを体の前に突き出し実を守るような動作をした直後。なんらかの重量物がぶつかってきた。

え!? ホントに敵襲だったの!? 嘘!? と困惑する僕に対して、

「……あんた、なにそんな身構えちゃってんの?」

曲者改め、幼なじみの音葉は、トレードマークのポニーテールを横に払って、

「ま、ハッピーバースデイよ、三太」

と、ウィンクしながら言ってきた。正直ちょっとドキッとした。

「ん? ああ、ありがとう。僕の誕生日なんてよく覚えてたな」

「ま、そこはそれ、付き合いだけは無駄に長いからねー、あんたとは」

「確かにな」

そういった直後、後ろから肩を叩かれ、

「サンタクンオタンジョウビオメデトー。ハッピーバースデー。ムシロメリークリスマス」

筋肉質な長身のパッと見脳筋野郎というか普通に脳筋野郎に言われた。

「はいはいサンキューな、小太郎。あと僕は三太だ。聖キリストの誕生日に、無罪のトナカイを扱いて不法侵入を働くような白ひげ親父とは無縁だよ」

「誰が親父だって!? お前か!? お前なのか!? お前がおっさんだって言ったんだな!?」

「お前の空耳と被害妄想スキルは賞賛に値するよ、本当に」


このバカは放っておくとして。意外とクラスの皆さんは僕の誕生日を覚えていてくれたらしい。

黒板にカーネルサンダースみたいな絵があって、その隣に「Happy Birthday!」って書いてあって、挙句の果てには僕の机に某ファーストフード店のフライドチキンが乗っかっているし。

……いやね、もうサンタネタでイジられるのには慣れた(というか諦めがついた)よ。でもさ、朝っぱらからあんな脂っこいもの食べたら胃がもたれるでしょうに!

もし僕が小太郎のような被害妄想のスペシャリストだったらいじめだと思ってるね、確実に。


そして普段とは少し違う一日が大体終って放課後――(フライドチキンは、1時間目が始まる前に死ぬ気で食べました。先生がちょっと油臭い教室を不審がっていた)帰路。

何故か音葉が一緒に付いてくる。

「お前、部活あるんじゃないの?」

音葉は陸上部に所属しており、日曜以外は原則毎日部活があるはずだ。

「いやー、幼なじみの誕生日なんだし今日は特別にサボってしまいました」

お前そんなんでいいのかよ……

「ま、一日くらいサボっても平気っしょ。これでもそこそこ速いほうだし」

「そこそこって、お前なあ」

そこそことか言っているけど、音葉は中学時代、100m走全国3位という記録を持っている正真正銘の化物だ。だからこそ練習はしっかりしなくてはいけないと思うのだが。

「まあまあ、たまには休むことも必要だしさあー」

なんでこんなに凄いやつが僕と仲良くしているのかが不思議でたまらない。




とか話していたらいつの間にか自宅が目の前に。因みに空はもうすっかり綺麗な夕焼け空。そこはかとなく儚い。

僕の家に堂々と入ろうとしている音葉をみて、ふと疑問に思い、

「そういやお前、うち来るってことは晩ご飯もどうせ食べてくんだろうけど、お前の分の食材なんてないぞ」

僕の両親は共働きだが、基本的に帰りが深夜過ぎとかなので家事の多くを僕と妹がやっていたりする。

「その心配なら大丈夫。おばさんにも桜花ちゃんにも言ってあるから」

「な、なんて用意周到な……」

「ま、そんなことより遠慮せず入った入った!」

気付いたら人ん家に勝手に入っている無礼者。

「せめて僕を先に入れろおおおおおおお!」

……大きな笑い声が聞こえました。



「お兄ちゃん、お誕生日おめでとう!」

そう言って僕に抱きついてくる天使もとい妹。いや本当にこの子天使。可愛くて可愛くて。癒やされるわー。どこかの元気溌剌娘も可愛いっちゃ可愛いけどこの天使ちゃんには敵うまい。

シスコン? 罵りたきゃ罵れ! 桜花がいればなんでもいいもんねー、だ!

「あんたら相変わらず仲良いわねー」

冷たい視線をびしばし送ってくる音葉。あ、ここに罵ってきそうな人いました。

「いや、まあ兄妹だしね」

「それにしても仲良すぎでしょ」

少し元気がなくなる音葉。

音葉も桜花に抱きついて欲しいのだろうか。よくわからん。

そんなやりとりをみて何故かご機嫌度が上がっている音葉が、

「お兄ちゃん、桜花ね、お兄ちゃんのためにお料理作ってみたんだ!」

とか言ってくる。嬉しすぎるんですけど!?

「はい、お兄ちゃん。これだよー♪」

そう言って桜花が出したものは、七面鳥の丸焼きだった。

いや、今日はクリスマじゃねーーっての! 百歩譲って七面鳥を許すとしても、なんか非常に焦げている!? 桜花、これ焼き過ぎちゃったんじゃないのかなっ!

「おにーちゃん、おにーちゃん、食べて? はい、あーん」

七面鳥改め炭素の塊をサクッと、いや音がおかしいでしょ! ナイフで切り取ってフォークに刺し、手を添えながら差し出してくる桜花。くっ、これは食べるしかないのか……っ!?

含み笑いをしている音葉が恨めしい……!

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