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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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87◆亜人達による村周辺の迷宮探索1

 村の四方に存在する迷宮の内、南だけは石碑があるだけで入口が判明していない。

そこで、現在探索をしているのは北側の迷宮となっている。

北を選んだ理由は、南から一番遠くて南と唯一魔法物質低下エリアが重複していないからだ。

まぁ、一応はリスク低下を考慮しての事だが、正直意味があるかは微妙だと思ってはいる。


 その理由としては、四つの迷宮全てに主が存在していた事にある。

この配置で同じ様な構造の迷宮が三つ。

一つだけ異質な迷宮。

普通に考えたら、主が居る迷宮と何らかの理由で配置してある付属の迷宮にしか見えない。


 私ですら三個保有しているのだから、四個持っている存在がここに居ても不思議ではないのだ。

そして、入口を偽装してある加工した跡の風化具合からみて、まともな存在が主なのかも怪しい所。


 パッと思いつく所で長命種、不死者、主が封印されている……辺りだろうか?

勿論、主が別々である可能性も否定はできないが、これだけ色々と整った形である以上……無関係という事は無いだろう。


 そういう訳で念の為程度に北を選んでいる訳だが、現在の所は特に問題も無く進んでいる。


 現段階で攻略したのは地下二層のボスを倒し、次は三層からとなっている。

この迷宮の面白い所は、階層のボスを倒した際に特殊アイテムを残し、そのアイテムさえあれば入口そばのエレベーターが使えるのだ。


 当初は、攻略した最後の場所で移動迷宮を配置して転移を停止して位置を固定する予定だったのだが、この仕掛けのお陰で今の所は迷宮を配置した事は無い。

まぁ、一層毎の広さが大した事が無いお陰ではあるのだが。

勿論今後の予定として、帰るのに時間がかかる状況なら使うつもりではいる。


 そして、この迷宮の特徴として、今の所《迷宮の虜》となっている魔物は居ない。

要は、普通の放置された迷宮なのだ。


 次に、出現する魔物は現在確認している範囲でゴーレム系のみとなっている。

一層と二層、前回の最後に少しだけ様子を見た三層も同じだったので、迷宮自体がゴーレム系に統一されている可能性はある。


 因みに、私が自分の迷宮で選べる項目だと一番細かく選択しても魔法生物系となっており、ゴーレム系単品にする事は出来ない。

この事により、ここの主は私より熟練度が高いか、私の得ていない迷宮系のスキルを持っていると予想出来た。


 その詳細として、一層はウッドゴーレム系が殆どで、ボスはツリーゴーレムという名前の……見た目が完全に木そのもののゴーレム。

攻撃手段は自在に動かせる無数の枝と根で、葉っぱも飛ばすという中々面倒な奴だった。

 

 二層は土や粘土で出来たゴーレム。

ボスはサンドゴーレム……砂の巨大ゴーレムだった。

こいつの面倒な所は、形状を崩す事が出来る事だ。


 地面いっぱいに広がり、こちらを包み込むように押し寄せてくる砂は正直面倒だった。

まぁ、全員に《フルブースト》を掛けてあったので、身動きが止められる前に砂の膜から突き抜けてしまえるので拘束されたメンバーはいなかったけどね。


 そして、様子見で前回の最後に一戦だけしてみた三層の敵はアイアンゴーレムだったので、予想としては今日のゴーレムは金属製だと予想していた。

それじゃ、それでは本日の探索を始めるとしましょうか!




 ☆ ☆ ☆




 三層は予想通り金属製ゴーレムの層だったのだが、ここまでの探索で得た素材は有り難くはあるがやや予想とは違っていた。

五割がカッパーゴーレム、四割がブロンズゴーレム、一割がアイアンゴーレムといった所だ。


 私がいままで会った事があるのはアイアンだけで、カッパーやブロンズは初めて見た。

使うかどうかは判らないが、いざという時に在庫が有る方が勿論良いので、有り難く素材として確保しておく。


 まぁ……正直な話、私の知識なんてテレビからそれとなく入ってくる情報と、二十歳一般女性が普通に知っている程度しかでしかないのだ。

鍛冶や板金から始まり、その後にどんな加工で何を使うかなんて事を詳しく知ってる訳がない。

要は、銅が前世で電気抵抗の少なさを利用した基盤や集積回路に使われていたのは知っている。

しかし、この世界では当然電子機器が無い為、もっと原始的な使用用途を知らなくては意味が無いのだ。

……訂正、電子機器も当然理解などしていないのであっても直せたりしないよ!

万一、転移者の持ち込んだ機械とか見つかったら困るから訂正しておきました……。


 そんな訳で使用する予定は無いので、後で《アイテム》から出してどこかに隔離保管する事が確定しているとはいえ、放置するのはもったいないので全て回収しながら進んでいる。


 敵のレベルは大体40前後。

私達の迷宮より浅い階でもレベルが高いのは、長年放置されていた為に強い個体に成長した為なのかどうかが気になる所ではある。


 迷宮スキルの熟練度上昇で色々な能力が解放されるなら良いのだが、別スキルが必要となると迷宮の主狩り……いや、交渉が必要になってくる可能性が出てくる。


 手に入れた事自体は偶然だが、迷宮という存在が私やルークにとって今や重要な財産であり……ある意味戦力や移動手段ですらある。

利便性を上げる方法があるならば、優先的に得る事が今後に役立つ事に繋がるはずなのだ。

私やルーク、老魔術師じじいに対しての《識別》による情報では迷宮を持つ事を表記されていなかったので、迷宮の主らしき存在がいたら交渉が通じる相手か確認してみようと思う。


 さて、迷宮探索は順調に進んでいるのだが、主な理由は予想以上に亜人部隊の戦闘能力が高い事にあった。

まだまだ効果が私やリーナ程ではないまでも、魔素を使用しての《フルブースト》が可能な点は恐ろしく大きい。

使用できる魔素量が今後も徐々に上がって行くので、更に効果が強くなっていく事も間違いない。

戦闘技術的な点はまだまだ甘い所も多いが、その成長速度もおそろしい物があった。

十分に及第点といえるだろう。


 まぁ、《フルブースト》を直接使えるのは私とリーナだけだし、打撃力や耐久力は優れているものの魔法関係はまだまだ甘すぎる為、今の所は亜人部隊だけの時は無理をしてはいけないと釘を刺してある。

緊急時に対応出来る様になるまでは私やリーナが居る時だけ探索を行い、それ以外の時間は入口付近での戦闘のみを許可している。

そこで技を磨き、オガ吉が吸収しまくるMPを使って魔法の熟練度上げを日課にしているお陰で魔法の方もそれなりになりつつあるかな。


 そういう訳で、今日も中央にミノ太が陣取り、オガ吉が遊撃、後衛にゴブ助とマツリが位置する配置で戦い続けていた。

私とリーナが《侵蝕共有》によって操っている通称ドールは、基本的に遊撃となっている。


 開幕で私が《フルブースト》を全員にバラ撒き、ミノ太が中央でどっしりと構えながら敵を迎える。

基本的なフォーメーションでの戦いを習熟させる為に、この布陣での戦いを徹底して行っていた。


 この場合、近距離攻撃しかない相手は特に問題は無い。

ここで当然対応が難しいくなるのは遠距離からの攻撃を主体にする相手なのだが、リーナと私の攻撃魔法とシールド系魔法で応戦している。

いずれはどんな条件でも臨機応変に動けるようになって貰うが、相手が格上で亜人達の魔法熟練度が低い現状で無理をしても良い事は無い。

まずは一つ一つという訳だ。


 亜人達に課した、素早い動きが出来るように重点を置いた訓練は実に良い方向へ機能している事もあり、既に何が相手でもスピードで翻弄される事は無いようだ。

自分よりも速い敵にも動きを読んで移動先を予測したり、壁や地形を利用して逃げ道を狭める事で追いつめる事にも慣れてきた。

贔屓抜きで、一流冒険者にも引けを取らないだけの適応力を見せている。


 今後、ルーク達へのお披露目が楽しみな強さへと進化する事は間違いない。

今も十体ものカッパーゴーレム相手に、全く危なげの無い戦いを見せる亜人達とリーナを見ながらそう感じた。

まずはこのメンツの強化を、そして必要性を感じる様であれば追加でメンバーを増やすのも良いだろう。

次々と蹂躙していく亜人達の戦いを見ながら、そんな風にぼんやりと考えていた。

要は、やることが無い位余裕です。




 ☆ ☆ ☆



 

 この階層は、まさに蹂躙と言える戦いだった。

上の階では遠距離からの攻撃もあったが、この階は全てが近接戦を挑んできており、《格闘術(異世界)》の習熟の為にリーナが本気で戦っている事もあって……完封してしまっている。


 今、ドールの足元に転がっているのはボスのスチールゴーレムだ。

スチールか……。

日本では鋼と呼ばれていた気はするのだが、正直な所……鉄との違いは良く知らない。

純粋に近い鉄は錆び易いから添加物を加えるとか、用途に合わせた柔軟性をどうとか……聞いた気がしないでも無い……程度の知識だ。


 こちらの世界で私が使うゴーレム産の鉄は、魔法物質の影響で酸化……即ち錆びがほとんど無い。

刀に使うなら鋼の方が良いのかもしれないが、鉄でも魔法で破損しにくく出来る現状だと……使い道が判らないのだ。

まぁ、機会があったら調べる方向で、今は放置で良いかな。


 こうして、今日の目的である三層も危なげなく終了。

素材的に四層がどんなゴーレムで来るのかが楽しみではあるが、そろそろ時間なのでボスからの専用アイテムを回収して外へ出る事にした。


 それでは、みんなお疲れ様!

また明日この時間で!!

解散!!!

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