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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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86◆エルナリア邸からの避難に関するあれこれ1

 領主への説明はルークが終わらせたので、各自で次の行動に移っていく。

私がまず行うのは、リーナの迎えとシェリーやミルロード卿に説明する事だ。


 この時間ならシェリーは普通に居るはず。

ミルロード卿も午前はリーナの仮設迷宮経由で領地へ戻っていたはずだが、午後は屋敷でデスクワーク予定と聞いている。


 ミルロード邸に戻った私は、まずはシェリーに説明をする為に移動した。

リーナを膝に乗せながら、のんびりと紅茶を飲んでいたシェリーに事情を説明し、


「まぁ、そういう訳だから今日から落ち着くまでは仮の屋敷に移動ね」


と告げた。


 最初は驚いた表情を浮かべていたシェリーだが、


「分かりました。お姉様に全てお任せいたします」


そう言って、必要な物をまとめ始めた。


 基本的に普段使う物と学院関係の物さえ持って行けばいいので、《アイテム》に入れてある空箱を出して準備をさせておいて、その間に私はミルロード卿にも話をしておいた。


 そして、今回ここでやる事がもう一つある。

普段ここに置いてある、マスター用の扉を撤去する事だ。

ここに置いてあるのはルークの迷宮の物なのだが、現在は独自ルートとしてエルナリア領主館とミルロード邸だけを繋いでいる。

これを、この件が片付くまでは仮の屋敷とエルナリア領主館とを繋ぐ為に使うのだ。


 利便性を上げるだけなら私の迷宮と接続してしまった方が行ける場所が増えて良いのだが、今回は王都とエルナリアをレックス達が頻繁に行き来する予定だ。

経路を覚えさせるよりも、単純な方が面倒が無くていいと言うのが最終的な結論である。


 一応、私の移動迷宮はここに置いておく予定ではいる。

最近は王都にある迷宮への移動用にそちらへ置いてあったのだが、流石にこの件が終わるまでは迷宮探索なんてできないだろうしね。

緊急時で私が使わない限りは、基本的にここへ置いておく方向でいく。


 もっとも、仮の屋敷もミルロード邸も同じ王都にある。

迷宮経由である必要は無いのだから、用があったら普通に移動すれば良いだけなのだ。

そういう意味では、迷宮を動かしても基本的に何の問題も無い。


 ただ、ミルロード卿の安全だけは確保しておく必要があるので、魔素《アースシールド》の魔法具を渡しておいた。

そして、普段から使っている専用の馬車には、その魔法具を組み込む事が出来る別の魔法具も設置しておく。

個人用に調整されたサイズの《アースシールド》を、馬車を守る大きさに変更する為の魔法具だと思って貰えばいいかな。


 さて、これ以上の詳しい話をするのは後でも問題は無いので、用意が出来たシェリー達をエルナリア領主の所へ向かわせた。

そして、その旨を《通話》でルークへ伝えて仮の屋敷に案内させる。

荷物は既に《アイテム》に入れてあるので、それも一緒に渡して貰った。


 それらが終わった後、ルークにはここにある扉を破棄して仮の屋敷へ設置して貰う。

逆に私は仮の屋敷への移動に使っていた移動迷宮をここに呼んだ。

これで、ここでのやる事は終了かな。


 私はリーナやゲルボド、ミラを伴ってエルナリア邸へ移動。

もう少し後で、準備が出来次第領主と一部の使用人には仮の屋敷へ移動して貰う予定なので、その際にはゲルボドとミラには護衛として同行して貰おうと思っている。


 


 ☆ ☆ ☆




 私がシェリーやミルロード卿に説明している間、ルークは領主の部屋にあった仕事関係の荷物を運び出してくれていた。


 次に行うのは家具類なのだが、何も無いのでは警戒される原因となる。

あくまで怪しまれる事無く襲撃して欲しいので、これらの家具類はそれなりに見える物を複製して行くのが私とリーナの仕事だ。


 作り方は簡単。

《錬金術》によって形状を整え、外装をそれらしく塗布したり作ったりするだけ。


 本物と一緒に持つと全く重さが違うのは勿論の事、細部でも色々と違うのは一目で判るレベル。

しかし、それで問題は無いので十分だ。

何故なら、これらは違和感を持たれ無い為の模造品であって、本物とすり替えようとしている訳ではないのだからむしろ違う方が良い訳だ。


 因みに、過去にも色々作っていたので強度や質にはそれなりに自信がある。

魔物素材を使っている物に至っては、本物より使い勝手が良い物すらあるのだ。

特に革製品は、私が作った物の方が手触りも強度も基本的に上だった。

まぁ、《錬金術》で色々誤魔化しているから、微妙にアンバランスな所も多いんだけどね。


 これらの品は基本的に私はいらないので、今回の件が終わる際にレックス達に持って行って貰う予定だ。

彼らは八爵という、一応貴族の末席に居る割には収入が多少良い程度であり、その癖に出ていく額も多い。

貴族として、最低限の礼節や付き合いでも金銭が飛んでいく要素が満載だからだ。


 当然家にある家具なんかも質素な物が多く、見た目だけは良い絵や小物、使い心地と強度だけは抜群の家具は喜ばれるはずだ。

どこに欠点が? と言う点に関しては、やはりバランスの悪さだと言っておく。

色々と、重心や素材が本物と比べたらチグハグなのだ。

ただ、普通に使う分には全く問題は無いので、そこは安心して欲しい。


 この制作作業は延々と続いた。

私とリーナが分担しながら共同で作っているのだが、以心伝心という感じで流れる様に作れた。

流石、私の記憶を持っているだけの事はある。


 そして、この作業に貢献してくれていたのは亜人達も同様だった。

特にオガ吉。


 私のMPは膨大なのだが、リーナに関してはそこまででも無い。

むしろ、レベルの割には少ない方かな?


 私達が得た《自動MP回復》系は、今ある二つともが割合で回復している。

現在、私の場合は《自動MP回復》で一時間8%、《自動MP回復(極大)》で一分間で1%回復されている。

リーナの方も似た様な物なのだが、最大MPが違い過ぎて回復量が圧倒的に違うのだ。


 《浸食共有》によるMPの受け渡しが可能な為、リーナは私のMPを消費しながら作り続けたのだが、流石に消費量の方が上回ってしまっていた。

そこで活躍したのが、オガ吉の《闇の魔手》だ。

ハッキリ言おう! 相変わらずエゲツナイ攻撃手段だ!!

触られているだけで昏倒するとか悪夢でしか無い訳なんですが!!!


 まぁ、仲間なので許そう。

敵で出たら真っ先に潰すけどね! ブラックオーガ!!


 そんな訳で、私達が延々と制作する陰で戦い続けていた亜人達にも頑張ったねと言いたい。

後で、何か美味しい物でも差し入れしておこう。


 余談だが、流石にルークにもおかしいと気付かれた。


「良い所に気が付いたわね。それに関しては、乙女の秘密とだけ言っておきましょうか」


と言って、答えは当然の様に言わなかったけどね!




 ☆ ☆ ☆




 家具を作り終えた辺りで夕食の時間になったので、今日はここまでとなった。

エルナリア邸にはまだ結構な数の使用人が残っている為、日常を演出するまでも無く人の動きはある。

流石に今夜はまだ襲撃が無いと信じ、大掛かりな探知能力が無いままで明日までは我慢しておく。


 一応、裏口や自分ならここから侵入するであろう場所を厳選し、皆が寝る時間までに五セット程《危険感知》の魔法具を作って設置した。

これだけでは流石にカバーできる場所が限られ過ぎて居る為、何事も無い事を祈ろう!




 ☆ ☆ ☆




 現在は日も暮れ、皆が寝ている時間になっている。

私とリーナは《覚醒者》を得てから睡眠時間が恐ろしく短いのだが、流石にそれを皆に知らせる必要はないと考え、現在は密かに夜間の活動をしていた。


 普段行っている事は、亜人達をメインとした迷宮探索だった。

どこの迷宮かと言えば、故郷の村周辺にある四つの迷宮の一つだ。


 ミルロード領に行く際使っていたリーナの移動迷宮は、現在この迷宮への移動の為に使われていた。


 探索のメンバーは、当然だが亜人の四人。

それに加え、通称ドールと呼んでいるパペットに、私とリーナが《共有浸食》によって同調している状態だ。


 面白い事に、リーナ一人だと《アイテム》の使用が出来ないのだが、私も同調すると使えるようになった。

逆も同じだ。


 本体じゃないから、能力を使う為の何かが不足しているとかなのかね?

詳しい事は今のところ不明だが……まぁいいや。


 さて、それじゃ今日は少しだけの予定なのだが、行ってみましょうか。

因みに、いつもより早く切り上げるのは領主館での製作を早めに始める為だ。

それなら今すぐ製作開始すれば良い……という訳には行かないのです。

領主館にまだ使用人が居る以上、私達が寝てないのが誰かからバレる事も有り得るからだ。


 まぁ、亜人達の成長の為にも迷宮探索はしておきたいし、これで良いのです。

それじゃ、探索開始!

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