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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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85◆ルークは自覚して居ません しかしこれは大問題なのです

 王都で借りる屋敷を確認後、私の移動迷宮を呼んでエルナリアの領主館へ移動した。

既に話は使用人達にも伝えられたらしく、いつもより慌ただしい感じだ。

もっとも、領主館で働く人材なだけあって、動き自体は乱れの無い素晴らしい物だった。

流石プロだ。


 領主の方もいつ私達が戻って来てもいい様に、今後の仕事で本来は現地へ赴くべき案件についての対応を家臣と相談しながら待っていた。


 ルークが面会を求めるとすぐに応じられ、


「代わりのお屋敷を手配して頂きました。既に確認してきましたが、守りは堅牢な構造をしているので問題ないと思います」


と、告げていた。


「ふむ。もっとも、王都まで迷宮経由で行くのならば、向こうでの襲撃に関してはそこまで気にする必要は無い様に思えるのだがね」


それに対する領主からの返答は想定していた反応の一つだったので、


「いえ、ヴェルツァー五爵は相当な準備をしている可能性があります。そうなると、攻撃対象の場所を特定する魔法具が無いとは断言できません。また、念の為にお嬢様にも避難して頂くのですが、元々王都に居る事になっているので目標にされる可能性はあると考えています」


と、その考えを否定する方向で可能性を提示しておく。


 領主は少し考えた上でその考えに同意し、現在予定している人員の配置について聞いて来た。

それに対しルークが、


「宮廷魔道部隊の方が何人協力して頂けるかは不明なのですが、全員がこちらでメイド服を着用しての行動になる予定です。主力となる四部隊に関しては三部隊がここへ、一部隊が代わりの方のお屋敷で護衛をして貰う方向で考えています。エグフォルドタイガー達は代わりのお屋敷の方へ全て回し、僕の従魔はこちらに置いておきます」


との返答。


 ここで話に出てきたルークの従魔なのだが、先日私が勧めて《迷宮の虜》を使用して得ている。

本人的には何となくだろうけど、ルークはあまり好んで《迷宮の虜》を使用する雰囲気が無かった為、私が勧める事で踏み切ったと言う感じだ。


 まぁ、ルークの気持ちや状況はほぼ理解している。

おそらくだが、理由は爺の迷宮にあると思う。

更に根底となる問題もあるんだけどね。


 あの迷宮は魔物を全て《迷宮の虜》で縛り付けていた。

その《迷宮の虜》達を私達は蹂躙し、出会った魔物は全て排除していたのだ。


 では、その事でルークが何を躊躇してしまうのか?

それは、配下とした《迷宮の虜》達が死ぬ事だろう。


 ルークはこの世界で生まれ、子供の頃から狩りも行っている。

冒険者になってからも魔物を殺す事に躊躇いは見られない。

それが例え人に近い姿の亜人でも気にした様子は無いのだ。


 しかし、逆の事には恐れを抱いている雰囲気がある。

自分の死に関しては、そこまで気にして居る様子は無い。

しかし、仲間が死ぬ事に対して敏感になり過ぎているのだ。


 私と二人だけの時はそこまででは無かった。

それが気になりだしたのは、爺の迷宮でシェリー達の事を心配していた辺りからだ。


 そして、それが顕著に見られる様になったのは私と別れていた間の事。

話によると、レベルが30もある巨大な蟻と蜂の巣を殲滅したらしいのだが、女王蟻との戦いでミラが瀕死になる状況があったらしい。


 この事によってミラに心の傷が無いかどうかと、ずっと心配そうにルークは観察を続けている。

私の見た感じでは、ミラにトラウマらしきものは無い。

本人に話を聞いた所、どうやら恐怖を感じる前に意識が無くなって何が何だか分からないだけの様だし。


 しかし、この件で心に傷を植え付けられたのは、実はルークの方だった様だ。

それ以降、自分では気が付いて居ない様だが、ミラに対して過保護な位の極端なサポートを続けているのだ。


 おそらく、自分ではミラにトラウマが現れて居ないかどうかを気にしての行動だと認識しているはずだ。

しかし、実際には仲間を失いたくないという強迫観念からの行動である事を理解できていない。


 そして、この事が現在の《迷宮の虜》を使いたくない事の根底にある。

爺の迷宮のせいで無意識に避けて居た感はあったが、私の連れて来たエグフォルドタイガー達を見てからはその存在価値を十分に理解していた。


 しかし、いざ自分が《迷宮の虜》を使用する段になると気が乗らない素振りを見せる。

おそらく本人は、必要性を感じないと自分に言い聞かせていたのだろう。


 その根の部分には、おそらく使い捨てにされていた《迷宮の虜》達の姿があるはずだ。

自分はそんな風にはしないと思いつつ、自分が殺し続けた魔物と重ねてしまうのだ。


 従魔とし、愛着を持ってしまう事を恐れているとも言えるのかもしれない。

そういった感情が深まって行き、ますます《迷宮の虜》を使う事を躊躇わせていたのだ。


 しかし、私としては流石にそのまま放置が出来る訳は無い!

そんな気持ちを抱えたままでは、ルーク自身が今後足を引っ張りかねないからだ。


 そこで、魔送石を一郎達に装着したのを機に、ルークにも《迷宮の虜》を使わせた。

当然、拒否権は無い。


 ただ、流石にそれで色々とこじらせても困るので、死に難い魔物を私が厳選して決めている。

その件で説得する理由に選んだのは、ルークの迷宮に居る魔物の種類の少なさだ。


 ルークはあまり魔物の種類などには気を配って居ない。

何故なら、単純に食用や素材としか見ていないからだ。

それ故、基本的に魔獣と鳥系の魔物……その二種類しか居ないのだ。


 私は、自分が高い水準の万能タイプである自覚がある。

それ故、全ての従魔がエグフォルドタイガーでも問題は無い。

異常なMPによるサポートや回復は得意であるし、魔素《フルブースト》と《格闘術(異世界)》のお陰で前衛枠でも戦える。


 しかし、ルークは回避を得意とする遊撃かサブ盾役としての戦い方が身に付き過ぎている。

従魔とするならば、魔獣系だけで組むのは若干バランスが悪くなる可能性があるのだ。


 上手い事、一郎の様な盾役をこなせる魔獣が見つかればいいのだが、そこに時間をかける位ならば私の迷宮から明らかな盾役を引っこ抜いた方が早いと言うのが私の言い分だ。


 元々乗り気では無いルークは、全ての従魔を私が決める事にも特に異論は示さなかった。

そこで選んだのが、ゴーレム二体とその他で三体だ。


 選んだ基準は、基本的にタフな事だ。

ゴーレムの種類はゴールドとシルバーの二体。

その他はフォスター島と言う、ぶっちゃけると名前も知らなかった島の固有種が三体。

因みに、狼と鳥と蛇が各一体づつだ。


 ゴーレムは基本的にタフであり、その中でも特に面白そうなのが今回のゴールドゴーレムだった。

迷宮に湧くゴーレムは、大抵はズングリムックリと言う体型をしている。

樽を組み合わせたような奴や、レンガを積み重ねたような奴が多いのだ。


 しかし、このゴーレム達は人の形をしていた。

私的な表現で言うなら、良くできた顔の無いタイプのマネキンといった感じだ。

 

 ゴールドは男型でルークより少し背は高く、シルバーは女型で私よりも少し背が低い位、ゴールドは細マッチョ、シルバーは女性っぽい起伏はあるが筋肉的な盛り上がりは無かった。


 戦い方はゴールドが大きな盾と本来は両手で持つ位の大きな剣を片手で使い、ドッシリと構えるタイプ。

シルバーの方は後衛タイプで、弓と水&光系の特殊能力を使用する。

水と光系には回復や再生に関する物も存在するようなので、従魔だけでも安心して戦える事は正直有り難い。

ルークの無意識な強迫観念を解決するためには、絶対に死亡退場は許されないのだから。


 残りの三匹はフォスター島の固有種との事なのだが、どうやらこの島は相当過酷ならしく、どの個体にも《自動HP回復》《肉体再生》《火耐性》《氷耐性》がある。


 《火耐性》はともかく、寒さに弱い事が多い蛇にまで《氷耐性》があるってどんな環境なんだろう? と、思わなくもない。

何にしても、この五体が生存率の高さを取った選りすぐりの魔物達だ。


 因みに、攻撃能力の方も問題は無い。

過酷な環境で生きる為に、それぞれが高い攻撃力や特殊能力を持って居た。


 ルークには……まずこの五体、それで十分だ。

本来ならばもっと種類を揃えて状況に合わせて呼び出すのが理想だが、そこまで今すぐ求めるのは酷だろう。

そう、今はまず慣れさせる事だ。

そして、不安を感じないようになるまで待つ事が今は必要なのだ。


 因みに、この五体共に私から魔素が送られている。

それぞれに、何かしらの魔送石付きの装備をさせているのだ。

これにより、明確な意思の疎通が可能になって居る。

私の肉体を通った魔素の影響は情報面でも色濃く反映され、話す事までは出来ないが完全に理解出来て居る事が確認されているからだ。


 一応私自身が確認したが、狼の魔物に私が口頭での指示を繰り返した結果、完璧にこなしていた。

これで従魔に関しては問題は無いだろう。


 後は本題であるこちらの人員に関しての話だが、領主への説明はその後もルークがしているので割愛しよう。

結局は、さっき言った一部隊だけ王都で他はこっちってだけだしね。


 さて、それじゃ私はこちらの準備に入るとしましょうか。

製作がメインなだけに腕が鳴ります。

頑張るぞっと!

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