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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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81◆ルーク君、追求してはいけない事が世の中には沢山あります

 ルークが戻り、部屋の外から《通話》で話しかけてきたのだが……やはりリーナに関してはまだ警戒している雰囲気があった。


 当のリーナは、シェリーの膝の上でウトウトし始めている。

今はまだ第一段階との事だが、覚醒者として目覚めた(?)私達は睡眠時間が怖ろしい程短くなっている。

どう考えても、リーナが眠くなるにはまだまだ早すぎるはずなのだが……。


 考えられるのは、シェリーとの会話が予想以上に負担をかけているという所かな?

おそらくだが、私の記憶を持つリーナにとって、私との会話はある程度が予測の範囲内なのだろう。

亜人達に至ってはリーナの方が色々と教えている立場だ。


 しかし、先程までシェリーと一生懸命に話をしていたのだが、自分が今まで接してきたのとはあまりにも違う存在との会話は結構な疲労を伴い、リーナにとって予想以上の負荷だったのでは無いだろうか?

まぁ、もしそうだとすれば、この程度で疲労するようでは今後困る事になる。

そのうち慣れるはずなので、これも修行のうちだと思って頑張って貰おう。


 さて、本題のルークに関してなのだが、


『姉さん、流石に色々確認しておきたいんだけど、良い?』


まずはそう言ってきたので、


『良いわよ。何でも聞いて頂戴』


と返答。


 聞かれた内容的には予想通りの感じだ。

何故リーナがこのような姿でこのような状態なのか? と言う点に関しては、


『リーナ……いえ、正確に言えばカオススライムの無敵とも言える耐性を調べたかったのよ。あれ、物凄く厄介だったでしょ? あれがもし又出てきたらどうする? しかも《スティールMP》が使える状況ならいいけど、それも封じられたとしたら? そう考えたら、今後の為に解明しておかないとリスクが増える事に繋がるでしょ?』


『まぁ、そうだけど……』


『しかも! あの無敵の耐性が何らかの手段で手に入れば今後助かると思わない? 魔法具に封じて数秒だけ発動する魔法具とかでも十分な価値があると思うのよ』


『確かにそうなんだけど……』


『そういう訳で! 危険が無い様に《迷宮の虜》状態に出来たら問題無いと思った訳よ。で、《アイテム》から出した時にちょっとだけ……そう! チョットだけミスって情報をコピーされちゃった訳!』


『その、ミスってどんな感じだったのかを、おし……』


『まぁ、コピーはされたけど《迷宮の虜》自体は問題無く出来たのよ! それで、もう危険は無いからと少し様子を見ていたらあの姿になっていたって訳よ』


『うん……それで、どんな状況でそのミス……』


『まぁ、なんて言うの? カオススライムの時は、正直な所、知性の欠片も感じなかった訳じゃない。それが私の記憶から自己を確立し、知性と知識を得ながらも私とは別の人格を形成して、粘性人という一つの人間が生み出されたわけよ。人であり、私の事をママだと認識してくれているのだから、これはもう私の娘として育てていかなくてはならないわけよ!』


『いやいや……別に娘じゃなくてもい……』


『馬鹿ね、ルーク! こんなにかわいくてカワイくて可愛いリーナを放っておけと言うの! 私には出来ないわ!』


『……姉さんの言い分は理解出来たよ……。それで、例の無敵っぷりは解明できたの?』


ふぅ……激しい攻防の末、ようやく諦めたらしいので会話を通常モードに戻そう。


『正直私だけでは全く解明出来なかったんだけど、リーナがカオススライムの微かな記憶を読み取る事が出来て大体判明したわ』


『へぇ、解ったんだ』


『まず最初に言っておくけど、あれ……本当に最悪な嫌がらせ用の魔物だったわ。なんせ、破壊するのに単純な攻撃だけじゃ駄目なのよ。方法としては、ある一定以上の破壊力……おそらく私達が戦ったあの時点だと、30レベルの魔物に大ダメージを与えられる位の破壊力を使って各色に対応した魔法で全てを打消し、内部からエネルギーの供給が止まった外部のゼリー部分を物理攻撃で破壊、そこから更に精神系攻撃を行う事でようやく完全に沈黙させる事が出来るみたい。なぜそこまで酷いのかと言うと、《混沌の結晶》って言うのが鍵なんだけど、結晶と言いながら基本的に粒子になって分散しているらしいのよ。それをほぼ同時に潰さないと一瞬で再生すると言う……悪夢の様な仕様みたいね』


『……なに、その無茶な要求は!』


まぁ、ルークがそう言うのは当然だろう。

私もそう思ってる事だし!


 さて、折角の機会なので、私はその他の現在判明して居る事も説明していく。

《混沌の結晶》は魔送石と同じ様に、空間を隔てた場所からエネルギーを吸収できる事。

どの程度のどんなエネルギーが吸収されていたのかは不明だが、この能力と超復元能力を有した《混沌の結晶》によってあの無敵状態だったらしいという事等だ。


 因みに何故吸収していたエネルギーが不明なのかと言うと、現在は《魔素の泉》から魔素を常に供給して居る為、既にそのルートが停止しているせいだ。


 そして、事前に説明しておかなくてはならない重要な点として、粘性人の状態では超復元能力は使用できない事を伝えた。


 先の説明にもあったが、《混沌の結晶》と言う名前とは裏腹にカオススライム状態では結晶化しておらず、全体に粒子化して分散して居る事で全滅を抑えている。

しかし、粘性人の状態になると粒子の流れが肉体を破壊するらしく、これを防ぐために結晶化して心臓部になる為に残念ながら破壊が可能となってしまう。


 即ち、肉体構造はスライムの特性を多少は残していので私達とは違うのだが、人の分類である以上は無茶をしたら普通に死ぬというわけだ。

まぁ、結晶を砕かれた瞬間でもカオススライム化する事が出来る為、生存率は段違いに高いけどね!


 こうしてルークはリーナに関してある程度納得してくれたようだし、無駄な追及もしなくなった!

そう、追及しても無駄なのだ!!

私に答える気が無いのだから!!!


 しかし、残念ながらその回避しきった良い気分を吹き飛ばす程の面倒事がルークから伝えられた……

なんでも、以前ルークに突っかかってきた第三王女が狂って王城から蒸発、エルナリア六爵に対して嫌がらせをしてきていたヴァルツァー五爵には逃げられたとの事。

全く、何をやってるんだか……。


 まぁ、実際の所はどちらの件も仕方が無いとしか言えない状況だったらしい。

ルークに説明した時の第一王子曰く、


「その老魔術師はヴァルツァー五爵に絡む事を全て引き出した上で地下の監獄へ入れてあったのだが、メリルリアナが持ち出した宝珠の力で現在は傀儡と化して同行中だ。元々現在は思考力など無い状態だった為、完全に支配されている状態となっている」


との事。


 老魔術師は移動迷宮を持っていた訳だし、熟練度を考えれば最悪三個の迷宮を保持している。

私達が攻略した迷宮は自動追尾型では無いはずだが、高いMPコストや時間をかければ呼ぶ事が可能であるし、そもそもが残りの二つの迷宮のタイプ次第では簡単に移動されてしまう。


 一番簡単なのは、自動追尾型と固定迷宮の組み合わせだろう。

私自身が愛用しているのだから、利便性の高さは間違いないと言える。


 そしてヴァルツァー五爵に関しては、流石悪党……しっかり自分達が逃げられる魔法具を用意してあったらしい。

おそらくはシェリーが王都へ行く際に購入した帰還の魔法具と同じ様な物を用意していたらしく、護衛と一緒に全員で消え去ったとの事。


 因みに、その効果とその規模の魔法具は使い捨てなのに恐ろしい程高い。

良く判らないかもしれないのだが、比較としてエルナリア六爵領の年間予算よりも高いとだけ言っておこう。


 現在、ヴァルツァー五爵に関しては完全に情報無し。

第三王女も同様なのだが、こちらに関しては接近を感知する魔法具が存在するとの事。 


 この魔法具は王家の者にかけられた守護の印と言う物を、ある程度の距離まで感知する事が出来るらしい。

その効果範囲は約十km。

この印は王家の上位継承者のみに生まれた時にかけられる祝福で、身を守る障壁を発すると共に専用の魔法具である程度の距離から位置を特定できる。


 本来は継承権を持つ者の救出等を目的とした探査用魔法具なのだが、今回は近寄られる前に察知する為に役に立つだろうとの事。

製作には相当な手間がかかる為、現在支給出来るのは二個が限界らしい。

出来るだけ早いうちにもう少し渡せる様に努力はさせるとの事だが……まぁ二個あれば問題は無い。


 王女の方はそれでいいのだが、問題はヴァルツァー五爵の方だろう。

国外へ逃亡しているのならば当面は問題は無い。

しかし、今回の件で一番恨まれているのは誰か?

明らかに逆恨みなのだが、間違いなくエルナリア六爵だろう。


 これは……色々準備が必要かな。

まずは、当人に相談するしかない……かな。

まぁルーク君!

頑張りたまえ!!

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