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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第一章
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9◆《魂の回廊》と《ウィンドウ》……私の伝説が始まった!(?)

 私の錬金術修行は順調に進んでいた。

魔法も日々修練を積んで、どの系統も失敗せずに最初の物なら発動させられるようになっている。

こればっかりは仕方がないことなのだが、ルークは火と風の魔法を冒険者仲間から習得し、すでに私よりも上位の魔法を使いこなしている……。

わかっては居てもちょっと悲しい。

まぁ、《魔素の泉》を使えば威力が底上げ出来る事がわかったので、火力的には負けていないはず!

それに加えて、どうやら私はMPが人より多いようだ。

師匠が驚いていた位なので、数で勝負も出来るはず!!

……そう思っておこう。


 そのルークだが、今日からパーティーに加えて貰うらしい。

今までは人数合わせにギルドからそこに参加するようにと言う形だったのが、今回は実際のメンバーとして誘われたのだと言う。

あくまで今回のクエストにという話だったので、臨時の補充メンバーなのは変わらないようだけれどね。




 ☆ ☆ ☆




 ここから一日程度の村でのクエストらしいので、大丈夫だとは思うがやはり夜に帰って来ないというのは落ち着かない……。

これはあれだ。

完全に過保護なお母さん的気分だ。

携帯電話の一つもあれば安否がわかって安心出来るのに、と考えてしまう位落ち着かない。

そこで思い出したのだが、実はルークと離れて夜を過ごすのはこの十五年弱で初めてだ。

田舎の村暮らしだったから、丸一日以上離れた事なんて無かったのだ。

う~む、流石に落ち着こう。

この先は離れる事も多くなるのだから、信じて待つ事を身に着けていかなくては……。




 ☆ ☆ ☆




 今日も朝から師匠に分担を聞き、担当分をガンガン消化する。

正直な所、普通にやると納期に間に合わなくなる状況になってしまったからだ。

私が予想外の速度でMPを消費する下準備部分まで出来るようになった為、ここ数日で余裕が出来て居たのだが、取引上の付き合いでどうしても引き受けなくてはならない緊急の仕事が舞い込んでしまったのだ……。

それ自体は何とかこなしたのだが、今度は私の仕事量を考慮しても納期が間に合うか怪しい所まで時間を取られてしまっていた。

そこで、今日から数日間は師匠が頑張る方向で動く事になった。

師匠に必要なのはMPなのだ。

そこで午前でMPを使い切り、昼から日没まで寝て、再度仕事をしてから寝る。

一般的にMPは六時間寝ると全快するらしいので、疲労は抜けなくても仕方が無いと割り切って、数日間をこのペースで乗り切るのだ。

もうこれしか無いという事になったので今日から実行となった。


 午前の部が終わって私は自己練習を始める。

私のMPは正直そうそう使い切れない。

無駄に撃ちまくれば尽きるのだろうが、安定した制御をマスターする為に行う訓練では使い切れるMPでは無い。

それ故に、私は師匠が寝ている間も訓練していて問題は無いので練習あるのみだ。




 ☆ ☆ ☆




 陽が落ちる前に午後の部が始まった。

六時間には少し足りない気がするのだが、まぁほとんどは回復しているのだろうから問題は無さそうだ。

出来る部分を増やせるだけ増やそうと、師匠と相談しながら作業をしていたらルークが帰って来た。

仕事の邪魔をしないように気を使ってくれている様なので、敢えてそのまま作業を優先する。

陽が暮れた少し後位に私が担当する分が一時的に終わったので、師匠にルークの様子を見て来ると言って二階に上がった。

ルークの部屋に行くと疲れて居たのか、ベッドで横になって居た。

寝ていた感じではあるが、あまり深い眠りでは無かった様で今は眼が覚めている様に見える。

私は軽くベッドに座るとルークの頭に手を乗せた……。


「………………ッッッ!!」


不意に私の口から声にならない呻き声が漏れる。

何故なら一気に様々な情報が流れ込んできたからだ!

恐ろしい疲労感も感じるがそんな事はどうでも良い。

今とんでもない事が起きている……。

目の前には、昔ルークの相談を聞いた時に調べた画面が見える。

確認の為に『コマンド』を『押す』。

確かに『押す』と動作するようだ。


 私は立ち上がり、ルークの目を見つめながら足を肩幅に広げて手を腰に当てながらこう言い放った。


「フハハハハハハッ! ワタシハ、ツイニチカラヲ、テニイレタゾ!!」


敢えてワザとらしい棒読みでの台詞を言った。

この歓喜はそれ位で済ませておかないと、自制が効かない狂喜となってしまうからだ。

そう、私はルークのもつ能力、通称《ウィンドウ》を手に入れたのだ!!




 ☆ ☆ ☆




 スキル欄を見ると《魂の回廊》と言うスキルが一番下にあった。

これだろうな。


「ルーク、今回の仕事で《魂の回廊》ってスキルを手に入れた?」


「うん、今回のボスが持っていたスキルだね。なんでわかったの」


やっぱりか。


「そのスキルのお陰ね。『ワタシハ、ツイニチカラヲ、テニイレタゾ!!』って訳よ!」


「うん…………意味が分からないから!」


まだまだルークは推察する事は苦手ね。

《魂の回廊》を私が知ってる所から推理出来る可能性はあると思うのだけど。


「鈍いわねぇ! 私も《ウィンドウ》を手に入れたっていっているのよ!」


流石にルークは唖然としていました。


 この驚愕の事実に対する私のの予想は二つ。

双子であり、ずっと一緒に育ち、同じ目的の為に行動してきた私達に《魂の回廊》が発動する条件が存在していた。

もう一つが、本来私の持っていた能力がルークに流れ込んでいるだけなので、《魂の回廊》により道が発生した事で、元の持ち主にも戻ったと言うものだ。


「まぁ、どっちでも良いし、どうでもいいわ。ポイントは私にも使える様になったって事よ!」


 そう言って、肩幅に両足を開き、くの字に曲げて左手を腰に当てる、真上に右手を掲げ、斜め上を見つめて晴れやかに言う、


「もうルークだけに苦労はさせないわ! 私もすぐに一人前の魔法使いになって見せる!」


そう宣言した!




 ☆ ☆ ☆




 翌日から《ウィンドウ》について色々検証を始めた。

私達の《ウィンドウ》は共通のものの様だ。

お互いが持っているスキルは全て合わさって持っていたし、聖眼獲得値や《アイテム》の中身も共通だ。

違うのは、実際に今まで得た熟練度が個別になっている。

私が練習したけどスキル獲得まで行かなかった弓の熟練度0のままだ。


 ここにきてからの私が取得した魔法やスキルは軒並み2~3。

是非とも師匠のスキルを早急に獲得したい。

普段の仕事中でも様々な魔法を駆使しているので、そこで得られる物は獲得しておきたい。

問題は《簒奪の聖眼》の仕様だ。

ルークは同じ相手に再度使った事は無いらしい。

失敗する時は、大抵戦闘終了間際まで粘ってから実行するから次の機会がないとの事。

師匠が仕事で使う魔法はどうしても限られている。

今日は獲得しないでずっと見ていたが、大体どれも30%前後で止まってしまう。

何度でもトライ可能であれば数日で全部揃うと思う。

再チャレンジが不可能であるならば、納期が終わって仕事が落ち着いてからとにかく色々な魔法を見せて貰い、100%に近い状態まで持って行く必要がある。

その確認は必須だ。




 ☆ ☆ ☆




 仕事が終わり、私は商店が並ぶ通りに来た。

目的は当然《簒奪の聖眼》の性能確認だ。

商店の中で働く人達を確認していく。

次々と使用スキル欄にスキルが現れ、獲得確立が上がって行く。

まずは野菜をメインにしたお店の店員に対して《聖眼》を発動する。

20%だったが失敗。

そのままターゲットを移さずに見ておく。

再度獲得確立が上がって行く。


 今度は他の店を確認し、同じ行動を繰り返している人を探した。

店の前に積まれた荷物の位置を延々と移動させている人がいる。

今度はこの人に《聖眼》を発動。

30%だったが見事失敗。

再度上がった所でもう一度失敗。

それでも又上がるのを確認して満足した。

よし!

何回でも可能なようだ!!

それじゃ、明日は師匠のスキル獲得にいそしむとしますか。

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