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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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79◆ミルロード領の迷宮設置の下準備とリーナの紹介

 王都で再集合してから二週間。

本格的にはまだまだと言った所だが、午後に行っている王都の迷宮の探索はそこそこ進んでいた。

もっとも、今の所は敵のレベル的にやや微妙と言った所で、ゲルボドから得た魔法の修練が良く進むといった感じだ。


 この迷宮なのだが、私の迷宮はいくら魔素を注ぎ込もうと七層から増える気配が無いのだが、何故か二十一層まで確認されているらしい。

即ち、階層を増やす鍵は最低でも魔法物質の量以外にあると言う事になるのだろう。

考えられるのは、時間の経過か熟練度と言ったところかな?


 ただ、マスターが居なくなった迷宮も成長するらしいので、熟練度だけって事は無い気がする。

まぁ、自分の熟練度上昇の様子も絡めておいおい確かめて行くとしよう。


 私の用事であるこの迷宮探索の時間で、リーナに頼んだミルロード領への移動は先日終了している。

時々迷いながらも、私が地図と《浸食共有》の視覚を使いながら正しい道を示す事が出来たので問題無く行けた。


 無事に仮の迷宮設置も終わり、現在はミルロード卿が実際に迷宮を置く場所を選定して居る所だ。

因みに、現在はマスター用の扉を二つともミルロード卿に提供できるのだが、実際の迷宮では一つしか使用させない事を考えると今回も一つだけの方が良いだろうと不便なまま使用して貰っている。


 迷宮設置の選定基準は街から丁度十kmであり、近隣にある主要採掘場を迷宮の範囲に出来るだけ多く含める事である。

街には少数ながら《錬金術》や《付与魔法》を使って商売を行っている者もいるし、《自然魔法》自体で生計を立てている者も居る。

その為に街は範囲から外しておきたいからだ。

逆に採掘場付近はたまに危険な魔物も出る為、有効に使って魔物の脅威を削り切ると言うのが目的となっている。


 ミルロード卿はこの件で忙しく動く事になるのだが、元々が後一週間程度で領地へ旅立つ予定だったので、順番が逆になる事も発生するが順次処理して行けば問題は無いと言って精力的に動いている様だ。


 今後の事もある為、移動手段を私が用意した。

どんなものかと言えば、馬型のゴーレムと馬車型のゴーレムだ。

素材的にはどちらも木、要はウッドゴーレムである。


 このゴーレムの特徴は、魔法物質の低下している場所での行動を可能にしてる点となっている。

迷宮を配置した後、十kmの距離がある街へ戻る為の手段は必須。

毎回歩いて十kmも歩くのは現実的では無いからだ。

そうなると、迷宮近くに馬車と馬を常時用意しておく必要がある。

でも、それって無駄だよね? と言うのが作成理由だ。

まぁ、本当は私の故郷で使う為に作成した試作品を回しただけなんだけどね!


 何故魔法物質が低下しているエリアでも動けるのか?

これは、単純に充電式のバッテリーと同じだ。

使わない時に貯めておけば良い、ただそれだけ。


 ゴーレムを作成するようになって分かった事だが、同じゴーレムでも色々な種類があるのだ。

迷宮に居る様な戦闘用のゴーレムは、魔法物質を常時供給してパワーを上げているらしいので迷宮から出ると活動が不可能になってしまう。


 そして、今回参考にしたタイプは守護者タイプとでも言えば良いのかな? 最小限の維持にだけ魔法物質を使って劣化を防ぎ、残りを充電式に貯め込むタイプだ。

この方が無駄は省け、使う時には多くの魔法物質が使える。

実用されているのは、宝物庫や隠れ家の守護に置いておく事が多い様だ。


 私はこの守護者タイプのゴーレムに大量の劣化魔素石を埋め込み、仕事が無い時に魔法物質を貯め込んで使う事を可能にした。

その試作品一~三号が今回の支給品と言う訳だ。


 因みに迷宮のある地域でも通常は三割程度の魔法物質がある為、追加で消費するのは一割程度。

フルで魔法物質が充填されて居れば、半日以上は動き続けられる位の魔法物質保有量を目安にしているのでそうそう動けなくなる心配はない。

勿論、ミルロード卿自身に予備の魔素を封入した劣化魔素石も支給してある。

渡してある分をフルに使えば四時間は持つので、普通であれば何の問題も無い筈だ。


 因みに、馬型二頭と馬車型が一台なのだが、どちらも二足歩行が可能だ!

何故二足歩行? と思うだろうが、固定迷宮の入口は基本的に地面から潜る形状が多い。

私が現在作れる固定迷宮は必ず地下迷宮タイプなので、違うタイプを作るのには熟練度が足りないのか、特殊な条件が必要なのか、又はスキル自体が別に存在するのかもしれない。


 因みに、森林型やその亜種で迷いの森型迷宮、建造物同化型迷宮等は時々見つかっている。

森林型は文字通りなのだが、特徴は木々が邪魔をして決められた進行方向以外には進む事が出来ない。

迷いの森型は更に面倒で、その木々が動いて迷宮の形がいつの間にか変化してしまうと言う最悪な物だ。

建造物同化型は、例えば建物内にある他と変わらない普通の扉にしか見えないのに、そこから奥は迷宮となって居るタイプの等といった物だ。


 幾つかある仮説としては、主に破棄された迷宮はこの世界の外を彷徨っている。

それらの彷徨う迷宮が、時々こちらの世界の扉や森と同化して安定するのではないか?

そう言った説が幾つもあるのだが定かではない。


 話を戻すと、今回設置する迷宮も地下迷宮となって居る。

マスタールームの使用者は地下迷宮の入口の段階で迷宮とマスタールームを選択できるのだが、この際に馬や馬車が移動する事が困難であったり不可能であったりする段差が存在する。

故に、どうせゴーレムなんだから二足歩行で出入りすれば良いんじゃない? と言う理由で、普通の馬には出来ない関節の可動や重心変更を行って器用に二足歩行で歩く。

因みに、口から光属性の怪光線を吐くのは内緒だ!

出力を極限まで下げると夜間のライト代わりにもなります!!


 馬車型ゴーレムは根本的に大きい為、かなりコンパクトに変形する構造にした。

馬車は基本的には箱なので、内部空間を潰す様にガンガン変形をして行き、最終的には前世で車や飛行機が変形するロボットアニメや特撮に出てきそうな二足歩行ロボみたいになる。

こちらは比較的汎用性が高い戦闘能力を有しており、レベルは25との事なので多少は戦闘力としても期待出来るだろう。

因みに、馬型は残念ながらレベル20なので少し頼りないかな。


 そう言う訳で、現在はリーナの迷宮に関してはミルロード卿の結果待ち。

移動の為に使用して居たリーナの移動迷宮と固定迷宮は、現在別の目的の為にとある場所に置いてある。

まぁ、その件はまたそのうちと言う事で。




 ☆ ☆ ☆




 さて、今後の事も考えて私がこの日行った事は……リーナのお披露目だった!

いや、だって……亜人達の事も大体目途が立ったし、リーナのレベルを上げる事も考えたら出来るだけ一緒に行動した方が良い。


 ルークには色々突っ込まれる事は予想出来る。

まぁ、適当に流そう。




 ☆ ☆ ☆




 リーナを連れてまずはルークに紹介した所、予想通り動きが完全に止まっていた。

子供の頃の私を見ているルークは、間違い無くリーナの姿に混乱している事だろう。


 思ったよりも早く立ち直ったルークが《識別》を使った事が、《ウィンドウ》の左にある《簒奪の聖眼》用の使用スキル欄に現れた事で分かった。

これでルークには色々バレたはずだ。


 リーナの現在の情報は、


粘人族:女 レベル34

特殊情報:《混沌の結晶》《捕食融合体》《形状変化》《浸食共有》《女神の加護(亜種)》《覚醒者(第一段階)》《???》《???》


となって居る。


 ここで隠しようが無い情報……《混沌の結晶》、これで全てが理解出来るはず。

案の定、訓練によって視線自体は動いて居ないものの、おそらく《アイテム》を確認しているであろうがあった。


 明らかに、ガックリという擬音が似合う仕草で崩れそうになるルークは放置して、リーナを紹介する為に他のメンバーも集めた。


「この子はリーナ。これから一緒に生活するからよろしくね。はい、リーナ。ご挨拶して」


「……うん、ママ。……リーナです。宜しくお願いします」


私が紹介し、挨拶するように促すとリーナが行儀よく挨拶をした。

十分に人間社会で生活できる常識を得ている様だし、最初の頃よりも明らかに反応速度も上がっているので問題は無さそうだ。


 むしろ問題は、ここに居る面子の方にあるかもしれない。


「お姉様のお子様なのですか! とても可愛らしいです!」


「ルナちゃんと同じ位なのですね。エルお姉ちゃんにとても似て居ます」


「小さいシャ――――!」


と、シェリー、ミラ、ゲルボドが思いっきり信じていた!


 いやいや! こんな大きな子供は有り得ないでしょう!!

まぁ、ルルは首を傾げていたし、ラナに至っては俯きながら顔を押さえて皆の反応に絶句していた。


「……姉さん、実際の所は……?」


ルークが当然そう聞いて来たので、ワザとらしくチッっと舌打ちして、


「バレたのなら仕方が無いわ!」


そう答えた。


「この子、例の老魔術師の迷宮に居たカオススライムってのが素になってるんだけど、私の情報を吸収して人になっちゃったのよ。そう言う意味では私から生まれた娘みたいなものなので、ママって言うのもあながち間違っては居ない訳」


その答えに、ルークは完全に納得して居ないと言った顔でこちらを見て居たが、他のメンバーは納得していたのでルークも特に反論は言わなかった。


 こうしてリーナのお披露目は無事終わり、シェリーとミラは特に気に入ったらしくて可愛がりまくっていた。

まぁ、嫌がってはいない様なので好きにさせよう。


 取り敢えずはゲルボド同様に人間として認めさせる必要があるが、現在は当時と違って先生の口添えがあれば直接審査が受けられるだろう。

まぁ、次回先生と会う時に忘れずに頼みましょうかね。

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