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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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77◆王都集合からの二週間にあった出来事(3)

 リーナに関する事が終わったので、次は工事関係の話へ移ろう。

最初から予定していたロウを中心としたゴーレム部隊による環境整備が始まった。

ゴーレムは根本的には魔法生物である為に自動で動くのだが、基本的な行動パターンと特定の命令コマンドを製作者が作成する事で特徴を持たせる事が出来る。

良くある物としては、やはり戦闘に関するものが多い様だ。


 今回作ったゴーレムは基本的に戦闘用では無く、農村での開拓に使用する動作を組み込んである。

これらの動きをどの状況でどう使うかをゴーレムに教え込み、ロウ自身も状況を判断して指示する事に慣れていく作業がこれまで行ってきた事だ。

途中からは興味を持ったエルナリア六爵の家臣達も一緒になって行い、十分に指示通りに動けると判断したことにより、私の故郷で本番を始めている。


 不便だった場所を整地したり、人が破壊する事が困難である為に放置されてきた岩や枯れた巨木の根、治水関連や用水路の整備を始め、気になる場所をどんどん絞りだして今後の方針に組み込んで行っている。

更に、新たに畑を開墾し、手間のかからない植物を植える事で収穫を増やし、畑を肥えさせたり休ませたりする為として多めに増やしていく。

その他にも余分に開墾しておき、新たに村民が増えても受け入れが出来る状況も整えて行く。

余分な分の面倒をみるのは各村に数体の専用ゴーレムを配置して任せれば良いので、すぐには人員を配置しなくても荒れて使い物にならなくなる心配が無いのは私の強みといえるだろう。


 本来ならこんな事にゴーレムを使用するのは無駄遣い以外の何物でも無いのだが、素材は多少の手間だけで入手可能。

作成も師匠の手伝い込みで自作。

領地の改善に関する事なので領主から文句が出る訳も無く、好き勝手にやっているのが現状だ。


 これらを行うのには当然理由がある。

迷宮の話が広まれば嫌でも領内の人口は増える事になるので、その為の下準備なのだ。

人数が増えるのに食糧が自給出来ないのでは、ハッキリ言ってリスクが大きすぎる。


 もっとも、ぶっちゃけるとこの村に関しては私自身が知り合った人を連れて来る可能性の方が高いけどね。

ジムルやロウみたいに、知り合いになってしまうと何となく放置出来ないのは私の性分なのだろう。


 さて、この工事はエルナリア六爵の許可のもと各村で行っていく予定なのだが、取り敢えずは私の方でも人員を増やす事にした。

理由としては、基本的な人員がロウ一人では大変であるという事と、ルークの知り合いに丁度いい人が居るようなのでスカウトする気になったからだ。


 知り合いとは言ってもそこまで親しい人では無く、仕事の最中に助けて用事を頼んだ人だとか。

ルークの見た感じとしては人柄に問題は無く、病気の母親を助ける為に一家揃って頑張っているらしい。

話を聞いた限りではエルナリアに移住する事も問題は無さそうだし、今後人が増えて行くに当たって常識の幅を広げる意味でも役に立つかもしれない。

流通や交流が薄いこの世界だとどうしても地域ごとの常識が異なる事になってしまう為、事前に対策を練っておいた方が揉め事は少なくて済む。


 この人には以前私が盗賊退治の際に作った使い捨ての《アースシールド》の魔法具を渡してあるらしいく、その回収に行くと言うので同行する事にした。

その際にはゲルボドも連れて行く。

理由は簡単、《快癒》で病気を治させる為だ。


 ただし、問題は病気が治っても《快癒》による正常化作用が強力過ぎて異常な部位周辺を根こそぎ取り除いてしまう為、一時的に魔法物質によって代わりを務めているその部分に必要な栄養を供給しなくてはならない。

実の所、万能だと感じる《快癒》の欠点とも言えるのはここなのだと今は理解している。


 例えば、腕が消し炭にされたとしよう。

《快癒》であれば失った腕すら再生が可能だ。

しかし、腕一本分の栄養が肉体に余剰しているのかと言えば、当然答えはノーだ。


 実際の所、この様な場合には全身から少しづつ必要な構成要素をかき集めて土台を作り、足りない分を魔法物質で補いつつ全身のかき集めた部分も同様に補っている。

例をあげると、失った骨の形を最低限作れる分を他の骨から抜き取って作り、そこに最低限の肉を作れるだけのタンパク質や水分等を他から持ってくる。

その抜いた部分や再生した部分に魔法物質が代わりを果たす効果時間は約一日。

これを過ぎると再生した腕は動かす事も厳しい程にガリガリの腕になり、その再生の為に集められた分の肉や骨の構成物質が正常だった部分から抜き取られている為、一気に全身が脆くなったり貧相になったりするのだ。

再生させた部分が大きければ大きい程その反動は大きく、最悪の場合はショックで死に至る可能性すらあるだろう。


 流石にそうそう死ぬことは無いとはいえ、そこまで楽観視出来ないのが《快癒》と言う魔法の真実だ。

そこで、今回の母親についての話となるのだが、ルークから聞いた話だと……おそらく何らかの腫瘍がかなり大きくなっている可能性が高い。

そして、治療代に困ってる事からも栄養状態は普通かそれ以下、余剰している事はまずないだろう。


 おそらくだが食も細くなっている可能性が高く、安易に《快癒》を行える相手では無い。

そこで、以前ネイアに作らせた栄養素を凝縮させたスープを更に突き詰め、錬金術によって栄養素を壊す事無く固形化する事にチャレンジ!

見事に成功することができた。


 前世で良く見かけた大きさの丸薬に仕上げ、カルシウムやタンパク質、各種ビタミンや鉄分等を始めとした人体に必要な要素を単純に凝縮させて劣化を防ぐ魔法を付与した特製品となっている。

《快癒》によって一時的に正常化された胃腸ならば十分に吸収してくれるはずなので、これを三十分に一回程度水分と一緒に飲んでもらう。

これで行けるはずだ。


 結果として奥さんの病気は完治、無事家族全員で私の仕事を手伝ってくれる事になった。

現在はエルナリアの街へ迷宮経由で引っ越している。

家は私が空き家を買い取り、補修とすぐに住める位の家具を支給してから渡した。

この件で増えた人員は父親、母親、娘二人の四人。


 父親であるゼットには工事用ゴーレムを担当して貰い、ロウと同じ役割となる予定。

その他の女性陣には農作業用ゴーレムに育てる種類に応じた仕事のやり方を教え込み、新規で作成した余剰分の畑に送り込む方針だ。


 ゴーレム作成はリーナが《ウィンドウ》を使える上、《自動MP回復(極大)》と《浸食共有》から送られてくるオガ吉が敵から吸収したMPのお陰で効率が尋常じゃなく上がった。

リーナは私の手を捕食した段階までの記憶と熟練度を持つ。

その事によって、ほぼ私が二人いるような状態なのだから、師匠抜きで大量のMPを消費する作業を次々と行える事も大きい。


 この事により、結構な量の素材を保有していたのだが、あっという間に使い切ってしまった。

もっとも、この段階では既にエルナリア卿とミルロード卿から依頼された分にプラスして相当数の農作業用のゴーレムが出来ているので足りないという事は無いだろう。

後は、迷宮の方で湧いてくるアイアンゴーレムの収穫を待とう。


 こうしてエルナリアの家臣団にゴーレムを渡し、ゼットへの指南も含めて第二陣が動き出した。

奥さん達もゴーレムに指示を出して適切な対応を覚えさせる作業に、最初は戸惑いもしていたようだが段々と慣れてきて問題は無さそうだ。


 取り敢えずは現在の所、順調に進んでいる。

これからも問題点や課題となる点が出て来る事もあり、領内の村全てを改善して行くので年内には終わらないだろう。

急ぐ必要は無いので、気長に慎重に進めて行こう。

うん、安全第一でいきましょう。

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