表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
86/138

76◆王都集合からの二週間にあった出来事(2)

 リーナを外に連れ出す方向で行動するに当たり、事前に得ていた情報が役に立ちそうだと私は感じていた。

その情報に関しては、前半に当たる一週間の活動中に得られていた。


 王都でまず行った事として、ルークが得て来た図書施設の使用が可能になったお陰で闇属性に弱い魔物を調べられた結果、幸運な事に該当する魔物を発見。

アイアンゴーレムが多数湧く階層とエルナリア領でお抱えの冒険者が試しに潜っている部分以外をその魔物が湧く条件に変更して、大体全ての魔物が入れ替わる三日を目途にリセットし……三回目で何とか出現させる事に成功。

無事《スティールMP》で全てのMPを一回で引っこ抜ける物が出来た。


 そして、こちらもルークが得て来た《付与魔法》の指南を余裕がある時にお願い出来る権利を行使して、お互いに時間を作れる時に色々見せて貰っていた。

この時判明した事なのだが、教えてくれる方……今後は先生と呼ぼう……が、師匠クレリアさんの《付与魔法》における兄弟子らしい。


 私の《付与魔法》のやり方を見て気になったらしく、師匠の名前を聞かれてその事実が判明した。

元々親切に教えてくれる方だったが、より深い所まで教えて貰える様になったのは正直有り難い限りだ。

出し惜しみすると言う意味では無く、どうやら流派的な物によって相性が良くないやり方が結構あるとの事で慎重になっていたらしい。


 師匠にその事を伝えると一緒に王都へ行く事になり、話が盛り上がった事で師匠の向上心が再燃。

その後は、先生の時間がある時に師匠も参加しての勉強会&実験と研究が行われる事になった。

まぁ、その関係で色々バレてしまった訳だが!


 師匠と一緒に作業して居た際に、全く気にせずに極悪なMP消費、《ショートカット》からの普通では有り得ないタイミングでの連続操作、そして魔素の使用。

いやはや! 慣れって怖いね!!


 こうして、《無詠唱魔法》の亜種を使える事や、それによって新魔法として組み立てた魔法的作業が使用可能である事、魔素を使用出来る事を教える事になった。

もっとも、ルークが既に色々やらかしているので《ショートカット》はそこまで驚かれなかったし、以前エルナリア領から流出した劣化魔素石の謎が解けたと大笑いされてしまった。

もちろん、この事は他言はしないと約束してくれた。


 さて、ここでそろそろ本題に入ろう。

こうして調子に乗って少し集中的に行われた勉強会&研究なのだが、この際に私と師匠が作ったタイプとは違うゴーレムが話題に出たので作った事があった。


 このゴーレムは私達が作ったゴツイ物では無く細かな作業を得意としたタイプで、人と同じかそれより小さな姿と細い身体を持つ事が特徴だ。

このタイプのゴーレムは、区別する為にパペットと呼ばれる事が多いらしい。


 このパペットなのだが、しっかり作ると質感はともかく動きは本当に人間と同じ様に動ける。

ゴーレムも魔物の一種とされる事がある位なので、《浸食共有》を使う事で戦闘が出来ないまでも指揮官役に出来ないかと考えた訳だ。


 この目論見は見事に上手くいき……いや、想像以上に上手く行った。

リーナの持つ《混沌の結晶》は、実は普段から結晶化はして居ないとの事。

粒子になって全体に分散しており、ある程度は無くなっても恐ろしいスピードで再生してしまうらしい。

因みに、これがカオススライムが無敵だった正体である。

この粒子を小さく結晶化させた物が《混沌の欠片》となり、全属性に耐性の無い者に埋め込むと拒絶反応がおき、最悪発狂する。


 しかし、思考の無い状態のパペットには問題無く埋め込むことが出来、最低限の指示を実行出来るレベルでの思考能力を与えた段階で《浸食共有》状態にする事で問題無くリーナが視覚を共有でき、《混沌の欠片》が馴染んでくると身体自体を操れるようになった。


 MPは本人の分を消費する事で普通に使え、同様に本人のスキルも使えるようになった。

更に驚いた事に、全属性に耐性のある私だからなのかもしれないが、身体の動きまでは無理ではあったが魔法と肉体を使わないスキルの使用が可能になった。


 しかも、恐ろしい事に私とリーナが同時に《浸食共有》によってパペットに干渉してそれらを行えるのだ。

簡単に言えば、リーナが戦っている状況に私の魔法が追加で撃てるといった感じかな。


 こうして機能的には問題無い事が確認されたので、今度は見た目をどうにかする方向で試してみた結果、《混沌の欠片》が埋め込まれているお陰か、カオススライム状態になったリーナの一部を張り付けてみたら融合して張り付いたままになった。


 そこで、全身に張り付けてからリーナによる操作を行って見た所、外見自体も自分と同じように変化させる事ができ、しかもそのまま固定されたのだ。

大きさは丁度私とリーナの中間位で、当然だが私やリーナと同じ姿をしている。

普段の表情は大人しい感じなので若干リーナ寄りかな。

因みに基本の構造材は木なのだが、見た目よりも結構重いとだけ言っておこう。


 これで必要な時に私とリーナは別の所に居ながら亜人部隊を指示できる事になった。

このように本格的に表舞台に出す為の準備を進めていき、着々と準備は整って行った。


 ついでと言っては何だが、この色々迷宮で行った作業の際に《迷宮の虜》による従魔を増やしてみる事にした。

理由は一郎達エグフォルドタイガーが思っていたよりも優秀で、番犬代わりに各邸宅や実家に配置しておこうと思ったからだ。


 しかし、ここで意外な事実が判明。

爺の迷宮では恐ろしい程の《迷宮の虜》状態の魔物が居たので、数に制限は無いか相当多いものだと考えて居た。

しかし、迷宮外へ連れ出せる匹数に制限がある事が判ってしまった!

その数はどうやら五匹。


 実は私が連れ出していたのが最大数だったらしい。

正直な所、現状は迷宮内に敵を引き入れる機会も少ないので、迷宮内の配下を作るかどうかは検討かな。

好みの魔物が居たら迷宮内で育てる方針程度でいいだろう。




 ☆ ☆ ☆




 亜人達に関しては、もう一つ問題が生じているのでそちらにも着手した。

リーナの《浸食共有》により、《迷宮の虜》が上書きされてしまった事で私の迷宮では攻撃されるようになってしまったのだ。


 《浸食共有》の性質を考えると、リーナの迷宮を作れば襲われない可能性が高い。

もし攻撃を受けるにしても、いままでの様に迷宮内の一室よりはマスタールームの方が快適に過ごせるし、弱い食用魔物を配置してもいい。


 《浸食共有》のお陰で、ここいいる亜人達が実はしっかりとした知性や知識を持ち、個性的で人間と変わらない存在となって居る事を理解してしまった。

いままでが酷かったわけではないのだが、更なる環境改善は行うべきだろう。


 そこで、リーナに自分の迷宮を作って移動する事を提案すると、


「……リーナ、ここが好き。ここに居ちゃ駄目なの……?」


との事。


 知性を持った時からここに居た為、この場所が安心できる場所になっているのかもしれない。

それならば無理にここから引き離す必要は無い。

扉での移動がある以上、自分の迷宮とこの部屋を繋いでおけば良いだけなのだから。


 そうなるとマスター用の扉が必要なので固定迷宮になるのだが、どこに置くかが微妙に問題となる。

ぶっちゃけるとどこでも良いのだが、有効に利用できる所が望ましいのは確かだ。


 現在の熟練度だとマスター扉は二個設置できる。

一つはリーナ達が使うので、他者が使えるのは後一つ。

この条件を満たすのは……ミルロード卿の領地がベストかな?


 ミルロード卿は片道十日の道を、年に数回移動しているらしい。

領地に奥さんと子供がいるらしいのだが、仕事の関係で半分は領地、半分は王都で生活せざるを得ない為に領地に置いて来ているらしい。

子供が小さい頃は移動が困難な為に置いて来て、今は領地運営で必要な事を学ぶ為に領地のほうに居るらしい。


 因みに、三十前半のミルロード卿の子供は十一歳の女の子が一人だけらしい。

……私の知り合いの貴族達は、どいつもこいつも女の子が多いのはどういう事なのかと。

婿を迎える必要があるばかりで、酷いのに騙されないか心配です。

本人に決定権はまず無いので、親がコロッと騙されるとかが有り得てしまうから怖い。


 さて話を戻すと、迷宮での移動に関しては既にミルロード卿もエルナリアまで利用しているし、魔物が出ない十kmの移動と魔物が出る十日間の移動を考えれば、どう考えても十kmを取るだろう。

そう考えると、家賃代わりに迷宮の一つでも領地に設置しておくのは悪くない気がするのだ。


 リーナには他に迷宮を作ってここと繋げる方向で説明し、


「これから候補が出て来る可能性があるから、取り敢えずしっかりと作るのは一つでいいかな。ここに転移扉を設置するなら固定迷宮で。そうなると、やっぱりミルロード卿の領地にでも作るのがベストかも」


そう言っておいた。


 そして、この段階からリーナには迷宮を作成させた。

一つは私達と同じ追尾型迷宮、もう一つは適当に実家の横に固定迷宮だ。

これらの使い道は、ミルロード領までリーナに移動して貰う為の物となる。

空いた時間で固定迷宮経由で移動迷宮に行き、少しづつ進めては移動迷宮をそこに置いておく事を繰り返す。

馬車で十日らしいので、私と同じ様に魔素《フルブースト》を使えるリーナなら数日で着くだろう。

向こうへ着いたら一時的な固定迷宮をミルロード領に作ってミルロード卿の移動に使い、本命の設置場所を決めて貰う予定だ。

本命以外は熟練度上げの為に存在はさせるが、いつ破棄にしても良い様に移動迷宮を作って適当に放置する方向で。

 

 その日に屋敷へ戻った際にミルロード卿とその話をした所、


「迷宮設置は正直な所とても有り難い。移動用の扉は一つだけだとしても、たった十kmならば何の問題も無いしね。問題は、シェリーの件があるエルナリア領と違って無償という訳にもいかないだろう。その点はどう考えているんだい?」


「ここの家賃ですね」


と言う会話に。

そして、この件はミルロード卿が笑いながら了承したので終了。


 その辺りから午前中は前述の《付与魔法》講座やパペット作り、追加のゴーレム等の必要なものを作成。

午後は王都付近にある迷宮での探索をする事になって行く。


 そこでリーナに空いた時間で移動をして貰い、たまに道に迷っては居たが視覚の共有があるので問題なくミルロード領へ到着。

仮の固定迷宮を配置した時点が、現在である王都集合から二週間後となっている。

後は設置場所をミルロード卿に決めて貰うまで放置、亜人達には仮の迷宮に移動して貰っても良いのだが、本人達がそのままでいいと言うので好きにさせる事にした。


 実際の迷宮が出来たら強制的に移動させるけどね!

主に生活する環境の認識を改めさせる為に。


 だって、こいつら……本気で人間味あふれる集団になってしまっているのだ。

それ故、少し生活を変えさせたいのです。

まぁ、ぼちぼち頑張ろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ