幕間一の8◆学院組その後2(メイ)
わたしの名前はメイリース=フリクレス=ヴァルテリアージュ……愛称はメイといいます!
実家は七爵で、王国の端の方に少~しだけ土地を持つ程度の家で~す。
因みに、お姉さまに自己紹介した時に愛称だけだった事をシェリーとクレイスには後で怒られました!
愛称を強要している様で、あまり良くは無いそうです……反省。
学院で仲良くなったクレイスとシェリーのうち、クレイスは実家が近くだった為に一緒に王国へ来た事もあってすぐに仲良くなりました。
その後に仲良くなったシェリーは大人しい雰囲気を持ちながらも芯が強く、納得できない事に対しては譲れない性格だった事で問題が起きてしまったのです~。
それは、わたしとクレイスの実家付近で一番大きな派閥の長を務める三爵様のお嬢さまに目をつけられ、決闘騒ぎにまで発展する事に~。
とてもではありませんが、シェリーの護衛をしてきたというたったお二人だけではどうにもならず、私やクレイスは独自で雇った護衛はいない状態の為に力にはなれず……のはずでした。
しかし、実際に決闘が始まると護衛団の方はお姉さまが動く前に終~了!
その後に絡んできた他の学生に対してはお姉さま一人で圧勝。
そうれはもう! すぐには信じられない光景でした~!!
この一件があってから、わたしの周囲も少し変化が起きてしまっています。
わたしは直接決闘に係わる立場には居なかったのですが、学校側から勝者として組み込まれてしまっているからです。
これは学校側がしっか~り事情を理解したうえでの決定なので、そのまま受け入れる形になっています。
なぜこのような対応になったのかと言うと、決闘が決まった際にわたしやクレイスの護衛も加えて良いとの発言があった為です。
原因となったクレイスや仲が良いわたしが、直接の関係者では無い状態では何らかの被害にあう可能性が無いとは言い切れない事を危惧しての対処らしいのです~。
これに伴い、お父さまのお仕事をする部署が変わりました。
王城に本拠を置く部署の下部組織に在籍していたのですが、数日前に変更を言い渡されたそうです~。
わたしの実家は小さな領地に叔父さまとそのご家族が残っており、領地管轄の才能がお父さまよりも高いと判断された事で、実質全て任せた状態になって居ます。
お父さまは逆に事務仕事がお得意な為、王都で働いておりました~。
そのお仕事は王都での事務仕事と各地への視察や指導がメインになっており、ほとんど自分の領地へは戻りません。
お母さまは三年前に他界し、半分以上は各地を転々としているお父さまと一緒よりも、しっかりと貴族の礼節を学ぶ事が出来る叔父さまとの生活がこの三年間でした~。
叔父さまの家族とは仲も良くて特に何の問題も無かった事も有り、学院の件が無ければ王都へ来たくは無かったのですがこればっかりは仕方がありませんでした。
さて、今回のお父さまに関する仕事の変更なのですが、一番の理由は危険の排除が目的のようです。
街道に出現する魔物は弱い物が多いのですが、偶に現れるオーガと言う魔物や、普段の生息地から出て来たハグレと呼ばれる強い魔物も居るのです。
シェリーが王都へ来る際にもオーガが二体も出現したとの事ですし。
もっとも、お姉さまとシェリーの想い人であるルークさまがそれぞれ単独撃破をしたと言う話しですから、その実力の高さ故のたった二人による護衛だったのでしょう~。
本来なら有り得ない程の有能さを持つお二人を雇う為に、どれ程の報酬が必要だったのかが心配になったものですが、
「当然出来るだけ高額に出来るようお父様も努力していたはずですが、残念な事に事前に購入した魔法具の支払いに相当な金額が必要だったらしく、二人での護衛である事の危険手当も含めて相場の五倍程度で納得して頂いたと聞きましたわ」
と言って居ました~。
このお話を聞いて、正直私は愕然としました!
二人で五倍という事は十人分です。
即ち、通常雇うはずの十~十二人分と同じかそれ以下となります。
お父さまと食事をしながらそのお話をした時など、
「レベル30の冒険者を雇うのに必要な金額は、大抵はレベル10以下で構成される王都までの護衛部隊より一人あたり十倍でも安いはず。しかも、レベル30を超える従魔が五匹も居たら……その金額は恐ろしい物になる筈なのだがな。よくその姉弟はそんな程度の金額で引き受けたものだ……」
と、少し呆れた感じで言っていました~。
あの決闘以降でお姉さまにお会いしたのは二回なのですが、二回目にその話をした所、
「私達がここまで強くなったのは王都へ来る道中だから、そこまで安い金額だった訳でもないわ。途中でシェリーを狙った魔術師が迷宮を持つ奴でね、迷宮内を踏破したら一気に上がっていただけなのよ。それに、エグフォルドタイガー達はその当時居なかったし、エルナリア六爵には私の《付与魔法》の練習用素材を大量に用意して貰って、好き勝手やらせて貰ってたしね。お互いに協力し合って、いい関係を築いた結果だったと言えるかな」
との事で~す。
ただし、その後にはシェリーからとんでもない事実が語られました。
「そのお姉様が好き勝手に作った魔法具なのですが、屋敷で使い切れ無い余剰分を売った利益だけで、私の件で準備を始める前より財政が上回ってしまったらしいのですけどね」
だそうです……。
あれ~?
そうなると、お姉さまは自分で作って売却する方が圧倒的に儲かる事になるのでは?
その事を直接聞いてみた所、
「私の作る方法がちょっと特殊でね。あまり大っぴらにはやりたくなかったのよ。そこで六爵様に素材の提供と出来上がった物の処理をお願いして、私はとにかくひたすら練習してた訳。そのお陰で今は随分と腕も上がって、色々自分で作れる様になって助かっているわ。これはある意味お金では買えない貴重な資産を得た事になる訳よ。その協力者である六爵様にも多少の利益があって当然でしょ?」
との事~。
流石、お姉さま。
シェリーが事前に用意して貰ったと言う魔法具は、私の実家では到底用意出来ない程の貴重で高額な品でした。
それを購入したり、その他の旅の準備を整えた分以上の利益を多少で済ませてしまうとは……大物すぎます~!
そして実際の所、現在は全くお金には困っていないとの事~。
それこそお金が必要ならば、自分で素材収集から《付与魔法》による魔法具作成まで簡単に行える上、その技術は既に一流と言える程なのだとか~!
何故そこまで凄いのかについては詳しい所は分かりませんが、この様な凄い方とお知り合いになれたシェリーは物凄く運が良いのだと思いま~す。
しかも、わたし達の様な立場では結婚相手を自分で決める事など普通は出来ないのに、貴族ですら無いルークさまとの関係を認められていると言う事が既に奇跡です!
どうやらエルナリア六爵様もお姉さまやルークさまを認めており、お姉さま達が目指している【竜殺し】の達成を信じている様です。
学院に居る三年間に加え、適齢年齢の関係で縁談を断れる限界の二年間まで待つ予定だとか!
わたしは正直な所、あまり領地を継ぎたくはありません。
爵位なんて叔父さまにあげてしまえば良いのに~!
そうは言っても、当然そんなに簡単に行く訳も無い事は理解しています。
学院での勉強は結構難しい事も多いですが、頑張って行きたいと思いま~す。
クレイスやシェリーと一緒なら頑張れるはず!
これからも大変な事はいっぱいあるとは思いますが……みんなと一緒に乗り切って行きま~す!




