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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
幕間一
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幕間一の1◆目覚め(リーナ)

 それまでの私は、考える事が出来る状態ではなかった……。

何となく覚えているのは、黒くドロドロとした中に様々な色が混在する世界。

赤く熱い流れが押し寄せたかと思うと、黄色い陽気で流され、白い輝きが全てを照らすと今度は青い冷気が全てを凍らせていく……。


 今ならそのさまを表現する事が出来る……。

混沌……と。


 私は周囲を観察した……。

今なら理解できる……。

ミノタウロスのミノ太、ゴブリンのゴブ助、オーガのオガ吉、ラミアのマツリがグッタリとしている。


 私とは全く違う姿をした者達……。

でも……【ママ】と同じ特徴を持つ者達……。


 私との違いを考える……。

ここに居る亜人達に共通するもの……。

それは手がある事だ……。


 【ママ】にも手があった……。

私も……欲しい。

初めて欲求を持てた……。


 【ママ】に似ているのはマツリ……。

でも、足が無い。

別に駄目じゃない……でも……やっぱり、【ママ】と同じ方が良い……。


 【ママ】の姿……うん、大丈夫……。

私の中に存在する知識や記憶で、【ママ】の姿をハッキリと理解できた。


 【ママ】と同じ姿になってみる……。

…………うん、無理……。


 私の黒くて丸い身体が、【ママ】と同じ姿になるには体積が足りないのだ……。

姿を真似るだけなら可能かな。

でも、重さが全く足りていない……。


 【ママ】の記憶を遡る……。

これなら……大丈夫かな。


 小さな男の子と一緒の【ママ】の姿……。

私は昔の【ママ】とお揃いの姿になって満足……。

少し疲れたかな?

オヤスミなさい……。




 ☆ ☆ ☆




 目が覚めると、周りに居た亜人達も目が覚めていた……。

その眼は【ママ】の記憶にある姿より、しっかりとした知性の色を感じた……。


 亜人達は、【ママ】の指示が無い為にどうしようか悩んでいる様だ……。

私を含めて、亜人達には【ママ】から生きる為の《魔素》が流れ込んでいる。

しばらく食べ物を口にしなくても問題は無いはずだ……しかし、【ママ】はしっかりと食べ物を食べる。

それならば私も食べたい……いや、食べるべきなのだ……。


 私は亜人達に指示を出した……。

言葉に出さなくても、触れながら何をやるかを教えてあげると伝わった……。


 まずは狩りだ……。

私達が居る階には亜人しか居ない……。

亜人は食べない。

【ママ】がそうしているから……。


 上の階に行くと魔獣と鳥の魔物が居る……。

それを狩ろう。




 ☆ ☆ ☆




 亜人達は魔獣や鳥を簡単に捕ってくる……。

【ママ】の配下なので、警戒されないらしい。


 最初に捕ってきた魔獣は……溶けてしまった……。

魔物は死んでしまうとお肉が崩れてしまうらしい。

確かに【ママ】の記憶でも焼かないと崩れてしまうとなって居た……。


 そこで【ママ】の記憶を調べていくと、一つ……面白い物があった……。

《魔素》を微量だけ送り込むと崩れるのが遅れるらしい……。


 亜人達みんなの持ち物を確認すると、ミノ太が色々持って居た……。

骨で作ったナイフや、魔獣の革で作った袋などだ……。


 【ママ】がやっていたみたいに《魔素》を手から外へ出してみた……。

うん、私はできる。


 これには亜人達は少し苦労していた……。

でも、仕方が無い事だ……。


 そもそもの《魔素》の量が違いすぎるのだ……。

それでも亜人は身体に《魔素》を貯め込む性質がある為、コツさえ掴めば意外と上手くやれるようになった。


 捕って来た獲物は袋に入れて、死体に触れながら少しだけ《魔素》を流せば問題は無くなった……。

次は焼いてみよう……。


 私は【ママ】の真似をしたらすぐに《火魔法》が使えた……。

ゴブ助も魔法を使えるので火を付けさせてみる。


 火力が低く、すぐに消えてしまって燃え移らない……。

そこで《魔素》の使い方を教えた……。


 一気に爆発させる方法と、細く長く送り込んで火を維持する方法……。

その二つとも、ゴブ助は意外とすんなりやれた……。

思ったよりゴブ助は理解が早い。


 その間に、ミノ太がナイフで肉を捌いていたので焼いてみる……。

因みに、今はたきぎが無いので、私が《魔素》で細く長く火を維持している……。

今度燃える物を確保しておこう……。


 お肉は……まぁまぁ美味しかった……。

でも、味付けはしてないので……今度【ママ】に味付けが出来る調味料を貰えるといいな……。




 ☆ ☆ ☆




 私がこの姿になった次の日……。

【ママ】は昨日もこの位の時間に来ていたはずなので、今日も来てくれるかもしれない……。

昨日はまだ、私は動け無かった……。

ようやく動けるようになったから……お話も出来る。

良い子にしていたら【ママ】は褒めてくれるかな……?




 ☆ ☆ ☆




 亜人のみんなを集めて、お勉強をさせていると【ママ】が帰って来た……!

【ママ】は私を見て……ビックリした顔をしている。

私が良い子にしてるからビックリしたのかな……?


「ルナ……何故あなたがここに居るの? あなたが入って来れる様な場所では無いのに……」


【ママ】はそう言った……。

ルナ……?

ああ……【ママ】は勘違いしているんだ……。


 ルナは【ママ】の妹……確かに私の姿に似ている……。

そう言えば……私には名前が無い……。

【ママ】に名前を付けて貰わないと……。


 そう思って……【ママ】にお話をしたかったのだけど……声が出なかった……。

これは意外だった……話そうと思えば出る物だと思っていたのだが……中々出て来ない……。

頑張って頑張って……ようやく声が出た……。


「…………ま……まぁ…………」


【ママ】が驚いた顔をする。


「……ママァ………」


今度は少し上手く言えた……。


 私は我慢できなくなって、【ママ】に向かって走り……転んだ……。

そう言えば、走るのも初めてだった……。

歩くのとは少し勝手が違う様だ……。


 すぐに起き上がろうとした所に……【ママ】が駆け寄って来てくれて抱き上げられた。

【ママ】は暖かくて、いい匂いがした……。


 【ママ】は私を暫く見た後に、《識別》を使った……。

私も自分に《識別》を使って見る。


粘人族:女 レベル28

特殊情報:《混沌の結晶》《捕食融合体》《形状変化》



 私が【カオススライム】だった頃とは、情報が変わっている様だ……。

《迷宮の虜》も消えている。

私が人になったからかな……?


 【ママ】……?

【ママ】は何故か《フルブースト》を発動させて私を見ている……。


 しばらく私を見ていた【ママ】は私に名前をつけてくれた……!

【リーナ】!

それが私の名前……!!




 ☆ ☆ ☆




 【ママ】は私と色々なお話をしてくれた……。

聞かれた事にはしっかりと答える様に頑張った!

私の思考速度は、もしかしたら少し遅いのかもしれない……。

【ママ】とお話していると中々追いつかない事がある……。

慣れてくれば……もう少しどうにかなるのかな……?

【ママ】に怒られ無い様に……頑張ろう……!




 ☆ ☆ ☆




 【ママ】はいつもよりずっと長い時間……お部屋に居る……。

私は【ママ】にずっとくっ付いたままお話した。

【ママ】は暖かくてとても柔らかい……。

いつまでも一緒に居たいな……。


 私が【ママ】と一緒に居る間、亜人のみんなは昨日教えた通りにお肉を捕って来ては食べて居た……。

ゴブ助の《魔素》を使った細く長くはまだまだ上手くいっていなかったが、オガ吉が集めて来た燃やせる物には火が点けれていたので問題は無さそうだ……。


 全員で協力して作業して、【ママ】と私の分も用意してくれていた……。

これを見た【ママ】は……コンロという魔法具を出してくれる。


 【ママ】がゴブ助に使い方を教え始めたので、みんなで教えて貰って実際に使ってみた……。

これは、便利だ……!


 【ママ】はお仕事があるから、ここに長くは居られない……。

判ってはいるけど……やっぱり寂しい……。


 【ママ】は、また来るね……と言って出て行った……。

私には、まだまだお勉強しないといけない事が沢山ある事が分かった……。

早く【ママ】と同じ位に成長出来る様にお勉強しよう!

そして、亜人達にはもっともっと教育しないと……!!


 今度も【ママ】に褒めて貰える位、良い子にして待って居よう……。

このお家から出て、【ママ】と一緒に暮らせるように……!

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