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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第三章
70/138

70◆リーナが予想以上に良い子です 今後の事もしっかり考えましょう

 エルナリアの領主館にある工房では、師匠がMPを使用しない作業を行っていた。

私の魔送石の為にMPが毎日使われてしまうので、最近の作業は大半がこんな感じになっている。


「ただいま戻りました」


「あら、おかえりなさい」


師匠に声をかけると、微笑みながら返事をしてくれた。


 師匠が処理している素材を確認し、作る物を聞いてから作業に入った。

現在は私も自分で必要な物は大体作ってしまっており、師匠の滞っている分の仕事を片付けている。

魔送石はまだまだ欲しいのでもうしばらくは付き合って貰う予定なので、冒険者としての活動はまだまだお休みの予定だ。


 午前中に用意された素材は使い切り、午後になってからはクレイスとメイ用の魔法具を作成した。

シェリーの様に魔送石を使用した物は流石に渡せないので、初の試みとして《危険感知》の機能を備えた魔法具に《アースシールド》を組み込んだ。

仕様としては、使い捨てタイプの魔素を封入した魔石が五個セットされており、一個につき二十秒程だが魔素を送り込んでいる時と同じ位の出力で全てを弾く事が出来る。


 耐えられるのは最大で百秒……か。

これ以上は魔法具の大きさ的にも流石に厳しい物があるので妥協しておこう。

シェリーと違って頻繁に会う訳でも無いから、交換用の魔石もある程度作る事にする。

各二十個もあればいいかな。


 消費したら必ずシェリーに伝えさせて補充すれば問題は無いだろう。

後は……何かあった時の連絡手段か……。


 私の知る回路には存在していない。

そうなると、私の使えるスキルを刻み込んで回路を構築していく必要があるが……正直、当てはまるものは無かった。

因みに、この回路構築には調整に結構な手間がかかる。

しかも、数回の変更で調整不可能になる為、実際に使える回路を構築するまでにかかるコストは結構なものだ。

例としては、前述の《危険感知》の回路を構築するのに試行回数六十八回、二十二個の素材を消費している。


 現状考えられるのは帰還用魔法具の回路を弄り、魔送石とはまた違う回路を構築して音の波を送れる様にする事が出来れば解決する可能性が高い。

問題は、これを実行するには師匠の手も借りる必要があり、魔送石の作成と同じだけのMPが必要になる。

残念ながら、いつ完成出来るか分からない通信手段の作成より魔送石の作成を進めたい。

この点は宿題かな。


 宿題と言う点では今の所幾つかあるので、忘れない様にしておこう。

思い出せる所では……《スティールMP》で吸収出来る効率の良い魔石の開発。

素材を変えて試して行く予定。


 次に、前からの目標として原魔石に直接魔素を封じて魔石を作る事。

これはどうやら魔石と言うより魔素石という物が出来そうなのだが、魔石の上位存在らしいので是非完成させたい。


 他には《魔獣の牙城》アイコンがどうなるのかを確かめる事と、村周辺の迷宮と石碑迷宮の探索位かな?


 現在進めているロウのゴーレムに指示を出す練習関連が終了さえすれば、村の改善自体はすぐに進める予定なので宿題にはならないだろう……まぁ、すぐに思い出せるのはそんな所かな……。


 ゴーレム関係には領主がとても興味を示しているので、私の故郷で上手くいった場合はロウに他の村へ出向いて貰ったり、ゴーレムをもう少し増産して領主側でも運営したいと言われている。

私の方も領主には色々用意して貰ったり注文している物も多いので、出来る限りの事をする方向なのだが……正直ビジネスと言う方向ではかなりどんぶり勘定になりつつある。


 領主との関係だけならばそう言う事も無かったのだろうが、師匠が領主側の人間になって居る現在、以前は入手が困難だった素材も迷宮やネイアのお陰で簡単に手に入るのでガンガン置いて来ているし、必要だと言われれば製品にしてもいる。

領主側の財政関係の人が速攻で管理を投げ捨てたのは言うまでもない。

マイナスになって居れば口は出すと言っているが、増えていく分には放置を決め込んだのだ。


 さて、作る物は取り敢えず作ったので次の行動に移す事にしよう。

何からやろうかな。




 ☆ ☆ ☆




 まずはリーナや亜人達の様子を見に来た。

亜人はともかく、リーナは粘人族という人に分類されそうな種族に変化しているので状況次第ではここから連れ出す必要が出て来る。

まずはしっかりと様子を見て行かなくてはならないだろう。


 当のリーナの様子は、


「……ママ。お帰りなさい……」


そう言って抱きついて来て、私から全く離れる様子は無い。


 亜人達と上手くやって居るのかは確認するまでも無く大丈夫そうだ。

何と言うか……リーナがリーダーというか、ボスという感じなのだろう。

狩りに出ているミノ太以外の三体は完全に整列して私とリーナの前に立っている。

部屋の様子も整理整頓が行き届いており、使うかどうかわからないが色々置いておいた魔法具や生活道具はフルで活用しているようだ。


 リーナは私の知識を殆どフルでコピーしているらしく、振る舞い自体は子供っぽいがやる事は理性的で合理的だ。

そして、リーナに触れていると判るのだが、明らかに私の左手から消えていく魔素が流入している様だ。

私の予想としては、どうやらカオススライムの能力か何かで私の手は未だにリーナの中に存在するのだろう。

完全に融合しているのかどこかに隔離されているのかは分からないが、そこから私の情報や魔素を得ているのだと思われる。

この事から、おそらくは魔送石と同じ様な手段が使えるのだろうと予想された。

私ですら子供の頃から慣らしてようやく耐えられるようになった魔素量なのに、腕に流れて居る分だけとはいえ平気で耐えれるのは……流石、理不尽な攻撃耐性の権化と言えるのだろう。

本気マジでカオススライムにダメージを与える方法を知りたい今日この頃だ。


 リーナは言語を完全に理解し、話す内容も言葉が少ないだけで大人と遜色ない。

そして何より驚いたのが、漢字まで書けていた……。

風祭絵里奈と書かれた紙を見つけた時は流石に絶句してしまった。


 こうなると、しばらく時間を置いてから会った時の反応も確かめておいた方が良いかもしれない。

そこで普通の反応が出来るならば迷宮から出してもいいだろうし。


「リーナ。ママは今度来るまで少し時間が開くと思うの。みんなとお留守番できる?」


「……うん、ママ。リーナ、いい子にしてるね……」


う~む。

本当に可愛いな!

その仕草は子供っぽさがありながら大人ぶる子供の様な感じなのだが……良いです!!


「それじゃ、みんなの事宜しくね」


私の言葉にリーナが頷き、亜人達にもリーナと一緒に頑張ってねと言うと一斉にお辞儀をしてきた。

これ、私は何もしてないのに……本当に訓練されて来てるな……。

面白いからリーナに全部任せてみよう。

こうして、敢えて一週間位時間を開けてから来る事を決めて外に出た。




 ☆ ☆ ☆




 実家から十km走って石碑を見に来た。

石碑迷宮の様子は相変わらず変化無し。

ここまで来ると、主が活動停止している存在である事も考えられる。

入り方が分からないので、確かめようが無いけどね。

他の三ケ所に何かヒントがあるかもしれないし、ルーク達と合流したら考えよう。




 ☆ ☆ ☆




 ルークの話だと、仕事が終わってこちらへ向かっている最中らしい。

明後日位には戻れそうという事なのだが、明日と明後日はシェリーの学院が休みのはずだ。

馬鹿な決闘騒ぎも終わったし、明日辺りにシェリーをエルナリア領に連れて来てあげよう。

当面はシェリーだけで自由に行き来はできないので、私の方で気を使ってあげなくては。


 さて、今日のやる事は終わったし、ネイアとクーの所にでも顔を出しておこうかな。

最近はあまり時間を取れなかったのでたまにはゆっくりと……ね。

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