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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第三章
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69◆決闘のペナルティ 君達……本当にもう少し考えようよ

 ようやく……この意味の無い決闘が終わった。


「流石です! お姉さま」


今度こそ壇上から降りた私を、シェリー達が祝福してくれる。

そこで友人の紹介をされた。

二人の友人の名前は六爵家のクレイスと七爵家のメイ。


「初めまして、お姉様。今回は私の為にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした……」


「はじめまして、お姉さま! シェリーからお話しは色々聞いておりましたが、まさかここまで凄いとは思いませんでしたわ」


そう言うクレイスとメイを見ながら、私は完全にみんなからお姉さまと呼ばれる状況なんだなと、見当違いな感想を噛みしめていた……。

私自身はお姉さまキャラじゃないと思っているんだけど……。


 シェリー達に囲まれながら話をしていると、教師の中から年配の一人が近寄って来た。


「お疲れ様でした。私はこの学院の学長を務めているルードレス=ルイス=エムレスト、爵位は四爵を賜っております。以後お見知りおきを」


そう言い、私に握手を求めて来る。

……こういった場合に握手するのは普通なのかどうかは良く判らないのだが、まぁ求めらえているなら応えないと失礼かな。


 握手に応えるとどこかホッとした様な表情を見せ、今回の件に対して少し処理したい事があるとの事なので学長室へ行く事になった。

シェリー達学生は、当然この後に授業があるのでここで別れた。




 ☆ ☆ ☆




 学長室へ行くと、そこには三人程、先に部屋で待っている人物達が居た。

一人は先程審判をしていた教師で、その他は先程は居なかったと思う。

会釈だけして、特に紹介も無くすぐに席を勧められた。


「今回の件は我が校の生徒の為に、本当に余計な手間を取らせてしまって申し訳ありません」


学長はそう言いながら、おそらく秘書だと思われる女性から幾つかの魔法具や羊皮紙らしき物を受け取って居た。


「正直な所、今回の結果は学園にとっては最良の結果であると言えます」


ん?

最良と言う学長の言葉には、少し疑問があった。

これだけ学内で騒ぎを起こして、最良と言うのは果たしてどうなのだろうか?


「エル殿は学院の内情を知らない為に理解出来ないかも知れませんが、今回のエル殿が倒された二組はとても問題がある生徒ばかりだったのですよ……」


私の顔に浮かんだ疑問符に対して、学長がそう付け加えた。


 その後に聞いた話をザックリとまとめると、毎年ある事なのだが、家格の高い新入生が何組かは同じような事を起こすらしい。

我儘に育てられたり、学内における自分の地位を高める為にそういった行為を犯すらしく、毎年教師陣にとって頭の痛い問題となって居るとの事。


 普通は確実に勝てる相手を選ぶ為、今回の様な逆転劇は起こらずに泣き寝入りとなってしまうらしい。

しかし、今回は私が勝った為、色々と有利に事が運べるとの事。


 私自身はシェリーの為に負けられないと言うだけだったのだが、ここで勝った事はそれだけでは無い意味を持つらしい。


 まずは、負けた側は一年間の決闘禁止となる。

更に、今回の逆転劇で今後同じ様な騒ぎが起こる可能性が、圧倒的に減るとの予想がされている。

流石に負けた際のペナルティがきつ過ぎて下手な事が出来ないかららしい。

そして、負けた側には卒業まで継続して、とある魔法具の装着が義務となる。

この魔法具は悪意に反応してポイントをカウントする物だそうだ。

 

 私の知らない回路だったが、基本的には装着者の周囲を膜状に覆い、《危険感知》と同じ様な感知システムで外部に対して送った悪意を拾うとかなんとか……そんな感じらしい。

これによってカウントされるポイントは勝った相手に対しては物凄く上がる様に設定されており、報復などを行ったり指示した際には、即退学レベルの上昇だそうだ。


 また、勝った側は敗者に対して第三者による客観的な裁定を求める事が出来、相手の悪意の有無を問うことが可能になる。

そこで一方的に悪いとされた場合はそれぞれの家に通達がされる事になり、法で決まっている訳では無いが、相応の慰謝料を支払うのが慣例となっているらしい。

勿論払わなくても良いが、その場合は他の貴族から笑い者になる事を覚悟する必要が有る。

更に相手にとって重大な問題となる点は、報復する事を禁じている事から派生した暗黙のルールによってとんでもない負担を強いられるらしい。


 その暗黙のルールとは、決闘に関連する人物とそれに近しい人物を、最低でも学院卒業まで保護する必要が有る、と言う物だ。

何故かと言えば、関係者に何かあった場合に真っ先に疑われ、国からの調べを散々受けた上で細かく全てをチェックされる。

この際には、普段は秘匿されている部分も全て調べられる為、完全に真っ白な統治を行って居ない場合は何かしらの突っ込みを受る。

そういった問題を起こす学生の親は大抵が真っ白では無い為、そのまま御家の危機にすらつながるとの事。


 この事から、報復どころか高い金を払って護衛を付けなくてはならないと言う状況が発生する。

こんな大事おおごとになるのに、何故このような馬鹿げた事を起こすんだ……と、突っ込みを入れたくなったが、甘やかされて育てられた特権階級の坊ちゃん嬢ちゃん達は、自分より下に見ている相手に負ける訳が無いと悪い方の結果を考えないらしい。

今回の様な逆転劇はまず起きない、と言うのが悪い流れを断ち切れない理由でもあった様だ。


 今年度の新入生で特に問題児だったのは二人、他の問題児は大体この二人について居た為、特に後半の馬鹿十二人衆で一気に殲滅されたらしい。


 因みに、おそらくだが私の情報も多少は流されているだろうとの事。

《女神の加護》に関しては言わない様に周知してあるが、流石にレベルまで隠すのは不自然である為に聞かれた場合は答えて良い事になっているそうだ。

結果、私の36レベルと一郎達の33~34レベルが周知され、今後シェリー側から決闘を申し込まれる恐れがある行動は取れなくなるだろうとの事。


 それはまぁ……そうだろう。

私の36レベルでも上位の一流冒険者レベル、一郎達に至っては33~34レベルのパーティーが相手にするレベルでの表記なのだ。

しかも、エグフォルドタイガーは攻撃・耐久力・敏捷力・特殊能力の全てが平均を上回る種族である為、対抗するパーティー人数は六人が推奨されているらしい。

これを五体も連れて来たとなれば、参加人数が多い場合でも対応可能。

逆に少人数となれば、それこそ国に数える程しか居ない四十台・五十代の実力者を用意する必要すら出て来る。

抑止力として、私の情報はそれ位有効だという訳だ。


 まぁ、正直な所……私達の実力を隠すのはもう無理だと判断している。

なんせ、少し前にルーク達が王族とすら会ってしまったらしい。

魔族の配下を倒し、更には策をろうしたとはいえ、30レベルの魔物を数百体も倒してそれがバレたとの事。

巣を作るとても危険な魔物だった為、討伐隊が出発する所にルーク達の事が発覚した為に色々あったらしい。


 現在はその討伐部隊に同行しており、詳しくは聞いていないが色々と手間取ったとの事。

その仕事もようやく終わり、もうすぐ王都へ着く予定だと言っていた。


 今回の件は、シェリーとしてはルークには見せたくない事だった様なので、まぁ私が処理出来たので良しとしよう。

もっとも、今後はもう少し色々と考える必要があるかな。

特に、防衛面や連絡面で。

問題が起こった場合に、即連絡出来ないのは困るので本気で考えてみよう。


 話しが終わった後にいくつかの書類にサインをして、魔法具に個人識別登録をした。

この魔法具が悪意を認識する魔法具らしい。

いずれは私も回路を知りたいが、今言うのも何なので……素直に我慢した。

シェリーやクレイス、メイの情報も登録して、敗者達はこれを身に付けるとの事。

学校の対応が完全だとは思えないので、私からもクレイスとメイ用に身を守る魔法具は用意しよう。


 学校での私の用はこれで終わりだ。

シェリーが授業の間は別室で控えているラナに挨拶してからすぐに屋敷に戻った。


 屋敷に残っているルルに結果を伝え、私は一人でエルナリアの街へ戻る。

さて、身を守るにはどんな魔法具がいいかなぁ。

そう考えながら、屋敷の工房を目指した。


 因みに、一郎達は全部ミルロード邸に置いてきた。

番犬代わりには十分すぎる程の過剰戦力だ。

取り敢えずは……みんな頑張るように!

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