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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第三章
66/138

66◆仕事と王都への移動の日々、ついでにママ? になりました

 カオススライムに持って行かれた左手部分におかしな部分は……あると言えばある。

魔素の流れがおかしいのだ。

普通なら指先まで行って返って来る、血液と同じ様に循環する動きをするのが普通なのだが、何も無い筈の手首から先に消えていくのだ。

切り取られた断面がそこまでの吸収をするとも思えないし……考えられるのはカオススライム本体が何かしている?

もしそうだとしたら、これだけの魔素をどうこう出来るものなのか……?

何故なら、現在亜人達に流している魔素の数百倍の量だからだ。

因みに、私が前世で肉体崩壊を起こした量すら超えている。

……まぁ、現在の所カオススライムに変化もないし、様子を見て行くしかないかな。

そう割り切って部屋を後にした。




 ☆ ☆ ☆




 現在、私はジムルの家から王都を目指して走っている。

亜人を配下にした後に石碑を確認し、何も変化がない様なので移動を開始したのだ。

ジムルの家から王都までは、来た時の事を考えると四日程の行程だ。

しかし現在は村や街でやっておきたい事が多いので、午前中はそちらの仕事をしてから午後に移動する事を基本とする方針で行く。

ルーク達はなんか色々やらかした関係で現在は王都軍と一緒に仕事をしているらしいので、全力で行っても向こうが居ない可能性が高い。

そういう訳で、その位の日程で丁度いいのかもしれない。

まぁ、潰せる仕事をとにかくやっていく方向で行こう。




 ☆ ☆ ☆




 王都に着くまでには結局七日で着く予定になった。

現在は、後一日で着く所まで来ている。

その間に、エルナリアの街から買い取った家をジムルとロウの住む場所に移築した。

ゴーレムも全て完成させ、ロウに説明をしてから実際に命令を行って作業させる練習を行わせている。

簡易ゴーレムと違い、人工生命体であるゴーレムは経験を蓄積する。

どの様な指示を与えてどう動くのかを把握し、やりたい事を教え込んでいく必要がある。

この練習には最初二日程度は一~二時間付き合ったが、その後は師匠や領主館にいる人達と一緒に色々な場所で作業をして貰った。

ジムルには家と同時に、約束してあった魔法具の残りを渡してある。


 魔物達に関しては移動迷宮の最下層に隠し部屋を作り、そこで生活させていた。

《迷宮の虜》状態の魔物は、私と同様に攻撃を受けないので安全に暮らせている。

私は毎日様子を見に行ってるのだが、どうもあまり芳しくはない。

何故か全員がずっとグッタリしている。

食事は何とか摂れるのだが、意識が朦朧としている感じで時にはうなされている感じもある。

大丈夫かは判らないが、様子を見るしかない。

因みに、カオススライムは全く変化無しで床に転がって居た。




 ☆ ☆ ☆




 亜人達に魔送石を付けてから一週間が過ぎた。

結果、驚愕の事件が起こった……。


 私が部屋に入った時には亜人達は全員元気になっていた。

全員が入口に背を向けて、立ちながら誰かを中心にして何かをやって居る。

 

 その中心に居る人物を見て、流石に私でも鼓動が速くなるのを感じた。

何故か、妹のルナがそこに居たのだ……。


「ルナ……何故あなたがここに居るの? あなたが入って来れる様な場所では無いのに……」


私はルナにそう聞いたのだが、反応が変だ。

私の顔をジッと見ながら、何かを言おうとする感じはあるのだが……上手く声が出ない感じに見える。

言い訳が出なくて困っていると言う感じでは無く、声がどうしても出ないという感じに見えるのだ。

そして、ついに出た言葉は、


「…………ま……まぁ…………」


だった。

……エッ?


「……ママァ………」


そう言ったルナ? が、こちらに走って来ようとして……盛大に転んだ……。

急いで駆け寄って抱き上げる。

そこで気が付いた……!

この子、ルナじゃない!!


 見た目は全体的にルナとそっくりだ。

しかし細部を見ると、むしろこの子に似てるのは……子供だった頃の私。


 落ち着きを取り戻してきた私は、ようやく理由が解って来た。

その確認の為に《識別》を使う。


粘人族:女 レベル28

特殊情報:《混沌の結晶》《捕食融合体》《形状変化》《構築中情報:2》


やはり私の情報を得て、進化? してました……カオススライムが……。

しかも、《迷宮の虜》の効果が消えて、《捕食融合体》と《形状変化》という情報が追加されている。

完全に私の手、融合されている様です。


 危険性は……今の所感じない。

ただ、前回はその油断で一気に左手が捕食されてしまって居る。

用心の為に《フルブースト》は発動させておこう。


 見た目の年齢は六~八歳位かな?

ルナよりは若干幼い少女の姿をしているようだ。

さて、これは……どうしたもんかねぇ……。


 取り敢えず、名前が無いと困る姿に変わってしまったのでリーナと名付けた。

私に似ているから、私の前世の名前の一部から取った。

最初はストレートにリナにしようと考えたが、ルナと語感が近いので少し変えてみた結果がこれだ。


 少し話をした結果、リーナは私の事をママと呼ぶ様だ。

まぁ、完全に間違いとは言えないので良しとする。

話し方は幼い感じがするのだが、私の知識を吸収しているらしくて普通に会話は成り立つ。

聞いた事には答えるが、自分からは余り話しかけて来ないのは性格なのか人格を得て間もないせいなのか、それとも人間とは異なる思考回路を持っているのかは様子を見ていかないと分からないかな。




 ☆ ☆ ☆




 しばらく亜人達の部屋で様子を見て居たが、リーナは私にベッタリとくっ付いている。

甘えん坊の子供の様な姿はとても可愛いのだが……私自身の昔の姿なので何とも言えない不思議な感覚ではあった。


 亜人達は時々出て行っては獲物を仕留めて帰って来た。

同じ亜人は狩らずに、上の階から魔獣や鳥系の魔物を狩ってきている。

部屋の隅ではゴブ助が魔法で火をつけたらしく、ミノ太が器用に捌いた肉を皆で焼きながら食べている。

全員が協力して行動し、私とリーナの分も用意してくれていた。


 これだけ器用に物を使えるならと、私は魔法具のコンロを出した。

最低でもゴブ助が居る以上、MPが足りない事は無いはずだ。

ゴブ助に使い方を教えて居ると全員が集まって来て話しを聞き、実際に使って試し始める。

何というか、どうも亜人っぽくない、人間の様な行動が目立つ気がする。

そこら辺も今後は注意してみて行こう。




 ☆ ☆ ☆




 ゴーレム作成が終わった事もあり、師匠の仕事を止めている代行で仕事を行っているとはいえ、MPをそこまで使用する事が無くなっている。

そこで、最近は《魔獣の牙城》アイコンにMPを供給出来る機会が増えていた。

問題は……これ、本当に意味があるのか判らなくなってきた……。

私のMPの半分を持って行くというのは、普通に恐ろしい程の供給量だ。

それを、もうすぐ二桁に達するほどの回数を吸収して、それでも何も起きないと言うのはどうなのだろうか? と考えてしまっている。

もうしばらくは続けるが、二十回を超えたら流石にどうするか本気で検討しよう。




 ☆ ☆ ☆




 ようやく王都へ着いた!

直接ミルロード低に向かい、久しぶりに屋敷へと戻ってきた。

馴染みになっている門番にちょっとしたお土産を渡し、一人で屋敷へ入って行く。

屋敷に住む事が許されているので、特に案内も無く勝手に動いて居る。


 まずは、一応の礼儀として屋敷の主の所へ挨拶に行く事にした。

忙しかったり、居なかった場合はすぐにシェリーの所へ行く予定だ。


 ミルロード六爵の仕事部屋に着くと、《聴覚強化》で声を拾ったので他の誰かが居る雰囲気だった。

部屋の外で控えているメイドに尋ねると、シェリーが六爵に呼び出されて話している最中らしい。

私やルークに知られたくない話だと不味いので、メイドに確認して貰うと入室が問題無く許可された。


 中には、六爵とシェリー&ラナ&ルルという予想通りの面子が揃っていた。


「ただいま。みんな元気だった?」


その私の言葉を聞いた瞬間、元々眼元が少し腫れていたシェリーの瞳から……ポロリと涙が零れた……。


「お帰りなさい、お姉さま……」


涙声のシェリーが応え、


「いや~、良い所に戻って来てくれたね! おかえり!!」


と、にこやかに笑顔で挨拶をしてきたミルロード六爵……。


 ……何かあった事は間違いなさそうだ。

未来の妹候補の為なら、私で出来る事ならなんでもしましょう。

さて、どんな話が出て来る事やら……。

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