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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第三章
62/138

62◆迷宮の再作成とマスター用扉の再配置をする一日

 現在、三個目の迷宮を作成する事が出来る様になっている。

MPに関しては朝の段階で師匠と一緒に魔送石を作成する際に結構な量を消費するが、現在の《自動MP回復》は毎時間5%の回復を行う。

即ち、現時点で迷宮完成までには少しMPが足りないのだが、寝る前までには完成するだけのMPを供給出来る予定だ。

マスター用の扉設置に関しては、破棄してすぐに作り直す場合には相当なMPを使用するが初回設置時には特に追加の消費は無い。

明日の朝に魔送石を作成してから迷宮関係は色々調整していこう。




 ☆ ☆ ☆




 実家に帰ると父さんが帰ってきていた。


「だたいま、父さん」


「おう、お帰り! 元気そうで何よりだ。結構順調にやってるそうじゃないか」


父さんはそう言いながらも、視線をしきりに動かして私の様子を確認していた。

父さんからすれば、年頃の可愛い(?)娘の事が心配なのだろう。

順調にいっているし、これからは頻繁に私もルークも戻って来ると伝えると少し不安そうな顔をして、


「冒険者の仕事なんてこの辺りにはないだろう? 頻繁に戻って来れる程儲かっているなら結構な事だが、もしかして……何か問題事でもあるのか?」


そう聞いてきた。


 私は、村を出る前に予想していた状況よりも圧倒的に順調に行っている事を説明し、運良く手に入れた移動手段によって、いくつかの場所を自由に行き来できる様になった事を家族に伝えた。

全員がその事を本気で喜んでくれたので……涙腺が少し緩みそうになったのは内緒だ。


 前世での家族は極々普通の家庭だった。

《魔素の泉》が私の中に開くまでは、私自身が本当に起伏の無い人生を送っている事を自覚していた位だ。

こういった……家族の為に本気で一喜一憂するような状況を迎えると、嬉しい反面チョット戸惑ってしまいもする。

予想以上の感情が一気に溢れる事に、いまだに慣れていないのだろう……。

前世の家族が嫌いな訳ではないが、田舎暮らしの一体感というのか……やはりこちらの家族の方が暖かみを実感出来てしまうのだ。


 食事をしながら、私が今回戻ってきた目的を話していく。

流石に迷宮関係は移動手段としての部分だけ伝え、隣の家にロウが来る事や、魔法具を持ち込んで行う村の整備、肉や魚等のこちらではあまり食べられない物を供給する事についてだ。

父さんとしては、何故私がこんな大きな話を持ち帰ったのかを疑問に思ったらしいので、


「エルナリアの街で領主様から直接仕事を受けたのよ。お嬢様の護衛で王都まで行く仕事をね。それでお嬢様とも仲良くなったし、領主様にも色々相談できるようになった訳。で、今回この事をお願いしたら快く許可して貰えたの」


そう説明しておいた。


 夜は久しぶりにルナと一緒に寝た。

ルナも話したい事が沢山あったらしく、睡魔に負けてしまうまでの間はずっと話をしていた。

主に出てきた話によると、私達が出て行ってから仲良くなった男の子と一緒に毎日楽しくやっているようだ。

クーも同じ位の年齢なのだが、女の子が二人になるとどうなるかな……?

こじれると嫌なので……余計な事はしない方向で、クーやネイアはエルナリアの街の方を活動拠点にした方が良いのかな?

そんな事を考えながら……私も眠りに落ちた。




 ☆ ☆ ☆




 実家のサイクルで動いて居るので朝は早い。

しかし……既に私も朝を克服している!

ルナがもぞもぞと動き始めたので私も目を覚ました。


 母さんが作ってくれた朝食を食べ、早速第三迷宮の様子を見に行った。

迷宮を作った場所は、隣の家のすぐ横にあるもとは畑だった場所で、迷宮に誰かに入られても困るので金網型の侵入防止用魔法具で囲っておいた。

問題無く迷宮は完成していたので、まずは移動迷宮を呼んだ。


 取り敢えず迷宮とマスター用扉の整理から始めるのだが、正直な所……悩みに悩んで色々変更してしまった。

シェリー達に十kmの馬車での移動をして貰うより……迷宮を増やした方が楽じゃない?

そういう結論に達したのだ。

ただ、私が第四迷宮の作成が可能になるのは流石にいつになるか分からないので待てない。

そこで、私が王都へ戻り次第ルークの迷宮に魔送石を仕込んで熟練度を強制的に上げ、ルークの第二迷宮を作る事にしたのだ。


 それを前提にまずは現在行う事を整理する。

固定第一迷宮をこの村に置き、ジムル宅とエルナリアの街の領主館へ扉を作成。

固定第二迷宮をエルナリアの街から十kmの位置に置き、移動迷宮と固定第一迷宮へ扉を置く。

要は、全ての迷宮とジムル宅、領主館が繋がる用に扉を配置する。

これに加え、ルークには第二迷宮を作れるようになって貰い、王都から十km位離れた位置に固定迷宮を置き、扉はルークの移動迷宮と実家の固定第一迷宮に設置。

……うん!

これで現在必要な場所へは全部行けるはず。


 もう一回確認の為、羅列しよう。

ルークの迷宮も含めた全迷宮(移動迷宮・王都から十km・エルナリアの街から十km・実家横)、ジムル宅、領主館だ。

理想はルークの第三迷宮を作成してミルロード邸と領主館を繋いでしまえば一番楽なので、そのうち経路は色々変更する事になるだろう。

もっとも、ルークはMPの兼ね合いで迷宮の作成に時間がかかるので相当後に……という事になるかな。


 さて、それでは今日の分の仕事を済ませてしまいましょうか。




 ☆ ☆ ☆




 まずは移動迷宮経由でジムル宅へ移動。

マスター用扉は基本的に厚み五cm程度の普通の扉なので、ジムルの家の中にさり気ない感じに設置する。

現在ジムル宅付近に配置してある迷宮から、置いてある物を全て回収して師匠の工房へ移動し、そこでもう一つの扉を設置した。

これでジムルの所にある迷宮は必要が無くなった。


 迷宮は遠隔地でも破棄は出来るのだが、余計にMPがかかるのは勿体無いので直接迷宮へ行って破棄する。

これで迷宮作成の枠が一つ空いたので、再びエルナリアの街へ移動してから迷宮設置予定地へそのまま向かう。

距離は十kmだが、《フルブースト》状態で全力疾走の私ならそれ程時間はかからない。

目的地は後から施設等を作る兼ね合いで、かなり広くひらけた場所を指定されている。 

街から十kmもある以上、宿泊施設や酒場等の娯楽施設も複数立つのは間違いないからだ。

事実、王都の迷宮には迷宮街と呼ばれる小さめの街が存在する。


 指定された場所には目印があるのでそこで《迷宮創造》スキルを発動し、迷宮の入口を作成した。

後はMPが供給され、迷宮本体が構築されれば中に入れるようになる。


 本来は十分に迷宮を大きくし、魔法物質低下範囲が最大の十kmになるまで放置する予定だった。

しかし、予定を変えて領主館へ直接扉を配置するのでその必要は無くなった。

《迷宮創造》と《迷宮の主》の熟練度の為に成長はさせるのだが、領主側へ解放するのは迷宮さえ出来ればすぐでも構わなくなっている。

そこら辺のタイミングは後で領主と話をするとしよう。


 因みに、そう考えながらもやるべき事は進めている。

入口は現在、階段の一段目が掘り下げられただけの状態で存在して居る。

ここに魔送石を設置して魔素を供給する。

村でも同じ事をして一日で迷宮が完成していたので、ここも明日には完成している予定だ。

そして、この作成した入口の上に大きな岩を置く。

岩自体は、故郷の村に昔からある大きめの物を《アイテム》に入れて持ってきた物だ。

これで、迷宮が完成しても入口が分からないので誰も入らない筈という訳だ。


 後は街へ戻り、《自動MP回復》で回復した分を後で送れば明日にはこの迷宮も出来ているだろう。

因みに、迷宮の入口さえ作成されていればMP供給はどこに居ても出来る。

移動迷宮の扉が移動したり、私の魔素が魔送石で送れたりするのと似た様な現象なのだろうと予想はしている。

いずれはその理由を解明したいが……現在では情報や実力が全く足りて居ない。

まずは過去の文献の収集を堂々と出来る立場と状況を作らなくては……ね。

ルークが【竜殺し】を達成する事はその為にも都合が良い。

末席でも貴族の一員となれば収集は楽になるだろう。


 取り敢えず、その為にも出来るだけ多くの蓄えをしておかなくては!

まぁ、迷宮から産出される素材だけで大半は何とかなると思うので……頑張って収集しておこう。


 こうして配置する迷宮の目途が立ったので、後はやりたい事の為に移動迷宮の最下層を《出現魔物:亜人》に設定しておいた。

迷宮レベルは数字で表記されていないが結構上がっているらしく、最下層ではレベル35を基準に出来るようだ。

魔素さえ大量にあれば、明日には亜人が大量に育っているはず。

……私の実験の為に協力して貰いましょう。

どうなるか楽しみです。

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