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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第一章
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6◆初仕事……クエスト:薬草集めとゴブリン退治

 実際にギルドで聞いたところ、森までは一時間程度のようだ。

収集が早く終わる様なら戻って宿を探してみる事になったが、時間がかかるのならば明るい内は収集、暗くなったら野宿の予定だ。


 森までは何事も無く順調ではあったが、途中に生えている植物等はそれとなく観察しておいた。

村でもそうだったのだが、意外な所に役に立つものがあったりする。

目的の薬草自体は森の境目付近に沢山生えていた。

今までにも収集したことがある種類だったので迷うことは無いし、《アイテム》に放り込んでおけば収穫時の処理を一つ一つする手間が省けるので時間の節約になる。

この収穫時の処理と言うのが実はやっかいで、収穫時の切り口をしっかり処理しておかないと痛みが早く、効果も減少する。

《アイテム》は時間経過を無くす効果があるようなので、後でまとめて同時に処理すると手間が減るのだ。


 ルークには収穫の手伝いはさせていない。

この収穫スピードなら一時間もかからずに終了するはずなので、薬草を《アイテム》に入れる以外は周囲の警戒に集中して貰っている。

村ではまともな実戦経験などほぼ無い状態だった。

まずは戦闘に慣れて貰う事こそが今後に生きてくるはずなので、今はこの方が良いと思う。

ルークは絶対に私を守って見せると、ちょっと気負いすぎな気がする。

私としてはそこまで危険だとは思っていない。

ルークには説明していないのだが、まず間違いなく魔素の影響で私の身体は相当頑丈になっている。

しかも、通常の魔物よりも質の高い頑丈さのようだ。


 魔物は魔法物質を証明部位にある魔法核から吸収している。

二つのタイプが存在するが、一つは魔法物質依存タイプ。

身体能力向上や、細胞単位で強化状態維持に魔法物質を常時使用している。

このタイプは魔法物質の供給が止まると、細胞自体が崩れ去るので美味しいのだが一般の食肉にはならない。

倒してすぐだけ頂ける贅沢な品と言える。

その代わり、骨や皮等は沈着した魔法物質が多いので需要は多い。


 もう一つは亜人等に多い魔法物質蓄積タイプ。

魔法物質を肉体に取り込んでおくことで、魔法物質を変化させて発動される魔法等の影響が受けにくくなり、肉体に染み込むように存在する為に空間当たりの密度の上昇でダメージに対しても多少強くなる。

肉体が魔素で満たされた私の状態は、このタイプを更に強化した状態なので相当な魔法防御と肉体強度を得ている。

ゲーム的に言えば、HPはそのままで防御力が上がっているのか? HP自体が上がっている状態なのか? 判断はつかなかったが一時期悩んで結果は出なかった。

HPが数字化して見える魔法とかあるのだろうか?

まぁ、頑丈になって居るのは確かなのでどちらでも良いか。


 周囲を警戒しているルークから合図が来た。

敵襲来有りという警告だ。

ルークの視線を辿たどるとゴブリンが見えた。

身長八十cm、緑色をした肌と尖った耳を持った亜人だ。

ルークが弓を撃つ。

見た感じでは落ち着いて対処している。

三本撃った矢の一本が弓を持つゴブリンに致命傷を与える。


 弓を《アイテム》に入れたのだろう、何もなくなった手をゴブリンに向けて振るう。

振っている右手の中に突然剣が出現し、突然現れた剣に反応する事が出来ずに首の半分まで刃が食い込み、首の骨が嫌な音を立てた。


 ルークは最後に残った一匹を確認した上でもう一度周囲を確認した。

私も確認したが他には居ない様だ。

最後の一匹との戦いは、どうも回避に専念して相手の短剣による攻撃をワザと見ている感じだ。

《簒奪の聖眼》の成功率は雑魚の場合80%を大まかな行動の種類で割った%で、それぞれの使用を確認すると上がる。

残り20%は既出の技を繰り返し見る事で上がる。

この繰り返し部分は敵の強敵度で変わる。

ゲームでは繰り返し以外の部分が雑魚80% エリア中ボス60% エリア大ボス40% ラスボス20%だったようだ。

ある程度で切りが付いたのか、難なく倒した。

ゴブリンの討伐証明部位は右耳の上半分となって居る。

この部位は切ってもあまり血が出ない為、あまり処理は必要無い。

正直、まだまだ私にはグロ耐性は無いので内蔵系とかは勘弁して欲しい……。

ちなみに魔法依存タイプだった場合、崩れる部位は焼き固める等の処理が必要で若干面倒だ。

まぁ、大抵は牙や爪等が多いのでそこまでの頻度ではないらしいが。


 ゴブリンの襲撃等もあったが、結局一時間もかからずに十分な数が揃ったので街へ帰ることにした。

まぁ寝るのは野宿でも良かったのだが、今後の方針や旅の疲れを癒す意味では宿の方がいいだろう。

途中で体長一mのサイレントスネークと遭遇したが何事も無く撃破。


 ギルドで清算すると標準的な宿の食事込みで二~三日位は泊れそうな金額になったのでギルド職員に聞いて私達が泊っても揉め事を起こすような人が居ないであろう宿を紹介して貰った。


 勧められたのは『白竜亭』と言う、白を基調として小奇麗な感じの宿だった。

ギルドからは多少離れているがその分力仕事を好む層があまり居ない。

客層は女性が多めに見える静かな宿だ。


「すみません、宿をお願いしたいのですが」


「はいよ。お嬢さん、一部屋と二部屋のどっちだい?」


宿代は部屋の大きさと数で決まるらしいので、今後の事はまだわからない事もあり節約の為に大きめのベッドのある一部屋を借りる。

お婆ちゃんが亡くなってからは、ルナは全員の寝床を順番に回る様に夜を過ごした。

妹と一緒に寝ていたルーク的には、どうも私に対してもあまり気を使う所はまだ無い様だ。

それなら節約の為にもう暫くは一緒のベッドでも問題は無いだろう。


 連続で泊る場合は翌日の分を前払いすると食事が一日一回サービスされるらしいが、流石にもう少し様子を見てからの方がいい。

採取系を毎日繰り返せばそれだけでその日の宿泊代にはなりそうだったので、ついでに討伐する分を考えたら十分な稼ぎを予想できるのだけどね。


 お勧めの料理を聞いたところ、夕方に焼いたばかりの黒パンとエルナリアラビットの肉が入ったシチューだったのでそれを頼んでみた。

エルナリアラビットは魔物ではなく普通のウサギだ。

体長が鼻から尻尾の先まで百五十cmあるので正直ウサギというイメージでは無い……。

この付近にしか生息していないがよく取れるので比較的安価で手に入る肉らしい。


 臭みは無く、どこかで嗅いだ事が有りそうな香草のような匂いがする。

宿の人に聞いてみた所、ルルカナという香草を好んで食べるようだ。

ルルカナ自体は見た事が無いが、ゼンさんが持ってくる商品にも乾燥させたルルカナがあったはずだ。

パンもシチューもとても美味しく、中々の満足度だった。


「とりあえずは明日からも暫くは収集系と討伐系を同時にこなせるように依頼を受けて少し資金を稼ぎましょう」


 お金に余裕が無いと色々制限されるので、まずは当面の宿代や装備の充実をするとルークに伝える。

その間に魔法の習得に必要な情報を得ていき、私が優先的に魔法の練習を行う。

もし図書館等が私達でも使えるようならそこら辺でも情報収集に使いたい。

ギルド職員ならそういった事情にも詳しいかもしれない。

機会を見てそれと無く確認して行こう。


 魔法が使えるとそれだけで私の行動の幅が広がる。

収集系だけしか出来ないと、どうしても上のランクでは仕事が無い様なのだ。

そこら辺も考慮して徐々にやれる事を増やそう。

そう考えていると隣で寝ているルークから寝息が聞こえた。

疲れていたのだろう。

ゆっくりと寝て明日からも頑張って貰おう。

そう考えているうちに……私も夢の世界へと落ちていった。

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