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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第三章
53/138

53◆私の配下についてと盗賊団達のアジトへの移動

 夜の森林を移動する事になったのだが、ここで移動する人数を確認する。

私と盗賊団が六人だ。

一人や二人だと、間違った方向へ誘導される可能性が否定できない。

もはや無事ではすまない事を理解しているだけに、どうなっても構わないと迷惑な行動を取られるのは勘弁して貰いたい。

それ故、人数はそれなりに居ないと信用が出来ないのだ。

そうなると、私自身はこの森程度では相手になる敵がおそらく居ないのだが、盗賊団を守らなくては目的が達成できないと言う面倒な状況でもある。

そこで今回《迷宮の虜》を使用し、外に出すことも出来るようになった魔物、エグフォルド森林と言う場所固有の魔獣であるエグフォルドタイガー達の出番だ。

順番に一郎、次郎、三郎、以下略だ。


 私が個体差を覚えるまでの間、即席で作った首輪に番号も刻印しておいた。

一層の基本レベルは20のはずだが、この五匹は24~25レベルとどれも強めだった。

爺の迷宮の事を考えると、階層ボスクラスの強さだ。

もっとも、私の迷宮は魔物の数が多いので、先に強くなった魔物は優位なままドンドン強くなるのかもしれない。

何にしても、この強さの魔獣が護衛についていれば、襲って来る魔物自体が相当減るはずだ。

因みに、外見的な特徴は頭からお尻までが二m以上、尻尾が更に一mある。

四肢が物凄く太くゴツイ。

毛並みは少し長く、銀色の合間に少しだけ金色が覗く。

森林を生息地にしているが隠そうというつもりが無い、圧倒的強者の風格を持つ魔物だ。


 さて、準備も大分整った所で……一匹名前を変更します。

五郎から、サツキになりました。

この子……雌でした!

適当に連続した名前つけるとか、気をつけたほうが良いね!

一郎、次郎、三郎、四郎、皐月さつきです。

OK、後は問題無い……はず!




 ☆ ☆ ☆





 移動を始めた段階ですでに夜になっていたが、周囲が見えないのは不味いので照明は沢山作った。

私自身は《暗視》があるし、エグフォルドタイガー達も暗視能力がある。

問題は案内役の盗賊達だった。

盗賊達にはヘッドライトの様な形で《光魔法》の《ライト》の魔法具を付け、エグフォルドタイガー達にも大きな照明魔法具を付けて貰って辺りは相当明るい。

夜行性の動物なら近寄らない位の眩しさだ。

盗賊達を五人並べ、後ろに各一匹づつエグフォルドタイガーを配置して、その後ろに一人だけ盗賊を置いている。

私は最後尾で全体を見ながら、一番後ろの奴の仕草や表情も含めて見ていた。

因みに、この最後尾の奴が一番ポーカーフェイスの苦手な奴だった事は言うまでもないだろう。


 この移動に際して、一番の大掛かりな準備となったのは……迷宮だった。

そう!

第二迷宮を作ったのだ!!

後で破棄して作り直す事は可能なので、移動の手間を減らす為にサックリ作ってしまった。

固定型迷宮を作成し、使っている移動型迷宮のマスタールームへ直通扉を作成。

問題無く設置でき、移動も可能だった。

現在ジムルと捕獲に立ち会った自警団のメンバーは移動型迷宮で待機して貰っている。

まぁ、普通に寝て貰って居るんだが。

目的地に着いたら、必要なら起こすから寝ててくれと伝えてあるのだ。




 ☆ ☆ ☆




 歩きで二時間程移動した段階で、ようやく目的地に着いたようだ。

盗賊団はすでに諦めている為、反抗的な態度や間違った方向へ誘導する事は無かった。

案内された場所は、森の中にあるのが不自然な作りの建物だった。

石材の様な材質だが、作られたばかりの様に傷一つ無い事が、普通の建物ではない事を物語っていた。


 中には、人質になる可能性のある人物が二人居ると聞いている。

今までは村から人をさらう余裕は無かった為、ジムルと同じ様に離れた場所に住む親子を一組さらって来ているらしい。

父親と娘らしいのだが、娘はまだ五~六歳らしく、雑用で酷使されている以外に被害は無いとは言って居た。

邪魔をされても困るので、迷宮を呼んで盗賊達は中へ突っ込んでおく。

一緒に連れて行くのは一郎と次郎だけで十分だろう。

残りの三匹で、盗賊団を見張らせておくことにした。


 《消音移動》を使い、静かに近寄ると中には一人の盗賊らしい男と、さらわれた男と思われる人物が起きていた。

奥の方にもう一人の盗賊が寝ており、更に奥の方にまるでゴミの様に転がされた女の子が居た……。

息はしているが、かなり弱っているようだ。

捕まっている男からも生気という物が感じられず、もはや単に指示された事を黙々とこなしている様に見える。


 私は一気に、起きてはいるが明らかに油断している盗賊に駆け寄り、先ずは右腕を踏みつける。

男からは何が起きたか理解出来ない雰囲気のまま、絶叫があげられる。

砕かれた右腕を咄嗟に左手で触ろうとした所を、そのまま掴んで左手首をねじる。

明らかに不自然な感触を感じながら一回転させた手首は、自分の意思では動かせない形へ変形していた。

当然それだけの絶叫を聞いた残りの盗賊は、起き上がると即座に攻撃して来たが……面倒なので《ショートカット》から《アースシールド》を発動させ、防いだ瞬間に氷の単体魔法を撃つ。

一発、二発、三発と当てると壊れた人形の様に崩れ落ちた。


 さらわれて来た男は呆然としていたが、私が救出に来た事が分かると、すぐに子供の所に駆け寄った。

私もすぐに近寄り、様子を見る前に《変換魔法》による《水魔法》と《光魔法》の複合回復魔法を使う。

どちらの属性も回復魔法が存在するが、傾向としては水が肉体寄り、光が精神寄りの回復を得意としている。

即ち、私が使った複合魔法は万能系回復魔法と言える系統だ。

問題は、私の熟練度で使える魔法程度ではゲルボドの《快癒》程の完全な回復は無いため、あくまでやれる範囲での回復でしかない。


 私もゲルボドの魔法を少しづつは熟練度を上げているが、流石に習得までは先が長い。

因みに、ゲルボドは自分のスキルや魔法、私は《格闘術(異世界)》を、熟練度に関係なく全ての技や魔法が使える。

威力は熟練度相当に落ちている物も多いが、使えるだけマシと言えるので文句は言えない。

これは、この世界に持ち込んだ者の特権と言うか……特性と言うか……、そう解釈している。


 さて、話を戻そう。

子供はかなり手荒な扱いを受けて居たのであろう……体中が青紫に内出血の跡が見られ、左腕は折れてパンパンに腫れている。

顔や足には火傷の跡が幾つもついており、満足に栄養も摂れていないのだろう……ようやく生きていると言った感じだった。

私の回復魔法で何とか傷はある程度治ってはいるが、そもそもの体力が低下しているので魔法の効きがかなり悪い。

それこそ《快癒》の様に、強制的に健康な状態へ持って行く魔法でも無ければ回復出来る状態では無い様だ。

……ゲルボドが居る王都へ戻るか……?

そう考えもしたが、私が全力で走っても三日位はかかるはずだ。

しかも、複数のクエストを受けて移動中と聞いた記憶もある。

この状態では緊急を要する為、そんな余裕は無いだろう。

私が何とかするしかない。




 ☆ ☆ ☆




 再度迷宮を呼び、娘をマスタールームへ連れて行く。

そして、ジムルや自警団員に盗賊の確保とアジト内部の確認を頼んだ。

私は小屋へ子供と一緒に入り、クッションを敷き詰めて寝かせた。

さて……どう対処するか考えよう。


 まず、栄養が足りない。

内出血とはいえ、骨折部位も含めてかなりの血が血管から外へ出ているため、この小さな身体では血液が不足している可能性も非常に高い。

……ただ、栄養を補給してあげないと結局はその血液も補充できないのだから、全てが栄養って話になる訳だ……。

前世なら点滴で何とかなる所だが、残念ながら私にはそこまでの知識が無い。

知識さえあれば、今なら必要な物を生成出来るとは思うのだが……。

無い物ねだりをしていても仕方が無い。

出来る事を考えよう!

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