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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第三章
52/138

52◆盗賊団の結末と私の《迷宮の虜》達

 魔法具を渡した自警団には使い慣れない剣よりも扱いやすいだろうと考え、切れ味が強化されている短剣を支給しておいた。

配布した使い捨て用《アースシールド》の強度は、魔素を流し続けるタイプから見るとそれなりの防御力と言う表現になってしまうが、今回程度の相手ならほぼ無敵と言えるだろう。

六級の魔石に魔素を封入して、《アースシールド》と言う魔法で発火する花火の様な物なので、魔石単体に魔法回路を埋め込む代わりに使い捨てになる。

何度かのテストで魔素の封入に耐えられるのが六級からとなる事が判明しており、エルナリアの街では殆ど使う事が出来なかったのだが、爺の迷宮で相当数手に入れ、私の迷宮では時間の経過で無限に生産される魔物から作れるとなれば……容赦無く使うべき……と言う結論になってしまう訳だ。

魔素の追加流入はしていないので実体化まではしない為に移動が可能となり、こちらの方が戦闘では便利である。

内部からの打撃には極端に弱いので攻撃の妨げにならない。

自分で破壊した部分もすぐに再生する為、自己破壊分の消耗を考えても十分前後の効果時間はあるはずだ。

これを各自に二個渡しておき、戦闘開始時に必ず一つ目を使う。

これは、例え無駄になってもいいと考えている。

村人の安全が第一として行動する事が、今回の原因の一端である私の役目と言えるからだ。

二個目の使用は各自の判断に任せてはいるが、少しでも危険だと思える状況では躊躇せずに使う事を義務付けておいた。




 ☆ ☆ ☆




 簡易ゴーレムを通して私は話も出来るので、ジムルと自警団には後方に少し下がった一体と合流して貰う。

一体は動かずに相手の見える位置に置いておく事で状況を把握して、随時ジムル達には状況を報告した。

こうして時間は過ぎるが相手は動かず、おそらく陽が暮れるのを待っている感じを受ける為、ジムル達にもその事を告げておく。

予定していた量の保存食が出来上がった段階で、私は村から抜けてジムル達とは反対側から盗賊団に近寄って行った。

《聴覚強化》の影響で賊の話が聞こえて来たので、一時止まって話を聞いてみる。


「そろそろ陽も暮れる頃だ。準備はいいな?」


「おう! それにしてもあのクソ女、絶対に俺達が後悔させてやるぜ!」


「こんな場所で村人に食い物を分けてるんだ。絶対にお人好しだろうからな。悲しむ顔が目に浮かぶな!」


「直接戦っては勝ち目はない、が……奴の目を盗んで村に被害を与え続けて無力さを思い知らせてやるさ」


……やはり、わたしの事を理解していたか……。

陽が暮れるまで待つ必要は……無いな。


『皆さん、そろそろ動きます。準備はいいですか?』


「おう! いつでも良いぜ!!」


ジムルを始めとして自警団のメンバーも、周囲に気を使いながらあまり大きな声を出さずに気合の入った声で答えた。




 ☆ ☆ ☆




 現在、敵の包囲はほぼ終わっている。

敵は私が確認した分は全員ここに居る。

最初に見つけた奴も含めてだ。

私がゆっくりと近づいて行き、それよりも数m程広い範囲を維持しながら徐々に輪を小さくしていく。

流石にこれ以上は厳しいかな、と言う段階で全員の《アースシールド》を発動。

私が一気に敵の中に躍り込んだ。


 敵は何が起きたのか全く理解できていなかった。

まずは手前に居た奴の左手を取る。

その腕が捻じ切れる位の勢いで私自身が高速で一回転して、その勢いのまま横に居た奴にぶつけて手を放す。

最初の奴は肘の部分がねじった雑巾の様になったままとなって居る。

私は自身を回転させた勢いを、しゃがんで地面を蹴る事で一気に殺し、近くに居た奴の足首を掴みながら横へ飛び上がる。

足をすくわれた形で転倒しそうになった奴を、そのまま力任せに周囲にある木に向かって投げた。

ぶつかった場所は肩から上腕部で、肩は砕けたか良くて脱臼と言った感じの不自然な位置に下がり、上腕部もおそらく折れている感じだ。

ここでようやく武器を構えた賊達だが、私を見て明らかに怯えている。

ふむ……ここは私に刃向った事を後悔してもらうか……。

周囲を囲っている味方との距離はまだ十数mある。

やるなら今だな。


 まずは風系の魔法で浅く大量に切り刻み、次に火炎系魔法を敵中央で発動させた。

この炎から逃げまどいながら敵が転がった所に自警団が辿り着き……容赦無く全員が捕縛された。

一応、根性のある奴が数人攻撃していたようだが、《アースシールド》に阻まれて全く効果無し。

ふむ……呆気なかったな……。




 ☆ ☆ ☆




 ここで今後の事を考える必要がある。

村へ連れていくか……いや、まずはこいつらのアジトを吐かせる必要がある。

今までの村で連れ去られた村人は居なかった様だが、残りの二つの村や、ジムルの様に村から離れて暮らしている人も居る。

アジトを確認しておかなくては不味いだろう。

そうなると……捕獲した事を自警団員に報告して貰って、迷宮の方で尋問かな……。


 連れて移動するのは面倒なので、簡易ゴーレムを一体、村へ向かわせた。

ネイアに頼んで迷宮内には立ち入らせない様に言ってあるが、ネイア自体がマスタールームへ出入りする可能性はある。

扉をくぐっている最中に転移させた場合を確認した事は無いので、簡易ゴーレムで安全を確認してから迷宮を呼ぶ予定だ。

本当は迷宮は私が離れる時点で移動させてしまいたかったのだが、敵の襲撃が迷宮の転移を合図に行う予定だと面倒な事になるのでそのままにしておいたのだ。




 ☆ ☆ ☆




 簡易ゴーレムによる確認も終え、迷宮を呼んで賊を含めて全員にマスタールームへ入って貰う。

一応、自警団のメンバーには、素直にアジトを話すかどうかを確かめて貰う。

その間に私は一人で村へ走って戻る。

これが一番、移動速度として速いからだ。

村へ戻って再び迷宮を呼び、自警団員から話を聞いたが……既に自暴自棄になって、必要な事を話す事はせずに殺せとわめいているらしい。

まぁ、予想通りだ。

それじゃ、順番に行きましょうかね。


 自警団員に、村長や他の自警団メンバーに通達して貰うよう頼んで、私は迷宮への階段を開く。

まずは大きな怪我も無く、元気そうな奴の襟首を掴んで階段を降りる。

階段の下は個室になっており、そこまで魔獣の数は居ない。

数は五匹……初めて行うが《迷宮の主》の能力、《迷宮の虜》を使用。

ふ~む……ちょっと面白いな。

迷宮内限定だとは思うけど、頭の上にマーカーの様な物が見える。

やや大きな、赤い丸型だ。

そして、どこからでも《迷宮の主》で大まかな指示を送れ、直接目の前に居れば無言で細かな指示も送れるらしい。


 まずは五匹で周囲をグルグルと回らせて威嚇させる。


「死にたいなら勝手に死ねば良いけど……楽には死ねないわねぇ……生きたまま喰われて行くってどんな感じなのかしらね?」


「止めてくれ! 殺してくれ!! 今すぐ殺してくれぇぇぇぇぇ!!!」


そう言って……しばらく叫んだ後に意識を失った。

次だな。

こいつは階段の下、死角になる位置に放置する。


 次を選ぶ為に階段を登ると、明らかに恐怖にいろどられた絶望の顔が並んでいた。

ふむ……。

特に何も感じない自分を再確認して、次の犠牲者を選んで階下へ引きずって行く。


「止めて! 止めてくれぇぇぇぇぇ!! 俺は何もしてない!! してないんだぁぁぁぁ!!!」


「今更……したとか、しないとかはどうでもいいわ。言うか、言わないかのどちらかしか選択肢は無い。ただそれだけよ」


こうして……二人、三人と続き、四人目を決める段階でようやく素直になってくれたようだ。

仲間の数は、後二人居るとの事。

朝になって仲間が帰って来ない事に疑問を持たれても困るし、そろそろ夜になるが……いくとしましょうかねぇ。

ただし、夜間に森の移動は危険も伴うので、先程配下に加えた魔獣達も連れて行こう。

名前は……一郎、次郎、三郎、四郎、五郎でいいかな。

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