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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第三章
48/138

48◆村巡りの開始と貸す為の条件提示

 私のMPをもってすれば、この程度の作業……なんて事は無い!!

と、言える位にはMPが残っているので作業が終わり次第動き始めます。

移動に関しては、時間をかけるとその分被害が増える可能性が高い。

その上、村も自衛の為に動き出している以上、衝突で被害が出たり、自警団が壊滅した場合は村自体が蹂躙される恐れもある。

そこで、移動を私は《フルブースト》状態、ジムルは私が操作する簡易ゴーレムに運ばせる。

二人とも迷宮に入れて移動するのが楽なんだが、そうなると道が分からなくなる。

苦肉の策としてネイアは迷宮、ジムルは迷宮に居たクジラ型魔物のヒゲを豪勢に加工し、水魔法と風魔法系を付与して色々細工した一品で衝撃を緩和しながら運ぶ。

前世での介護用等で見たウォーターチェアから得た発想で作成してある。

……見た目は長椅子みたいなので別な呼び方にしろとかは受け付けない。

馬車の荷台に置く様に考えて作っておいた品だが、見事に今回の役に立つ様だ。


 まずは迷宮を呼ぶ。

因みに、迷宮の転移はレベルが低いと転移回数には限りがある。

しかし、所詮は魔法物質で移動しているのだ!

呼んだ直後に私の魔素を迷宮内に一定量以上ばら撒くと、すぐに再転移可能になる。

実に便利だ!


「これ、大丈夫なのか?」


扉から中へ入ったジムルがそう聞いて来た。

ネイアは興味津々、といった感じでマスタールームを見回している。


「特殊なスキルが必要なんだけど、私が支配している迷宮だから問題はないわ。移動距離が長いから、ネイアはここで待っていた方が安全だし快適だと思うけど……判断は任せるわ」


そう言いながら、普段は出していない冷蔵庫や水の入ったタル等を出していく。

ジムルは少し考えていたようだが、


「ネイアが怖がっている感じもないし、ここを使用させて貰おう」


そう言った。


 基本的にネイアはこのマスタールームに居て貰う。

迷宮本体へは基本的に行けない様になって居る。

天井から降りて来る仕掛け階段を登らなくては行けない為、階段の動作権限を持つ私以外はこの部屋から迷宮へは自由に入れない。

そうなるとここに閉じ込められるという恐怖の点が問題になるが、《迷宮の主》の熟練度が上がった事により使える様になった《簡易出口付与》で、相手が一度だけ使用できる簡易出口を作成できる様になって居る。

この能力を付与された場合、使用すると私が居る位置に任意のタイミングで簡易扉を作成し、一度だけ私の居る場所へ出る事が出来るのだ。

《迷宮の主》の配下は迷宮から出せるので、その為の能力だろう。

毎日迷宮へは戻る予定だが、閉じ込められる不安感を与えない為には保険があった方が良い筈だ。


 そのうち破棄する予定なので、この迷宮にはあまり物は置いて居ない。

精々、毎日使うベッド位だ。

しかし、数日間はずっとネイアが居る予定なので、もう少し環境を整えた方が良いだろう。

……少し考えたが、面倒なのでいつものメイン小屋をそのまま出した。

風呂小屋は、ルーク達も使うので出しっぱなしにはしない。

日持ちするお菓子類も王都で結構補充してある。

主にミルロード邸で私も参加して作成した品だが。

それらや簡単に調理出来る素材を冷蔵庫に入れて置く。


 そして、一人で中に居る時間が長いので、時間を潰せる仕事を頼む事にした。

まず頼んだのは、昨日今日で集めた石の仕分けだ。

大きさを気にしないでガンガン箱に突っ込んであるが、石の大きさで原魔石の等級が変わる。

要は、中に吸収出来る魔法物質の量をそこで決めているという訳だ。

多少余裕を持たせる様に作る為、許容量いっぱいまで吸収すると一つ上のランクへ上がる事が出来る位が適正の石選びとされている。


 私は標準的な大きさの例を並べ、それと比較して別々の箱に入れて貰う様に頼んだ。

回収してある石は六箱分。

各箱に数百個の石が入っているので、かかる時間も相当な物だ。

タダ働きをさせるつもりは当然無い。

仕分けた量に応じて相応の賃金か、道具の作成や今使って居る物の修復や強化を請け負う事にしてある。

特に興味を持っているのは、殆ど劣化しない金属製品等の様だ。

金属は当然錆びる。

しかし、魔法自体の付与や魔法回路を組み込んだ状態修復を駆使すると、ほとんど劣化しないで使える製品が作れるのだ。

そんな品は当然、食べて行く事で精一杯の農村の人やジムルが購入する事など出来る金額では無い。

報酬の話を聞いたネイアは、嬉々として仕事を始めていた。


「頑張ってくれるのは嬉しいけど、必ず休憩を挟む事! 後、食べ物に関してはいくら食べても良いけど、食事が食べられない位食べちゃ駄目よ」


「はい! お姉ちゃん」


そう、素直に返事しながらも黙々と大きさを真剣に比べながら仕分けている。

まぁ、適度に頑張って!




 ☆ ☆ ☆




 簡易ゴーレムに緩衝用の椅子をくくり付け、ジムルをせて走っている。

最初はジムルの事を考えて、それ程の速度は出していなかったのだが……平然としているから少しづつ上げて言った結果……簡易ゴーレムの全力疾走でも平気だった!

椅子の緩衝効果は相当な物なのだが、その代わりに波に揉まれる様な揺れがある。

普段の仕事は大きな川なので、それ程の揺れを感じないと思っていたのだが……意外と耐性が高かった様だ。

容赦無く、出せる最高速度のまま移動すると一つ目の村へは一時間もかからずに着いた。

因みに、予定している村は五つだ。


 この村は一度、小規模ではあるが襲われて被害にあっている。

ジムルは一番交流が有る村なので、すんなりと村長と会える所まで話が通った。

村長の見た目は好々爺とした見た目ではあったが、今回の件ではかなり参っているらしく、疲れが滲み出ている。

周囲に居る自警団のメンバーも、疲れと怒りが入り混じった感じを受ける。


「お嬢さんだね? 儂と話がしたいと言うのは」


村長が確認の為に、そう一応聞いてきた。


「はい。現在村が被害を受けている盗賊団の件で相談が有って来ました」


そこまでは既に聞いている筈なので、特に目立った反応は無かった。


「今回こちらに現れている盗賊団なのですが、私も個人的に恨みがあるのです……。そこで、奴らを捕まえる為に出来る事はやっておきたい、という訳です」


正確な事を言うつもりは無い。

実際に盗賊達によって襲われた村だ。

感情的になって、私が原因だと騒がれても困る。


「それで、儂達と話をしたいと言う本題は何かね?」


「相手が十人を超え、一応は武器を扱う事を生業とした相手では……正直、現在の自警団だけでは厳しいのではないか……と」


その言葉に侮辱の意図は無いと感じたらしく、興味を持って次の言葉を待っている様だ。


「私は魔法具を作る事が出来ます。今回の役に立つのでは……と、準備して来ました」


「……この村は見ての通り、余り余裕のある生活はしておらぬ。その上、先日の被害のせいで更に厳しいことになっている……魔法具を購入出来る余裕などありはせぬよ」


あからさまにガッカリとした様子を村人達も見せる。


「別に私は村の弱みに付け込んだ商売をしにきた訳ではありません。いくつかの条件を守って頂ければ、タダでお貸し致します」


その言葉には興味を持ったらしい。


「その条件とは……?」


と、村長が聞いて来た。


「この品はあくまで貸すと言う事と、決して悪事には使用しないと言う事を守って頂きます」


「それだけが条件なのかね?」


「はい。貸した品は使用済みの物も含めて、この件が解決したら回収致します。問題は、その段階での紛失等があった場合は相応の対価は払って頂きます。要は、無くさないように! と言う事ですが。そして、もし悪事に使用したと判明した場合は、私が敵に回る事を覚悟して頂きます」


ここでちょっと演出も兼ねて、氷属性に変化させただけの魔法物質を周囲に広く弱く拡散させながら、少し凄みを感じさせる雰囲気の……要は、意地の悪そうな顔をする。

村人は急に冷えた感覚と私の不気味さにちょっと引く感じを見せたが、さすがに村長は冷静に対応してきた。


「それで、どのような品を貸して頂けるのかな? 借りるかどうかはそれ次第と言う事になりますが……」


正直、ここでどちらを選ぶのかは村人次第だが……折角なので、精々役に立つ品だとアピールしておきましょう。

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