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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第三章
47/138

47◆不審者が居ます?……はい、不審者ですね!

 《危険感知》のする方向を注意してみていると、まばらに木が生えている場所の辺りから姿を現した。

その姿は人間の成人男性だ。

右手に作業に使う為に使い込んでいるのであろう古びた片手斧を持ち、左手には十二~三歳位の女の子がしがみついている。


「貴様! そこで何をしている!」


その声には、恐れや戸惑いを感じさせる物が含まれていた。


「何って……石を集めているだけよ?」


敢えて軽く聞こえる様に答える。

その答えに驚きの表情が浮かんだ様だ。

こんな成人直後の見た目だけは可憐……?、な女性に失礼な態度だ!

ちょっとだけそう思ったが……よく考えたら、私の姿は例の不審者風の姿だった。

仕方が無いのでフードを外し、頭に巻いているターバン状の布も外す。

最後に顔を隠すためのマスク状の部分も外して頭部は全て見える様にした。

その姿を見て、相手は判断に困って居る様な素振りを見せる。


「お姉ちゃんは悪い人?」


男の腕にしがみついていた少女がそう聞いてきた。


「ん~、あんまり悪い事はして無い筈よ。ここの石を拾うのも禁止されて無い筈だけど……何か問題があった?」


その話を聞いていた男は、一気に緊張を緩ませたようだ。


 当然、何故このような態度で接してきたのかを聞く事になる訳だが……男の話は実に聞きたくない話だった……。

この辺りに最近出没する盗賊団に対しての警戒らしい。

詳しい話を聞いて……正直ゲンナリした……。


 見た事が無い連中がうろついているのが見られたのは、一月位前かららしい。

その連中は火傷や凍傷、裂傷などの様々なケガをして、中には手足が折れている奴も居たらしい。

そいつらは森の中のどこかに陣取っているらしく、最初の頃はどこからか現れては物を盗んで森に逃げて行ったそうだ。

そいつらの行動が、段々と酷くなってきたのがここ一週間。

おそらく怪我が治って動ける者が多くなってきたのであろう。

人数で押し寄せて、強引に略奪をするようになってきたらしい。

その被害は周辺の村全体に広がっており、村の自警団も動き出したと知り合いから連絡があったとの事。

因みに、この二人は村からは離れて暮らしているらしい。

そこへ私が……例の不審者姿で登場と来た訳だ。

怪しまれない訳が無い!!

はい、すみません。

私が悪いです。


 何が悪いかって?

その盗賊達の原因自体が……私自身だからだ!!

思い出して欲しい。

迷宮に入った際に、周囲で囮になった雑魚共をどうしたか……。

散々範囲魔法で痛めつけ、命からがら逃げていった奴らが多数。

迷宮探索に忙しかったせいで、奴らの事なんて覚えてなかった訳だが!


 ここで奴らの立場になって考えてみよう。

食べ物は数日分は持っていたのであろう。

移動自体はおそらく馬で追いかけて来ていただろうから、近くのどこかに隠してあったはずだ。

問題は、本人達が馬に乗って移動できる状態じゃなかったと言う事だろう。

迷宮の事を聞く為に二人程迷宮内部に運んだが、その時に転がっていた奴らを見た状態を考えると……数日はかかる馬での移動をするには酷な状態の奴ばかりだった。

近くで養生していても不思議は無いだろう。


 ある程度動ける奴らで何とか食い物を確保していたが、ようやく動ける人員が増え、これまでの期間に周辺の村の状況を把握した事で大きく出てきた可能性が高い。

私の故郷もそうだったが、村の自衛手段等、武器を持った相手にほとんど役には立たない。

そうなると……、これは私自身が解決するべき問題となってしまった様だ……。




 ☆ ☆ ☆




 今回会ったのは川で漁をしながら、保存食用に加工した干物や乾物を村で必要な物と交換して生活をしているらしい親子だった。

名前はお父さんがジムル、娘さんがネイアと言う。

私は自分のやった事に対する後片付けの為に、ジムルに仕事として依頼をする事にした。

この周辺にある村への案内と、村人達への紹介役としてだ。


 方向としては、まずは既に襲われた村も含めて近場から回って行く。

その際に上手く遭遇できればいいが、余程運が良くなければ無理だろう。

そこで、主な目的としては逃走したルートの確認と可能ならば痕跡を辿たどって追跡。

そして、全ての村へ撃退用の簡易的な魔法付与品の配布だ。

相手の人数は、大体十人~十五人といった感じらしい。

それらに対して有効かつ、使用せずに残ってもあまり悪用出来ない物が良い。

持っている素材と用途を考え、作る事にしたのは粘着性の強い素材を使った網状の捕獲ネットに決めた。


 爺の迷宮一層は、虫系の魔物だった。

この中に何種類か、粘着性の糸を吐き出すタイプが居た。

その糸の素を取り出して使う。

作成には多少の時間があった方が良いので、まずはジムルの家へ行く事にした。

村を巡るのならばある程度の日数がかかる為、漁に使用している道具を片付けておかなくてはならないからだ。

まずは水中に仕掛けてある網を引き揚げる。

そして、川辺に置いてある小型の船を増水しても流されない位置へ移動させた。

網にかかっていた獲物の処理をして、長時間放置しても大丈夫な方法で乾燥させる。

その間に私は拾ってきた石ころから、今回使用するのに適した物を選んで原魔石へと変えていった。

 

 原魔石が完成したら、今度は虫の解体だ。

粘着性の物質が入った部分を取り出し、それ以外の部分で魔石を作成する。

因みに、魔石の種類は九段階区分が一般的だ。

レベル的に1~5が九級魔石。

6~10が八級。

これ以降は11~20、21~30と十レベル刻みだ。


 この魔石のランクは、作ってみないと正確な事が判らないのが普通となっている。

何故なら、敵のレベルは当然変動する。

魔石にする為に必要な匹数等も変動する為、状況次第という事になってしまうのだ。


 例として、エルナリアの街付近はレベルが低い魔物が多い。

ここでゴブリン相手に魔石を作成するには十匹前後で最低の九級が出来る。

しかし、爺の迷宮で数は少なかったがただのゴブリンも出てきていた。

こいつらのレベルは25前後で、街から持ってきた原魔石なら一匹で八級の魔石が出来る。

なぜ八級なのかと言えば、九級のゴブリンに合わせた原魔石では八級が限界だからだ。

七級になる前に石が吸収を止めてしまう。

石が七級クラスの魔法物質に耐えられないからだ。

そして、もっと高ランクにならないのかと言えば、可能だ。

25レベルならば六級が作れる為、そこに合わせたゴブリン用原魔石を用意すればいいという事になる。

そういう意味では魔物のレベルを確認してから原魔石を作ると言うのは、実に効率はいい事になる。

現在は七級の魔石を鋭意製作中という訳だ。


 因みに、九級段階の上は無いのかと言えば……存在させることは可能だ。

問題は、現実的ではない……という事だろう。

通常出回る最高の魔石で四級、この対応レベルは41~50だ。

王都の壁に居たゴーレムは、上位魔石に分類される三級を使用している。

その適応レベルは51~60……人が倒せる限界クラスと言われている敵が相手だ。

人で60レベルの壁を越えるのは勇者関連以外は殆ど居ないとされている。

即ち、一級の71~80レベルの敵を倒せるのは勇者関連のみ。

レベル80を超える魔物自体も倒せる人間もほぼ居ないので、これ以上は魔石として考えられていない訳だ。


 粘着物質をかなり細い糸状にして、それなりに大きい網を作り、作った七級を使用するのは勿体無いので、王都で買った九級の魔石に魔素を侵食させて七級クラスまで引き上げる。

それを使用して《アースシールド》と《ウォーターシールド》を発動させる魔法回路を作成する。

《アースシールド》は網を破らせないため、《ウォーターシールド》は内部から魔法を撃たせない為だ。

要は、ルークに蟹捕りで使わせた金属ネットを、一般人でも使える様に軽量化したと言えば分かりやすいかな。

近接していれば数人纏めて捕獲出来る大きさはあるが、使うのが素人だから多めに作ろう。

素材の兼ね合いも考えて……各村七~八個位かな。

ドンドン作りますよ!

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