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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第三章
46/138

46◆エルナリア領への帰路と川原での石拾い

 私はルーク達と別れて、師匠や領主の居る街へ向かっている。

順番を考えて、まずは街へ行く事にしている。

取り敢えず当面必要になる最低限の魔法具を幾つか作り、それから実家の村へ行き迷宮作成。

すぐに街へ戻って、追加の魔法具を作ってから村へUターンする予定だ。

色々慌ただしいのだが、時間の経過で確かめたい事もある為にそのルートが一番都合が良いと判断してのルート構成だ。


 移動に関しては……ハッキリ言えば徒歩だ。

魔素を使用した《フルブースト》状態で爆走しているとも言えるが!

流石に悪目立ちするので、顔も見えない位にガチガチに完全武装な布装備を作ってある。

お陰で肌が露出しているのは、辛うじて両目付近だけと言う状態だ。

シェリー達には、


「お姉様、流石にやり過ぎなのでは……?」


と言われたが、


「姉さんならそれ位はした方がいいよ」


とは、親愛なる弟君の言葉だ。

流石ルーク、私の事が分かっているな。

間違い無く私はどこかで問題行動を起こすと確信しているらしい。

私も何かやらかすと思っているので否定が出来ない。


 さて、私の移動速度は現在馬の全力疾走と変わらない程の速度を維持したまま進んでいる。

肉体に対する負荷はそれ程感じない。

単に走るだけでは面白くないので、《格闘術(異世界)》による踏み込みやそこから派生する技を時々組み込んで居る。

あまり効率良くは無いが、熟練度が低い為かそこそこ上がって行く様だ。

人が多い所ではあまりやらないが、顔を隠しているのでそこまで隠さずに好き勝手しているのが現状だ。

真っ直ぐに帰る場合、順調にいけばエルナリアの街へ一週間かからずに着く予定となって居る。

最も、途中で寄り道するのでもう少しかかると思うけどね。


 街へ着くまでの流れとしては、陽が出ている間はずっと走りって夜は迷宮に泊まる。

この際に、迷宮を作成出来るMPがあれば前の迷宮は破棄して作り直す事で熟練度を上げている。

作る迷宮は転移型で、寝る時には雲よりも上空に配置しておく事で侵入者を防止する。

この際に、私の《魔素の扉》を出来るだけ開いて、肉体に負担を掛けないギリギリの魔素量を垂れ流す様にしている。

移動を始めてすぐに試した結果、大量の魔素を内部にぶちまけておくと、その分迷宮が一気に成長し、熟練度も急上昇している。

迷宮作成時の熟練度上昇がそろそろ少なくなってきているので、作り直さずにこの方法へシフトする事も考え始めている所だ。




 ☆ ☆ ☆




 私の移動中の目標として、爺が支配している迷宮の現状確認をする必要がある。

爺を生き返した以上、迷宮を呼ばれて逃げられましたでは流石に不味いからだ。

そして今……迷宮のあった場所へ到達している。

結果として……迷宮は無い。

となると、まずはいくつか確認する必要がある……。

ルークへ連絡だな。




 ☆ ☆ ☆




 ルークから連絡が来た。

これは先ほど私が頼んだ、確認事項に対しての答えだった。

爺は今も城の地下牢でしっかりと幽閉されているとの事。

爺を調べて判った事は、やはり例の五爵が裏で手を引いて色々やらかしていたらしい。

ルーク達はその結果を聞かされると共に、今は余計な手出しはしない様に頼まれたらしい。

結構な規模で行われている、裏の仕事に関する事を一網打尽にするのにもう少し時間が欲しい為、逃げられる危険性のある余計な事は避けて欲しいと言う訳だ。

納得が出来るし、ルーク達だけで行動を起こす危険は避けて欲しいので、正直その方が有り難い。

爺の迷宮が移動してこの場に無い事を伝えたら、しっかりとスキルの使用を封じる手段を更に強化してくれたらしいので、後は任せるしかない状態の様だ。


 私のこの後の予定は街道から少し迂回して、この辺りでは大きな川として有名な場所へ行こうと考えている。

名前は一応有るのだが……こちらの世界は地域住人同士の交流がほぼ無い為、結構好き勝手に呼んでいる。

よって、王都で見た地図上ではルースローム川となって居たが……現地で通じるのかは分からない。




 ☆ ☆ ☆




 川へたどり着いた私は、結構大きな川で驚いた。

濁った川では無く、澄んだ水をたたえたとても綺麗な情景だった。

その理由は、この近くは良質の石材が採れる採石場が沢山ある地域なのだ。

王都周辺で使用されている殆どが、この辺りから運ばれているらしい。

川となっている場所も多数の石や岩、それが破砕されて出来た細かな砂利等で埋め尽くされ、大きな川自体が石で構成されている状態なのだ。

その硬い川底を流れてきた石は、いい感じに角が取れて原魔石の材料としても優秀な形状となって居る物が多いようだ。


 原魔石に使用する石は、魔法物質をある程度含んで居ないと適さない。

石は比較的長い年月の積み重ねで魔法物質を保有しやすい素材ではあるが、加工するにはその中でも良質な物が必要になる。

原魔石に吸収された際に、魔法物質は当然移動する流れを持っている。

形がいびつな原魔石は、内部に吸収した魔物の魔法物質が流れる様に動けずに循環できずにぶつかり合う。

これによって多少ではあるが魔法物質が相殺されていき、質が低下する。

良質な原魔石は内部で魔法物質が円を描きながら徐々にスピードを落とし、最後には安定する事で完成するのだ。


 私の魔素が体内を平気で流れている事でも解ると思うが、魔法物質は普通の物質の隙間をすり抜ける様に移動出来る。

過剰な魔素を流すと肉体が崩壊する理由は、肉体を構成する物質に魔素がダメージを与えてしまう事によるものだ。

最近、その点で一つ良い事を発見している。

例の迷宮で手に入れたスキル、《肉体再生》だ。

このスキルが発動しているうちは、少しだけ魔素供給量の限界より超えてるかな? と感じる程度を流しても再生のお陰で問題無い様だ。

限界を超える事が出来る事は、物凄く意味がある。

自身に流せる魔素の量が多くなる事で魔素耐性が早く上がる。

魔素の供給量は魔送流の腕輪(仮)に流せる量にも直結する為、これからの私にはとても重要だ。

因みに、《自動MP回復》と《肉体再生》と魔素の微量な過剰供給が見事にハマり、勝手に常時熟練度が上がっている。

《肉体再生》の熟練度が上がる事による魔素の過剰供給量の増加も確認出来て居るので、いずれは魔素の耐性アップ速度が更に上がるだろう。


 前世で会った唯一の転移者、ラス=ニールは体外にまで魔素を張り巡らせて居た。

肉体の外に保持する常在魔素を《フィールド》と呼び、防御壁として使っていた事が思い出される。

魔法を無効化するだけでは無く、純粋な物理防御壁としても使用して居た。

最も、その魔素密度は物質と変わらない程の恐ろしい密度であったが……。

あれを再現する事が可能なら、恐ろしい力を手に入れることが出来る。

すぐには無理でも、いずれは……。

その希望も夢ではないのかもしれない。




 ☆ ☆ ☆



 川へ着いて、すぐに石を選びながら拾いまくった。

徐々に上流側へ移動しながら拾いまくって行くと、人が余り入り込まない所まで来たらしく、更に良質で数も多くなっていき、選びたい放題だった。

陽が暮れるまで存分に拾い、そのまま迷宮で休んだ。




 ☆ ☆ ☆




 ゆっくり寝てから昼前に起きた。

ルークへ定期連絡をしてから風呂小屋を出して、ゆっくりとお風呂に入る。

シェリーを送った後に三種類ある小屋をどれか貰える事になって居たが、王都で残り二種類を返しても邪魔になるのでそのまま預かっている。

実際の所は、今回エルナリアの街へ行った際に買い取る方向で交渉する予定だ。

この小屋の仕様は、私が扱う事で十分な効果を発揮する。

余り有効とは言えない状態で返すよりは、もっと役に立つ素材で有効な物を作成した方が良いと思う。

幸い、アイアンゴーレムが笑える程余っているので交渉材料は十分にあるのだ。


 ゆっくりとお風呂に入った後は食事にする。

調理器具も《アイテム》に入れてはあるが、自作するのは面倒なので作ってある物を食べている。

ミルロード六爵邸の所で料理人と意気投合し、魔物素材で大量に作って入れてあるのだ。

因みに、足りなくなる前にルークが追加してくれるので、美味しい食事が毎日安定して約束されている。


 さて、思っていたよりも良質な石がゴロゴロして居る事も有り、今日も石拾いだ!

用意してある木製の大きな木箱にドンドン良い石を集めて入れて行く。

この方法は、99個以上だったり種類が違う物を一つとして扱う場合に重宝する。

今回必要な石程度の大きさなら数百個は入るので、こちらの方が圧倒的に効率がいい。

最近は流石にアイテム数が多くなってきているので、師匠の所で少し処分も考えている。


 気分良く集めていると、《危険感知》に反応する気配が後ろから近づいてきた。

反応は大きくは無い。

……どんな面倒な事がやってきた事やら……。

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