44◆ミラの決意と異世界スキルの仕様解明
ルークの迷宮も順調に完成へ近づき、取り敢えず調べて置く事も大体終わった頃、一つ予想外の事が起きた。
「私はゲルボドさんと一緒に行きたいです……」
ミラがそう言ってきたらしい。
実はミラの事はシェリーに任せるつもりだった。
馬車の中で数日間一緒に居た事も有り、シェリーも使用人扱いで一緒に住むつもりで居たのだ。
正直、これから上位竜を倒す為に活動する際……間違いなく邪魔になる。
冒険者と言うのは、正直な所才能が要求される職業だ。
上位まで上がれる人間は限られる。
私やルーク、本物の勇者であるレイク等はハッキリ言えばその制限を最初から取っ払った状態なのでこうやって無茶をやって居られるだけだ。
もっとも、この能力自体はこちらの世界のルールでもあるから、ズル=前世で言う所のチートとは言えないと思っている。
まぁ、一般人から見たら十分にズルをしてるように見えるかもしれないけど……ね。
それに対して、私の《魔素の泉》やゲルボドの《スペルセービング》は間違いなくチートだ。
こちらの世界で再現出来て居ない時点で、完全にアウトだろう。
まぁそれはともかく……だ。
まだ十一歳の、戦闘力を持たない少女が一緒では、三年と言う期間で上位竜を殺すのは厳しい。
逆に期間を優先した場合は……ミラの命に係わる難易度になるだろう。
「ミラ、気持ちは分かるわ。でもね、ルークとシェリーにとってはとても大切な時なの。ハッキリ言うと、足でまといになる人を連れて行ける余裕はないわ」
ハッキリとそう伝えた。
曖昧な言葉で納得して貰えるか怪しいからだ。
「確かに今はまだ役には立たないと思います! でも、すぐにお役に立てる様になれれば問題は無いですよね?」
「そんな事が出来るのならば問題は無いけど……。ハッキリ言って私やルーク、ゲルボドは普通じゃないと思った方がいいわ。それらの足手まといにならないって言うのは相当厳しい物があるわよ?」
ミラは私達の強さを知らない。
道中に出て来た雑魚相手に多少は戦闘も見て居たが、迷宮の厳しさは見て居ないのだから。
しかしミラは私の答えを聞いて、何かを決心したような顔をしてゲルボドに向き直る。
「ゲルボドさんは、私が付いて行っても構わないでしょうか?」
「ミラがその方が良いと言うなら、問題は無いシャ――――!」
その言葉を聞いたミラは、何かを短く言った。
スキル:隷属…………習得不可能(種族限定スキル)
ミラの使用スキル欄にそう出ている。
効果は判らないが……大丈夫か……この名前……。
自分から使う以上危険がある物じゃないのは判る……。
しかし!
……相手がゲルボドで、本当に大丈夫なのか……?
こいつ、本気で常識的と判断が出来ない行動を取るんだけど……。
ミラに確認した所、《隷属》と言うスキルはミラの種族が産まれながら持つスキルとの事。
獣人族の集落の中で弱い立場にある、人型の猫人族が生き残る為に習得したと予想されるスキルで、文字通り対象に対して隷属するスキルらしい。
解除する為には双方で解除の儀式を行う必要がある為、普通は奴隷扱いをされたまま一生を終える事が多い。
そういう意味では、まぁゲルボドなら問題は無いとは思うが……もう少し自分を大切にしようよ……。
何故このようなスキルが存在するのかと言えば、《隷属》すると自身の種族的特性を主の物に近づけ、主の持つスキルをそのまま複製してしまえるとの事。
複製したスキルを定着させるのにある程度の時間はかかるが、通常から比べれば物凄い速さで習得することができる。
一説では、昔勇者の仲間に選ばれた猫人族(人型)が居たらしく、そこから発生したと伝えられても居るらしい。
何らかの方法で私達と同じ様に、限定した相手からスキルをコピーする手段を手に入れたんだろうな。
この様なスキルが何故必要かと言えば、強い異性の役に立つ事で寵愛を受け、なんとか次代に繋ぐ為の種族的存続の為に必要だったとの事。
ゲルボドのスキルの中でおそらく習得不可能な物は《スペルセービング》位だろう。
あれはおそらく無理だ。
私の《魔素の泉》と同じで不可だと出ているから。
しかし、もしそれ以外が使えるのならば……十分に戦力になるだろう。
特に《快癒》の魔法は凄い。
あの魔法の使い手が増えるのならば、それだけで十分に仲間として役に立つ。
そう考えているとルークがミラに、
「ミラ、何か変な感じがするとかは無い?」
そう聞いていた。
「特には……無いですね」
ミラがそう答える。
まぁ、ゲルボドも別にそこまで変な生態をしている訳では無いので大丈夫だろう。
「ミラ、そう言えばスキルを覚えるって言うけど、どう確認するの?」
「スキルを使いたいと意識すれば、任意で使えるタイプの物は選んで使えます。それを繰り返していくと、使う事に慣れて自分の物になります。状況的な物が必要な場合は、機会があると選べると聞いています」
更にルークとミラの会話が続いていく。
「じゃあ、今使える物って何があるの?」
ルークの質問に対して、挙げられたのは以下の物だった。
・スキル:片手剣(異世界)
・スキル:両手剣(異世界)
・スキル:弓(異世界)
・スキル:片手棍(異世界)
・スキル:短剣(異世界)
・スキル:強打(異世界)
・スキル:魔法強化(異世界)
・能力 :嗅覚強化(異世界)
・能力 :広視界(異世界)
・能力 :腕増やし(異世界)
・詠唱魔法:魔術師魔法(異世界)
・詠唱魔法:神官魔法(異世界)
・触媒魔法:錬金魔法(異世界)
・念動魔法:超能魔力(異世界)
私が前に見た《移動力強化(異世界)》が無いな。
これで全部じゃないって事か。
ルークはこの中で《腕増やし》が気になったらしく、突っ込みがちな態度で聞いていた。
「シャ――――? 前は腕を一本増やしていたシャ――――! 盾持ってオーディンソード持つには手が足りなかったシャ――――!」
私の場合……隠し腕として……流石に無いな。
「でも、こちらの世界に来たらどこに落としたのか、無くなってしまったシャ――――!」
こちらの世界には無いスキルだから消されたのかな?
その割にミラが使えるっぽいから今は使えそうか。
いや、本当に使えるのか?
「まぁそんな事はどうでも良いわ」
腕増やしはどうでも良いが、実際に他のスキルが使えるのかを確認した方が良い。
私の予想では、現状では魔法を殆ど使えないと考えている。
「ミラ、使える魔法の中で、適当に使える呪文を使ってみて」
「はい、エルおねぇちゃん」
ミラが私の指示通り魔法を使おうとする。
「あれ? 使える魔法が有りません……」
「やっぱりね。予想はしていたわ」
その予想が当たったって事は、次を試す必要がある。
「ゲルボド、私に最低レベルの魔法を撃って。そうねぇ、《魔術師魔法》で良いわ」
「わかったシャ――――!」
私の予想が当たって居れば、これで状況は進展するはずだ。
ゲルボドは詠唱した後に、私に小さな火の玉の魔法を当てる。
因みに、わざわざ私に当てさせた理由は二つ。
そこら辺に撃って、変な場所に当てて大事になったら不味いって事と、私の魔素での打消しで対応出来るかの確認だ。
ゲルボドの魔法は若干ルールが違うので、魔素で打ち消せるなら私もゲルボドと一緒に継続魔法内に留まる事も可能だ。
迷宮内ではゲルボドの冷気系継続魔法が効果的だったので、そこら辺も確認しておきたかったのだ。
さて、私の予想ではこれでミラは使用できる様になる可能性がある。
「ミラ、もう一度《魔術師魔法》の使用可能魔法を見てみて」
「はい。……あ、《火炎球》と言う魔法が使えそうです」
やはりか。
「予想通りね。ミラが使えなかったのは、この世界で一度も使った事が無い魔法だったからだと思うわ」
「シャ――――?」
ゲルボドは迷宮内でそこそこ色々な魔法は使っていた。
しかし、殆ど単体魔法は使用して居ない。
詠唱時間との兼ね合いで、単体魔法を使う位なら殴って居たからだ。
使用回数がそれなりに多く、四種類の系統にそれぞれ攻撃魔法があるから中級以上の魔法を使っていると迷宮内で聞いた記憶があった。
それ故、単体魔法が多いと言っていた初級を使用して居ないのではないか?
即ち、全ての魔法をこの世界で使用したことは無いのではないか?
そう考えていたのだ。
「ルーク、例の誰が記載しているか不明な、習得不可能と現在習得不可能とかの表示があったでしょ? あれの条件を考えては居たんだけど、今回の件で予想がついたわ。ゲルボドがこちらの世界で魔法やスキルを使うと、神なのか世界自体なのかは判らないけど、どこかで解析されてこの世界でも通用する形になるんだと思う。そうなると、現在習得不可能な物は、全魔法を使用した時に解放されるんじゃないかと予想できるわ」
そうルークに伝えた。
そこでルークも少し考える仕草をした後、
「さっき言っていたスキルの中ですぐ使えそうなのは……《広視界》かな。これってこっちの世界で使った事は?」
「そういえば、常時発動のはずなのにいつの間にか効いて無いシャ――――!」
もっと早く気付けよ……と、言いた気な呆れた顔をルークが見せた……。
「今、有効になったシャ――――!」
そう言った瞬間、
能力 :広視界…………聖眼獲得率80%
予想通りだな。
使用する事で有効になって行く様だ。
早速私も習得する。
使用した感じとしては、
「へぇ……これは凄いわね。魔法物質を捉えているのに、まるで見て居る様に再現しているわ」
と言う感じだ。
真横より少し後ろ位まで、まるで見て居るかの様な感じで認識できる。
しかも、目と同時に魔法物質の流れを別感覚で今まで以上に認識できる感じがする。
これは……すごく便利!
もっと早く試すべきだった!!




