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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第二章
42/138

42◆女神からの警告とゲルボドの冒険者登録

 神殿関係者が床に置いた水晶玉の様な魔法具は上に向かって光を伸ばし、背の高さは等身大位で半透明な姿、目の前の女より明らかに格上といった感じの、まだ若い雰囲気を持った女性の姿が映し出された。


『このような形でお話する事をご容赦下さい。今回は特に急ぐ事例なのものですから……』


そう言って、頭を下げてお辞儀した。

私達もそれぞれ軽く挨拶をすると、巫女は話を始める。


『女神様からまず伝えるように指示された件は、今後蘇生に関わる一切の魔法の使用を禁止するとの事です。禁を破れば、即ゲルボド様の存在を消去する必要があるとの事です』


正直な所、死者蘇生って大丈夫なんだろうか?

そういう考えも、実は持っていた。

前世ではフィクションだったものが、この世界では意外と実在するからだ。

考えられるのは、私の様な転生やゲルボドの様な転移によって情報が伝達している……又は、情報だけが何らかの影響で流れており、それを無意識に受け取った者が創作としてしるしている等だ。


 前世でも、死者を蘇生する物語は多く存在した。

しかし、何らかの副作用や思わぬ反動を受けて悲劇になる物語も多い。

が、この世界は魔法が発達しており、不死者等の魂を現世に保持している者も多い。

私の世界より、ゲルボドの世界の方がこの世界に近いので……大丈夫かなぁ? 的な気分でやったのだが……やはり駄目だったか!

まぁそれでも、一応理由は確認しておくかな。


「その理由を確認させて貰ってもいい?」


『はい、勿論です。今回の蘇生魔法の影響で【世界の壁】の一部が壊れる一歩手前まで行きました。全てゲルボド様の蘇生魔法の影響です』


やっぱりか。

異世界でも色々常識が違うね、当然だけど。


「シャ――――? 今までそんな事、聞いた事無いシャ――――?」


「それは以前の世界での話ですね? この世界には死んだ人間を元に戻す手段は存在しません。精々魂を仮初めの肉体に封じる事で現世に留められる程度です。それ故、今回はあるはずの無い蘇生魔法を使った影響で世界に狂いが生じました。その影響で壁の一部が壊れたのです。その補修には数年かかると予想されています。今後も蘇生魔法が使われた場合、本当に世界の壁が全て壊れてしまう可能性が出る為、使用した場合にはゲルボド様の消去も止む無し、との事です」


壁の修復に数年……か。

それは面白い情報を得た……。

世界の壁の修復と言うのは、壁を補強するか作り直すという事だろう。

それが解析できれば、世界の壁がどんなものか解る可能性があるという事だ。

理解すれば、そこを通り抜ける方法も見えてくる可能性が出て来る。

今は実力不足だが、まずはルークを【竜殺し】にする過程でレベルを上げまくり、その間に出来るだけ情報を集めておこう。

世界を渡る手がかりは少しでも多い方が良い。

これはこれで、ゲルボドに感謝かな。


 さて、ゲルボドの蘇生魔法は使用を禁じられたが、同時に異世界人である事を女神が認めた事になる為、そのまま人としての認定もされる事になった。


「手間が省けたシャ――――!」


と、ゲルボドは言っていた。

私としては一つ悔しい思いも抱いていたので、ついでなので言っておく。


「失敗した! たった一回の蘇生ならもっと機会を考えるべきだった!!」


無理な事は分かっている。

知らない副作用に対して、事前にどうこう出来る訳が無いからだ。

使ってみて初めて分かる事を、どうこう言っても仕方が無い。

しかし、ここで使わなかった場合を考えると……勿体無いとは思えてしまうのだ。

起きて欲しくは無いが、仲間の死に対して一回でも蘇生が使える保険の意味は大きい。

しかもその段階で壁を壊してくれるので、私が研究出来る可能性を大幅に先まで伸ばせる。

まぁ、言っても仕方が無い事だな。

うん。


 復活した爺は、指名手配される位の結構な大物だったようだ。

四十年程前に王城から重要な魔導書を盗んで消えた、指名手配犯らしい。

神殿と軍で様々なスキルを使い、今までの悪事を洗いざらい暴いてくれると約束してくれたのは有り難かった。

生き返した価値が……多少はあったかもしれない。




 ☆ ☆ ☆




 今後の方針はまだ決まって居ない。

しかし、ゲルボドが自由に動くには冒険者登録は必須だろう。

見た目がまんまリザードマンである以上、女神神殿からの認定証だけでは面倒は避けられない場合もあるだろう。

無意味に絡んでくるやからが間違いなく出て来る。

そこで、冒険者としての信用を掴んでおけば、面倒を回避できる可能性も高くなる。

それ故、冒険者登録は早い方が良い。

王都への出入りも楽になるしね。

そういう訳で、早速ギルドを探しながら移動する事になった。


 そして、またしばらく歩くことになって居るのだが、


「……城下街が大きすぎる……」


ゲンナリした表情で、ルークがそう言ってきた。

田舎育ちには、やはりきつかったか。

でも甘やかさない!


「王都なんだから、こんなもんでしょ」


「そうだシャ――――!」


自分の世界で、大きな都もいくつか行った事があるゲルボドも大丈夫そうだ。

まぁ、当然ミラはフラフラしていたので、先程ゲルボドによって強制的に抱えられている状態になっている。

これ以上口にしても同意は得られないと悟り、ルークは黙々と探し続ける作業へ戻った。

こればっかりは慣れだ。

まぁ頑張れ!




 ☆ ☆ ☆




 ようやく見つけた冒険者ギルドでは、当然ゲルボドの姿に騒然となる。

普通にリザードマンにしか見えないのだから、常識的な反応だ。

そのゲルボドと私が登録者用のカウンターに近寄ると、周囲の冒険者はやや警戒を、カウンター内の受付嬢はやや怯えた表情でこちらを見ている。

ゲルボドが腰の袋に手を入れた段階で緊張はピークに達したが、


「冒険者登録をお願いするシャ――――!!」


袋から女神神殿の認定証を出しながら、ゲルボドはそう言った。

……沈黙。

…………。

………………。

……………………。


「「「「 ハァアァァァァァァァ?!! 」」」」


一瞬にして場は騒然となった。

まぁ、当然だろう。


 登録自体は、何の問題も無く終了。

リザードマンに良く似てはいるが、リズーマンと言う獣人であるとすぐに受け入れられた。

そうなればもうこっちの物。

ゲルボドは時々挙動と言動がおかしい以外は、基本常識人だ。

逆にルークは、常識人なのに何故時々あんな挙動と言動をするのかと突っ込みたい、と言っていた。

それはともかく、こうなってしまえば後は時間の問題となる。

物珍しさに集まってきた冒険者達と、いつもの様に話しているだけですぐに馴染んでいった。


 私とゲルボドが、冒険者達相手に雑談と言う認知度アップ作戦にいそしんでいると、


「あの! 私も登録したいです!」


ルークに対して、ミラがそう言っているのが聞こえてきた。

まぁ、問題は無いかな。

身分証明としては有効だし、王都なら街中で受けられる雑用とかも、依頼として多数あるようだ。

持っておいて損は無いだろう。

ルークもそう考えたのか、許可を出している様だ。

私が口を出すまでも無いので、そのままスルーして雑談を続けた。

もっとも、ゲルボドのは本当に雑談だが、私は情報収集に重きを置いて話をしている。

まぁあれだ、気さくで楽しいオッチャン達が多くて実に気分の良い場所だった。

正直、思っていたより居心地が良さそうなので安心した。


 更に暫くの間、楽しく話をしているとミラの登録も終わった様だ。

ゲルボドの方も段々と飲みに行こうと言う話に発展しているので、ここら辺が潮時だろう。


「すみません、皆さん。私達は今日この街に付いたばかりで、これから人と会う約束をしていますので……そろそろおいとまさせて頂きますね」


営業用のスマイル全開で挨拶しておいた。

楽しいオッチャン達は快く見送ってくれたので、ゲルボドの件は第一段階を成功で終了だな。

これだけギルドで騒いだ以上、冒険者達には珍しい奴が来たと話が広がるだろう。

物珍しさはあっても、警戒を受ける可能性は下がる。

この調子で浸透させていけば、そうそう問題は起こらないだろう。

こうして私は満足しながら、シェリー達の居る屋敷へ向かった。

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