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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第二章
41/138

41◆爺(老魔術師)が邪魔なので引き渡したいんです

 王都に入ってまず思った事……予想よりも綺麗だな。

しっかりと整備された街並み。

とても太い石畳の道が、どこまでも続いている。

六爵領では領主館でしか見られなかった様な巨大な建物が、整然と建ち並ぶ様は圧巻だ。

重機も無いのにここまでやれるのは、やはり魔法の力がそういった物の代わりを果たせるからだろう。

通りは人で溢れ、前世の大都市で見られたような流れで人が動いて行く。

人が多くなるとやはりこうなるのか、そう思えて懐かしさも若干沸き起こる。


 まずは、シェリー達が入学するまでの宿泊先になる予定の、領主の親友という人の屋敷に移動する。

馬車の流れに乗って移動し、旅のしおりに描かれた地図を見ながら大通りから脇道へ入るとすぐに見つかった。


「私達はこれからしばらくはこちらの御屋敷でお世話になる予定です。皆様も当面はこちらでお世話になれますよう、お父様が一筆書いて下さっていますので、御用が終わり次第こちらに来て頂きたいのですが……」


ルーク、私、ゲルボド、ミラを見回した後、ルークの方を再度見ながら頬を染めている。

これからは忙しくなるんだから、精々お互いの気持ちを確認しておいてください。


「そうね、まずは用が終わったらこちらに顔は出すわ。実際に泊めて貰えるのかはそこで確認させて貰うわ」


そう言って、私はゲルボドを見た。

正直な所、ゲルボドは見た目がリザードマンその物なのだが、行動と言動がコミカルなので大半の人に受けが良い。

ただ、相手が貴族となると……正直反応が読めない。

嫌いな物は嫌いと、全く受け付けない貴族は多いと予想できる。


「領主様の一筆ってのにはゲルボドとミラは書いて無いでしょ。……正直、ゲルボドのインパクトは確実に大きいから、確定するのは取り敢えず会ってからにしましょう」


「そうですね……おじ様には私から先に説明しておきます。その上で実際に会って決めて貰うのが良いのかもしれませんね」


それが妥当な所かな。


「OK。それじゃゲルボドの件を取り敢えず終わらせて来るわ」


そう言ってから一度別れて移動した。


 取り敢えずの目的地は、この地区にある王立軍詰所に付随して存在する役所の様な場所だ。

シェリーが馬車を使用しても良いと言っていたが遠慮した。

これだけ人が多い知らない場所では、歩きの方が小回りが利く分都合がいい。

それじゃ、さくさく行ってみましょうかねぇ。 




 ☆ ☆ ☆




 久しぶりに人混みに紛れたが、流石に懐かしい感じすらした……。

そんな私の感慨深い感想とは、全く逆の感想を持つ者が若干二名居た。

王都は大きいので、移動距離は長い。

そして、人混みの為に中々速度も上げれない。

その為に、田舎育ちのルークやミラは既にグッタリしている。

ようやく目的に辿りついた頃には、本当に死にそうな顔をしていた。


「……ミラ、僕達はやったんだ! 目的を達成したよ!!」


「ルークお兄ちゃん!!」


基本的にボケは私とゲルボドの役目なのだが、今回は普段突っ込むルークが小芝居を始めた。


「アホな事やってないで行くわよ」


そう言って《アイテム》から、紙で出来た自作の大きな『ハリセン』で叩いておいた。

この紙についてだが……昔、大きくて質が良い紙が何故か村外れに落ちていた。

当時は住んでいるのが田舎過ぎて、この世界の紙についての基準が判らなかったので判断はつかなかったが、この紙は間違い無くこの世界ではおかしな物の様だ。

ゲルボドがこの世界に来た事を考えたら、当時この世界に転移して来た人間が他にも居たのかもしれない。

まぁ、流石に時間が経ち過ぎているので今更探しようは無いが、機会があれば会って見たいとは思っている。


 ハリセンでの突っ込みは、毎回スパァァァァァン!! と、いい音がする。

気持ちが良い音ではあるが、周りの視線が気になるので《アイテム》には仕舞わずに普通の荷物に入れておく。

さて本題に戻ろう。

ゲルボドの人としての承認はここでは出来ないのだが、大きな役所等はいきなり行っても門前払いを受ける可能性が非常に高い。

故に、近場で解決出来ない事を証明してから上へ持っていく必要があるとの事。


「これだから御役所仕事は!!」


と、つい口に出して文句を言ってしまった。

まぁ、目的は二つあるのでここでも問題は無い。


 もう一つの目的についてだが、早めに例の老魔術師を生き返して引き渡してしまいたい。

おそらくだが、例の五爵が裏で手を引いている可能性が高いので、さっさと引き渡して解明して貰い、シェリーや領主にこれ以上の手出しをさせない様にして貰いたい。


 蘇生に必要な神聖魔法陣と言う物は、私が渡した大きな布に描いてある。

ゲルボドが馬車での移動中に、一生懸命時間をかけて作成して居た。

灰も多脚小屋から引き出して、今はゲルボドが担いでいる。

ルークには今回の事は話していないので、ゲルボドが担いでいる荷物が気になったらしく中身を聞いていた。


「シャ――? 灰シャ――――!」


と、ゲルボドは素直に言っていたが、それが何の灰かは予想がつく訳も無く話しは終了。


 予想通りではあるが、ゲルボドの件はもっと上の役所で、《識別》を持った担当官が必要との事。

私がもう一つ用があると言って、軍の人間にも立ち会って欲しいと伝えた。

内容によるとの答えが返って来たので、


「私達は今回とある護衛任務で王都へ来ました。その際に強大な力を持った魔法使いに襲われました。確実とは言えませんが、その件について情報を得られるかもしれません。その証人として、軍の方にも立ち会いをお願いしたいのです」


担当官はその話を聞いて、隣接する軍詰所から二名を連れて来た。

OK、これだけ見て居る人間が居れば問題は無い筈。


「それではゲルボド、用意を宜しく」


「わかったシャ――――!」


そう言って、王都に入る時にゲルボド自身が装備していた金属製の拘束具を用意している。

次に、複雑な文様と文字の陣が描かれた布を広げる。

しわがあると正常に機能しない可能性もあるらしいので、私が《変換魔法》を使って綺麗にしわを伸ばす。

その上にゲルボドが背負ってきた灰入りの袋を置き、大きく開いて中身がほぼ露出する状態にした。


「それでは始めるシャ――――!」


そう言って、詠唱を始める。

かなり長い詠唱が続き、


「《帰魂》シャ――――!!」


そう唱え終わった際に、前回失敗した時の逆回しを見る様に、爺が灰から再生されて行く。

準備の為に《フルブースト》を発動させて待つ。

しばらくして再生が終わると、そこには見覚えのある爺が立っていた。

爺は暫く茫然としていたが、ゲルボドを見る目が力を帯びて、急いで魔法を唱えようとする。

もっとも、既に臨戦態勢が整っている私のボディブロー一発で呼吸困難に陥り終了。

ゲルボドが、淡々と鎖で拘束して行った。

私とゲルボド以外には単純に拘束具でしか無い為、もう逃げる事は出来ないだろう。


「証人として軍の方にも来て頂きましたが、このように犯人の一人の復活を確認して貰いました。しっかり見て頂けましたね?」


私ははにっこりと笑って確認を取ってみるが、ゲルボド以外は全員茫然としている。

それはそうだな。

蘇生魔法なんて、私もゲルボドに聞くまで知らなかったし。


 しばらくしても茫然としている担当者や軍人さんに再度声を掛けようとした瞬間、キィ――――ンと言えばいいのか、甲高い音がした後、幾つか奥の部屋で騒ぎが起こった。

何か有ったのだろうかと少し考えているうちに、大きな音を立てながらそちら側の扉が勢い良く開かれた。


「ここに『ゲルボド』と言う方は居ますか?!」


おそらく女神神殿の聖職者だろう。

どことなく清楚と言えば聞こえは良いが、結構高価そうな制服を着た女性が飛び込んで来て、即そう聞いてきた。


「シャ――――?」


名前を呼ばれたゲルボドが、可愛く首を傾げながら手を挙げた。

相変わらず図体ずうたいはデカいくせに可愛い奴だ。


「貴方ですか……。女神様から神託が下されたとの連絡がありました。これより、王都における最高責任者である巫女様から通達があります。心して聞いて下さい」


そう言うと、水晶玉の様な魔法具を床に置いた。

……少しそれを見せて欲しい!

出来れば《サーキットアナライズ》を使って解析したい!

まぁ、実際にはそんな無茶は言わないが……なんて面白そうな物を私の前に置きやがるんだコン畜生!!

……ふぅ、ちょっと心の中で取り乱してしまった。

この女の話から、遠隔での会話が可能な魔法具って所だろう。

後でどこかで調べてみよう。


……さて、何を言われる事やら……。

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