39◆迷宮の仕様とルークへ希望する迷宮
私達が得たスキルである《迷宮創造》と《迷宮の主》は、当然だが迷宮を作成して支配するスキルだった。
私はMPに余裕があるので、移動型迷宮を作成してみた。
作成したタイプはランダム転移型。
決めた理由はなんとなくだ!
どうせ破棄する予定だし!!
一応言っておくと、製作した迷宮はこの旅で使う予定はない。
シェリーとミラはまだ気にしてないようだが、ラナとルルが迷宮に若干恐怖心を持ってしまっている。
寝泊りはいつもの小屋で十分なので、放置の方向で。
さて、迷宮を作成する際に理解できる事なのだが、作成には結構な量のMPを消費する。
しかし、破棄するには少しのMPで済むようだ。
おそらく、中心となる部分を破壊して、自然崩壊させてでも居るのだろう。
迷宮の作成に必要なのはMPと魔法物質の二つ。
一回に全て必要な訳ではなく、発動させて数十日かけてMPを注ぎ込み、魔法物質を収集しながら作るのが普通っぽい。
私は今後やりたい事を考えて、一気に作れないかやってみた。
MPは余裕である。
ただし残りは相当少なくなるが、問題は無いだろう。
次が私的ポイントだ。
私の魔素を直接流し込んでみた。
結果、恐ろしい速度で迷宮が完成した。
よし!
いける!!
私の考え通りにいきそうだ。
作成された迷宮に対して、出来る事を確かめていく。
《迷宮創造》では迷宮の作成と破棄、迷宮内の構造材質や発生する魔物の大まかな種族傾向等が決められる。
予想はしてたが、結構大雑把だな。
《迷宮の主》は迷宮内にマスタールームを作成したり、その部屋へマスター用扉を条件に合わせて遠隔地へ作ることが出来る。
固定迷宮はマスター用扉も固定で設置、移動迷宮は設置では無く、毎回簡易扉を開く様だ。
発生した魔物は《迷宮の主》の能力である《迷宮の虜》で支配して使役できる。
使役すれば命令ができ、使役しなくても迷宮の主に対して攻撃する事は出来ないので安全らしい。
迷宮内への宝箱の設置(罠や冒険者に対する餌)やその中に入れる為のポーション類の自動生成等も出来るようだ。
ポーションを自動生成か……。
作れる物のレパートリーを増やす事が出来ないかな?
錬金術と似たような事をやっていそうなので、これには興味があるな。
因みに、このアイテム生成は魔法物質を消費して作られる。
私達の魔法等は一時的な変化をさせているだけだが、迷宮が行っているのは永続的な変化と言える。
これは、世界創造の技術の末端と言える物だと考えられるので……いずれ解明したい事の一つだ。
魔素の特性の一部を理解する事にもなるからだ。
迷宮の入口はこの世界側に存在するが、迷宮自体は世界の狭間といえる場所にあるようだ。
この世界の外にある魔素の海側に迫り出して存在し、この世界の壁に張り付いているらしい。
魔素は魔法物質の集合体であり、高濃度の状態だと触れた物質を破壊してしまう。
御存じの通り、許容量を超えて使用した前世の肉体が崩壊したのはこの性質の為だ。
それ故、前世で私達《魔素の泉》所有者は、少しずつ量を増やして耐性を付ける訓練を日々行っていたという訳だ。
話を戻そう。
迷宮は魔素に浸食され無い為に、魔素の海側には強力な防御壁を構築する。
この壁は、世界の壁並みに強い。
それ故、殆ど魔法物質が中へ取り込む事が出来ず、僅かに浸食した分は壁の維持に使う為に相殺される。
結果、内部で使う分はこちらの世界から吸収する事になる。
この特性により迷宮がある場所には魔法物質が薄くなり、周囲には魔物が住みにくくなる為に安全になるのと同時に魔法の効果も相当低下する。通常の三割程度との事だ。
これを知って考えた事は、私達の村周辺にも高確率で迷宮が有ると言う事。
魔物が少なかった理由は、それが関係している可能性が高い。
次に、迷宮内では多少はマシになるが魔法効果は五割~八割程度、長い時間迷宮が存在すると五割で安定するようだ。
私としては、これ以下になると魔物の生命維持が出来なくなるからではないかと考えている。
予想では、五割では生存可能、三割では生存不可能。
この差で、《迷宮の虜》状態では無い魔物が、迷宮外へ逃げる事を防いでいる可能性もある。
取り敢えず、私は固定型迷宮が作りたい。
その為にも理由があって、ルークには是非とも移動型を作らせたいのだ。
「ルークは作りたい迷宮の方針とかはある?」
「正直な所、僕達がわざわざ迷宮を作る必要性が分からないかな」
私の質問に、予想通りそう返してきた。
よし、このまま誘導出来そうだ!
「迷宮と言っても、人間にとって危険な場所を作る以外に色々使い道がありそうよ」
そう言って説明した。
この情報は、老魔術師の部屋にあった本から得た情報も加味されている。
昨日、外に出したままの馬用に金網を設置した時、多脚小屋を出してそれらしい文献や記載物を探しておいて、多少は読んでおいたのだ。
まず使い道の一つとして、私達の生まれ育った村に設置する事だ。
あそこは殆ど魔物が居ない、比較的安全な地域ではあった。
その理由は、魔法物質が少ない土地であった為だ。
しかし、その理由が隠された迷宮の存在であるなら、別の迷宮を作る事で魔法物質の供給量を削げるはずなのだ。
今は安全でも、もし迷宮が見つかった場合には絶対に安全とは限らない。
対処の為に、今から手は打っておいた方が良い。
昨夜読んだ情報の中に、主の居ない迷宮の末路について多少記述があった。
これだけ長い間魔物が少ない時期が続いている以上、人間の主である可能性は低い。
そうなると、主が居ない、又は不死の主が存在する……辺りが可能性としては高くなる。
迷宮は主の居ない状態でも大抵数百年は持つらしいが、寿命を迎える物も当然ある。
そういった迷宮は魔法物質の吸収が無くなり、中に居た魔物が外に出て来るらしい。
これだけ放置された迷宮だと、長い年月で強化された個体が多数居る可能性が高く、それらが外へ出た場合は大惨事になる。
もう一つの可能性である不死者が主の場合は……正直、何を考えるか読めない。
長い年月を存在できる為、いつ行動を起こすか分からない為だ。
溜め込んだ配下を大量に引き連れて行動を起こされたら、ひとたまりも無く村は消滅するだろう。
そういった可能性を考えて、村の安全の為にも作っておいて損は無いだろう。
それに加えて、《迷宮の主》の能力で扉を作れば遠くからでもすぐに村へ帰れる。
問題は、このタイプの迷宮は固定迷宮と呼ばれる物で、遠隔地用扉も固定する形で設置が必要となる。
これから頻繁に移動する事になる私達では、有効に使うのは難しいだろう。
そこでもう一つのタイプの迷宮、移動迷宮が役に立つ可能性が高い。
こちらは大きさ三m以上の様々な形や材質の扉が移動するものらしい。
資料によると過去に発見された物は、直径十m程の竜巻を纏いながら空をゆっくりと移動するタイプ、波打ち際を陸から五m程度を保ちながら満ち引きに合わせて移動するタイプ、世界各地に突然転移しながらランダムに現れるもの等があったとの事。
この移動迷宮タイプでは、迷宮のマスター用扉を常時設置出来ない。
場所が移動する為なのか、毎回位置確認を行ってから簡易転移門を作成して移動、戻る時は前回簡易転移門を作成した場所に戻れるとの事。
ただし、簡易転移門は本人専用である。
世界に多いのは圧倒的に固定迷宮らしい。
理由として、移動迷宮型が移動する場合は世界の壁に開けている穴の位置自体を移動させている。
その為、迷宮の成長に必要な魔法物質をかなり消費しているので成長が遅い様だ。
その為に、大抵は特別な目的が無ければ成長が見込める固定迷宮を作る傾向にある。
スキル習得に必要な年数は天才的な者で四十年程度と言われているらしいので、老魔術師が腰を据えて……と言う流れも多いのではないかと予想できる。
ルークにお勧めした移動迷宮が役に立つポイントは二つだ。
移動迷宮のタイプの中に、転移型迷宮が存在する。
前述のランダム転移している物がこのタイプなのだが、ランダムだけでは無く、主の居る場所に転移を繰り返すタイプ等にもできる。
私が今回ルークに作って欲しいのはこのタイプだ。
簡易転移門ではマスターのみしか転移できないが、転移型の利点として、簡易転移門から転移した地点に迷宮ごと戻る事ができる。
しかも、転移型のタイプを詳しく調べてみないと判らないが、直接自分の居る位置に呼べるタイプもありそうだ。
迷宮の主と許可の有る人物は、入口から入る時点でマスタールームへの直通扉を選択式に選べるらしいので、迷宮自体に入る必要無くマスタールームへ行く事ができる。
すなわち、移動させた迷宮に皆でマスタールームへ入れば野宿する必要が無くなる。
もう一つの利点は、固定迷宮の遠隔地用扉を移動型のマスタールームへ設置する事で、私達の故郷の村へ直接帰る方法を確立できる……可能性が高い。
移動迷宮の移動は世界のこちらから見ると扉が動いている様に見えるのだが、世界の壁という人間の認識では表現が難しい存在からすると、迷宮は動かずに存在しながら接続する場所を変更すると言う感じらしい。
詳しい解析はいずれという事で……。
今の私ではそうとしか説明できないんですよ!
そういう訳で、固定迷宮の遠隔地用扉の設置条件には引っかからないはずなのだ。
もし出来なかったら、仕方が無いから王都にでも設置する方向で考えておこう。
因みに、移動前に主が居ない迷宮が目の前に有るので、念の為支配出来ないか確認した所、主を失っている迷宮の支配権を得る事は出来るらしい。
しかし、条件は《迷宮の主》の熟練度による支配権の奪取の様だ。
ここまで育った迷宮を得るのは相当な熟練度が必要らしいので、現状は全く歯が立たなかった。
残念。




