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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第二章
38/138

38◆迷宮からの脱出とその後の処理。そして《迷宮創造》の獲得

 【竜殺し】になる為の時間的猶予は三年。

出来れば二年程度でどうにか出来ないか、と考えてはいるが……そう簡単には行かないだろう。

因みに、三年間はシェリーに縁談が無い、とルークに言ったのには根拠がある。

貴族は、子供の頃から婚約者が決められる事が多い。

大抵の場合は、自由な結婚など出来ない。

しかし、各領の継承権第一位に対しては、逆に正式な婚約は学校卒業まで認められ無いそうだ。

例の、余計な事ばかりしてくれて居る初代国王が、学校設立時に決めた法らしい。

領主はシェリーの幸せの為に、勝手に婚約者を決める気は無いと言っていた。

この三年間に自分で選ぶ事が有るのならば、余程の事が無い場合はそれを尊重するとの事。

この発言により、シェリーが学生の間に他の結婚相手候補を選んでしまわない限りは大丈夫だという事だ。

まぁ、むしろ今の問題は、ルークとシェリーがお互いの想いを確認して居ない事だが。

私的には心配はしていないが、ルーク的にはお互いの気持ちを確認する事は重要な事だ。

しかも、何と言って確認すれば良いのか分からない、との事。

もしこちらの勘違いで、結婚なんて全く考えられないと言われたら暫く立ち直れないだろうから……、気持ちはわかる。


「シェリーはルークに前から好意を持っていたから脈はある筈よ。まぁ、残りの旅の間に私の方でも気持ちを確認しておくわ」


そう言っておいた。


 みんなで無事を喜び合った後、まずは場所の移動をさせる。

当然だが、ここは移動型迷宮の中。

しかし、当の主が死んでしまっている。

正直な所、何が起こるか分からないのだ。

まずは、ルークが馬車を《アイテム》に入れた。

一緒に引きずり込まれた馬達は、残念ながら瀕死で倒れて居る。

《アースシールド》の範囲に入って居た為、敵に殺される事は無かった。

しかし食糧となる物が無かった為、水だけはミラが最低限の量を馬車から持ち出して与えていたらしいが衰弱が酷い。

当然だが、馬は相当重い。

この状況の馬を外に出すには、私の《フルブースト》を使用しても厳しいだろう。

鉄は大量にあるので、《錬金術》を使用して何か荷車的にぐるまてきな物でも作るか?

そう考えていると、


「何を悩んでるシャ――――?」


流石ゲルボド。

能天気にそう言いやがりました。

そして……ゲルボドが当然の様に《快癒》の魔法を使った……。

馬が元気に立ち上がる……。

はぁ……?

回復魔法で衰弱が治るとか、聞いた事が無いんですが……?


 ゲルボドの説明で、ようやく謎が解けた。

ゲルボドの魔法でも下位の回復魔法は傷を治すだけだが、《快癒》の効果は失った血液すら再生する脅威の万能魔法らしい。

どうやら魔法物質が変化して色々補っているらしく、一時的にでも元気に動ける程度には回復してしまった様だ。

効果時間は状況によるが、大抵一日程度は普通な状態になるらしいので、その間に食事を摂って補う事が必要だとの事。

この際には、栄養素が魔法物質と融合して元通りになる為、素材となる栄養素さえ摂れればそのまま健康な体に戻る様だ。

馬達は空腹の為に、外へ出ると一気に食事を取りに草の生えた場所に走って行ったとの事。


 ルークを先頭に、シェリー達を先に出して小屋の用意をさせる為に送り出す。

私はやる事が有るので、少しこのまま残った。

やるべき事とは、このじじいの素性が分かる可能性がある物の確保だ。

爺の死体自体も収納してもいいのだが、何となく嫌なんだよなぁ……食べ物と一緒に入ってる感じがして。

ちなみに、魔物の死体は食べ物や素材だ!!

そう思うと、何故か気にならない不思議。

そこら辺にある本や様々な素材&魔法具を全部持って行きたいが、流石に《アイテム》へ放り込むのは数が厳しい。

ちょっと悩んだが、結局今まで一度も使っていない、多脚型の小屋を出して片っ端から放り込んだ。

最後の問題は、やはり爺の死体だ……。

《アイテム》にも小屋にも入れて置きたくは無いなぁ。

そこで、ゲルボドがとんでもない事を言い出した。


「魔法さえ使えなければ雑魚だと思うシャ――――! 生き返して馬で連れて行けばいいシャ――――!」


……生き返す?

どうやって……?


 驚愕の事実。

ゲルボドの魔法には、蘇生魔法があった!

ただし、二種類ある蘇生魔法で、今すぐ使えるのは下位だけだそうだ。

確率は50%。

それに失敗すると、燃え尽きて灰となって崩れるとの事。

そこから更に蘇生するには上位の蘇生が必要で、この魔法の使用には長時間の儀式か時間を掛けて作成する神聖魔方陣を使用するので、すぐには出来ないとの事。

上位魔法の成功率は95%……。

ここで生き返ればそれでよし、失敗したら灰になるから持ち運びに抵抗が無くなって丁度いい……。

よし! それで行こう!!


 結果、失敗しました!

面倒なので、この灰もまとめて多脚小屋へ放り込んだ。

よし、一仕事終わった。

外へ出ると、ルークがこちらを見ながら若干渋い顔をしていた。

絶対に何かをやって居たといぶかしんでいるな。

だが、敢えて気にしない!

突っ込まれたら適当に流す!!

それだけです!!!


 用意してあった小屋へ入った。

既にお風呂も沸かし始めて居たので、沸くのを待ってから皆で順番に入る。

馬達はまだまだ元の状態に戻れるほどは食べて居ないらしく、食事を続けているのでもう暫く放置する。

馬の数は当初の四頭に加え、襲撃者が乗って来たらしい一頭が放置されて居た為増えている。

簡易ゴーレム分が足りなかった事も有り、折角なので連れて行く事にした。

そうなると夜に襲われたりしない様に策を講じる必要があるので、ここは再度ゴーレムの鉄と持って来た魔石を使用して防護用の金網を作成する。

動物園とかにある感じで、隔離する様な雰囲気だ。

魔石の使用目的は、《アースシールド》と電撃系魔法を付与する為だ。

結構な出力なので、三重にして真ん中だけが電撃を放ち、間違ってれられないようにする。

金属製の外枠もしっかり作って、金網の小屋が完成した。

中々の力作だ。

迷宮内部での魔法の熟練度上昇が、ここに来て製作品の幅に大きく影響しているのは言うまでもない。

その日は食事をした後は、緊張がようやく解け、みんなすぐに寝てしまった。

私も流石に疲れた。

少しだけ本を読んでから寝よう。

おやすみなさい……。




 ☆ ☆ ☆




 翌日の移動は順調に進み、ある程度移動した段階で追加の襲撃は無いと判断した。

まぁ、あっても迷宮前と同様の戦力なら、最早いくら人数が居ても相手にはならない。

結果だけを言えば、迷宮の敵はそれ位美味しい敵だった。

攻略した中では一番弱いルークですら、冒険者ランクが二~三上の実力に上がっている。

たった数日で、脅威のレベルアップだ。

今回の件で判った事だが、倒せるのであれば強敵と戦う方が上がり方は圧倒的に高い。

今後は、強敵が大量に居る場所を探して行く事になりそうだ。


 敵の襲撃も無いし、《自動MP回復》を働かせる為にも……まずは気になって居る事をやってしまいたくなった!

そう、《迷宮創造》の習得だ!!

《魂の回廊》を有効にすればすぐに双方に共有化されるはずだが……流石に不味い。

私のスキルの中には、レイクの勇者専用スキルを幾つか習得してしまっている。

勇者の邪魔になるから、使わない様にと言えば問題は無いのだが……。

ルークは昔から勇者に憧れを持って居る。

レイクの事を知れば、勇者の役に立つ事がしたいとか余計な事を言い出しかねない。

他国では魔族の活動がそろそろ活発になっているらしいし、レイクは大忙しとなるか、既になって居るだろう。

これからはシェリーとの事に集中して貰いたい現状で、余計な事は考えるべきでは無い。

そして一応の懸念として、このスキルは私が調整中だった力を破棄させられた原因でもある。

下手に拡散させると、女神側からの干渉が無いとは言えない。

当面は、私だけが持って居た方が無難だ。

問題が無さそうなら、魔王が死んでから育て始めようと考えてはいる。

なので、今はまだ秘密だ。


 私の考え自体を伝えられないこの現状で、ルークが、


「こんな時くらい、《魂の回廊》を有効にしたら?」 


と聞いてきた。

流石に忘れて無かったか……。


「断る!」


まぁ、それだけ言って断ったが!

肝心のスキル習得だが、ルークから《迷宮創造》の習得はすぐだった。

確率は相当低かったので、運が良かったかな。

ルークの方は多少手間取ったが、迷宮を持っていない状態で使える《迷宮の主》の能力は使用MPも少ないので、私が乱発してもそれ程負担になる事も無く終了した。

これで準備は整った。

迷宮かぁ。

どんな事ができるか楽しみだ!

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