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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第二章
32/138

32◆迷宮五層:私と鶏肉さんの出会い……楽しみが増えました

 五層で構造材が変化した。

洞窟の様な見た目、その癖材質は金属質なのだ。

この階層の魔物は鳥系の魔物だった。

鳥かぁ……………、焼き鳥なんてあんまり食べてないなぁ。

育った村の家畜は豚と山羊位だったし、ルークがお手伝いに行ってた猟師さんも基本的に鳥は狩って無かったのでほぼ食べて無い。

六爵領の街でもエルナリアラビットが結構多く出回っており、鳥は高級品に分類されていたのでほぼ食べなかった。

しかし思うのだ……私達、もう結構稼いでない? と。

ちょっと位良い物を食べても、バチは当たらないと思うんだ!


 さて、ここに出て来る鳥達は基本的に猛禽類っぽい。

出来たら鶏っぽい物が食べたいんだけど……こいつら美味しいかな?

魔法物質で活性化してるから、普通に美味しくなっている可能性は高い。

うん……外に出たら焼き鳥だな。

それにしてもこの階層の魔物は、ふくろうタイプ等はまだ何とかなって居るが、鷹や鷲等のタイプは一度すれ違うと壁にぶつかりながらUターンしてきたり、何とか上手く地面に降りてから再び飛び上がって襲い掛かって来る。

ハッキリ言えば特性を生かせていない。

結果、ゲルボドが盾を駆使してやり過ごし、私はその陰で《アースシールド》込みで回避。

反転に手こずっている相手に魔法連射。

お手軽に食材が手に入って居る。

美味しすぎる敵だ!

こんな奴らばかりだったら良いのにね。


 いつも通り、ある程度の間隔で現れる魔物と二十戦以上戦った。

そしてついに鶏肉が現れた!

体長二百五十cmの鶏がここに居る!!


「あれは不確定名:コカトリスだシャ――――!」


ゲルボドがそう言ったので《識別》。


魔鳥族:コカトリス:男 LV32

特殊情報:《石化魔力》《迷宮の虜》


中々レベルは高いな。

後、雄かぁ。

……どうせなら卵も欲しかったな。


「ゲルボド、待った。それ確定名だろ」


「シャ――――?」


ルークが突っ込み、可愛く首をかしげながらゲルボドがクエスチョンマークを出している。

確定とか不確定とかどうでも良いんです!

この肉が美味いかどうかだけが問題です!!


 取り敢えず、まずは狩ってからにしよう。

問題は、特殊情報に書かれている石化だろう。

ゲルボドは知らないが、私やルークではまだ治す魔法が無い。

どの攻撃に石化があるか判らないが、出来るだけ近寄らない方が良いだろう。


 コカトリスは一匹だけだが、とても危険な相手だと予想される。

用心しながら間合いを詰めて行くが、コカトリスはどうやら自分からはあまり攻撃しないタイプの様だ。

こちらを悠然と眺めながら、様子を見ている

《危険感知》がガンガン鳴って居るから、やる気は十分っぽいけどね。

そして、更に言えば魔法物質の流れがコカトリスから、タイミングを計る様にユラユラと見え隠れしている。

属性的に言えば当然の様に、土属性の石系統に近い。

流れを見ると、尻尾と嘴、そして眼に流れる動きが目立つ。

因みに、尻尾と言うのは本当に尻尾だ。

全体的に鶏なのだが、尻尾だけ爬虫類の様になっている。

そして遂に魔法物質が体外に現れたと思った瞬間、一気に眼に集まるのを感じた。

予想はしていたので、目を逸らしながら肌が出ている部分を隠す。

そこにルークが、私の前に立って射線を出来るだけ遮る。

自分もしっかりと、目を逸らしている様だ

何かまとわりつくような感覚が過ぎ去るのを感じる。


 魔法物質が通り過ぎたのを確認しながら、まずは敵と自分の状況を確認する。

コカトリスは特に動く様子は無い。

そして、私の身体は問題無く動く様だ。

服等に魔法物質の残滓ざんしが石化して膜の様に残っているが、それもすぐに霧散する。

ルークも同じ様だ。

そしてゲルボド……いや~、何というか……。


「シャ――――? 流石コカトリス、石になったシャ――――!」


悠長にそんな事を言っております……。


 ゲルボドの姿は右手と下半身が石になり、現在もどんどん石化範囲が浸食している様だ。

とにかく最善策を考える。

取り敢えず、ここで戦闘不能状態になっても死ぬよりはマシだ。

石化の進行さえ止まれば、王都で高額の再生の魔法さえ使用して貰えば完全に元に戻れるはず。

一気に浸食が進行している部分で切り離すか?

いや、現在の進行位置で切断すれば、出血でショック死の危険がある。

浸食部の少し上の断面を、一気に焼いてしまってから分断するか?

……私の実力でそこまで上手くやれるかは怪しい。

そう思った瞬間、ゲルボドが魔法を使う時に詠唱する、意味が分からない言葉が聞こえる。


詠唱魔法:神官魔法(異世界)…………現在取得不可能


最後の名前だけこちらの世界の言葉で、《快癒》と唱えた。

音自体に意味があるのか、こちらの言葉に翻訳するのが難しいのかは判らないが、最後だけこちらの言葉なのが逆に違和感を感じるが……気にしないでおこう。

ゲルボドが魔法名を言った瞬間に石化していた部分が発光し、次の瞬間に魔法物質が弾け飛ぶ。

そこには、何も無かったかのように立っているゲルボドがいる。

それにしても、魔術師魔法と神官魔法とか、職業で分類されているのに複数の魔法を使えるのか……。

普通に前衛としても優秀なのに、意外と芸の幅が広いなゲルボド。


 さて、石化は一先ひとまず何とかなったようなので、鶏肉コカトリスをなんとかしよう。

対応策として、視線を複数人で受けない位置へ移動する。

私は距離を取ったまま現在の位置、ルークとゲルボドは左右に分かれてコカトリスを挟む様にしてT字を描く位置に移動する。

視界に入るのは一人だけにして、前衛のどちらかは死角から攻撃できる位置取りが出来る。


 ルークがゲルボドに聞いた所、《快癒》の魔法はあと五回使える様だ。

しかしそれに頼るのは危険だ。

毎回、同じ結果で収まるとは限らないし。

出来るだけゲルボドには攻撃が行かない方が良いが、ルークは距離が近いしどうしても近接攻撃に対応する為、常に敵を見ている必要があるので一点集中されるのは危険も多い。

一番の理想は、視線のタイミングを盗めれば、私の魔法で発動をキャンセル出来そうではある。

一応狙ってやっては見るが、成功まで何回か必要だろう。

それまでに大きな損害が出ない様に祈るしかないな。


 ゲルボドは盾をやや高めに上げて、石化視線の際に眼への射線を隠せる様に警戒しながら攻撃している。

ルークは結構攻めの姿勢で頑張っており、今はこちらを向いていた鶏肉さんへ《ファイアジャベリン》⇒《ウィンドカッター》⇒足を払うように剣を振りぬく⇒《アイスジャベリン》での連続攻撃を繰り出した様だ。

ここで、ルークの方へ向きながら眼に魔法物質が集中する。

ルークは視線を敵から外しながら、回避スキルの《ダブルステップ》により一気に位置を変える。

二度のステップで私から見て奥の方へ90度移動してから体勢を立て直す。

しかし、鶏肉は再度石化の視線をルークに向ける様だ。

このまま追撃させるのは面白くないので、《ショートカット》に入って居る単体魔法を全部撃ち込んだ。

結果、石化の視線の魔力が霧散。

それが気に入らなかったらしく、今度は私に向かって視線を向けて魔力を貯め始めた。

しかし、ここで意外な結末となった。

そこまでタイミングを見ていたゲルボドが、狙いすました一撃で首を刎ね飛ばした。

ナイス!

そのまま少し吊るせば、血が抜けて上手く締められた感じになるはず!!


 戦闘が終了した事を理解したルークが、ゲルボドでは首刎ねがそれ程出来ないと言っていたのに、これだけの強敵によく発動したね、と聞いていた。


「今回のはスキルじゃなく、単純に当たり所が良くて落ちただけだシャ――――!」


だそうだ。


血抜きをしたい所だが、時間を無駄にするのは不味いので、即《アイテム》へ切り離された頭ごと投入。

これだけデカい獲物ならしばらく食べられそうだ!!

因みに、死んだ瞬間から石化の魔法物質の活動は感じられなくなったから、食べても石化とかしないよ!

食べるのが、凄く楽しみです!!


 その後も雑魚は沢山居たが、特に強敵に会う事も無くこの階層は終了。

居る位置は中途半端な位置だったが、やはり鶏肉さんがボスだった様だ。

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