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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第二章
30/138

30◆迷宮三層:ある意味最凶の敵……カオススライム登場

 サイクロプススケルトンの居た部屋は、流石に骨が邪魔で小屋が出せなかった。

魔物の死体等は、しばらくすると迷宮に吸収されるらしい。

魔法物質の流れを見ていると、ゆっくりだが迷宮の壁に流れている。

迷宮の魔物がどう発生しているのかは知らないが、死体から再吸収している可能性は高いようだ。

魔法物質の含まれない部位は残るのかと思ったら、スカスカになった上で崩れ、そのまま壁材に吸収されていく。

壁の材料にも使われているのかもしれない。

問題は、骨等の固い部位は若干の時間がかかるようだ。

即ち、このデカい骨ではいつまで掛かるか分からないので、もう少しだけ進む事にした。

ちなみに何かに使えるかもしれないので、骨を全て《アイテム》に入れておこうかと思ったらが、骨の名前毎に収納場所が別れて酷い数になった。

流石にアイテム数の二百五十六個縛りがキツイので、大きい骨を数か所だけ持っていく事にして後は放置する。

多少進んだ位置で下への階段と、その近くに丁度いい部屋が有ったのでそこで小屋を出して睡眠を取る。

魔素供給用の魔法具は馬車に付いて居る為、元から付いている《アースシールド》の魔法具だけ作動させる。

これは十二時間の警戒時間と、攻撃された場合に数分間の強化《アースシールド》が作動する。

戦闘準備するには十分な時間が稼ぐ事が出来るので、今はこれで問題ない。

寝る前なので軽く食事を摂ってから寝る。

MPを完全に回復させてから、あまりお腹は減っていないが、もう一度軽く食事を摂って準備を整えた。


 第三層の魔物は魔法生物系だ。

かなり色々と混在している。

ゴーレムが多く、石か鉄製が多い。

鉄は正直有り難い。

魔法物質を多量に含む金属なので、私の《付与魔法》で色々加工できる。


 他には合成生物系のキメラ、二~四種類の生物が融合した魔物で素材ごとに特色が違う。

こいつらの嫌な所は、素材が違う為か、《アイテム》内でスタックしないのだ。

一応《アイテム》に入れていくが、後で入りきらなくなったら破棄する方向で。

それらを二十戦ほどこなした後に会ったのは……スライムだった。

なんと表現すればいいのだろう。


スライム族:カオススライム:女 LV28

特殊情報:《混沌の結晶》《迷宮の虜》


まさに《識別》した通り、混沌としていた……。

形は、ほぼ真ん丸。

外側は黒っぽい半透明な、見た目は寒天系のお菓子に見えなくもない。

しかし、その内側は本当に混沌としている。

様々な色が混じっては内側に沈んでいき、内側から吐き出されたかのように突然現れたりもする。

捻じれ、渦巻き、急に色を変える事もある。

まさにカオスな感じの中央部分と言える。


 私の認識ではスライム=雑魚、まぁ前世のRPGの印象が強いからだが。

ゲルボドの世界のスライムも、強いものも居るがそこまで戦い難い奴は居なかったとの事。

では、こいつはと言うと……。

余りにも酷過ぎる敵だった!

ルークとゲルボドが、剣で斬り刻む。

切り裂く度にすぐに戻る……。

どこを切っても効果が無いので、コアになる物が無いか探す。

内部の混沌とした部分にも、特にそういった何かを発見出来なかった。


「水分多いし、炎で乾燥させてあげるわ!」


そう言って私が火炎魔法連射、ゲルボドやルークも撃ちまくった。

効果無し。

逆に氷魔法を使う。

氷の魔法自体は、水属性魔法に普通に存在する。

しかし、今回使ったのは水と風の変換魔法である、変則氷属性を使う。

風魔法で発生させた真空中に液体を入れておくと、気化熱で熱が奪われる事により氷が出来る。

この氷を真空ごとお見舞いしたのだ。

で……効果なし!!

その後も各種ダメージ魔法を撃ち込みまくったが、スライムは全ての魔法を無効化する。

こいつ、無敵なんじゃない……?


 考えられる限りのダメージを与える方法は試した……何この無理ゲー……。

クリア不可能です。

たまに攻撃してくるが、ルークもゲルボドも余裕で回避できるので全く怖くはない。

なのに倒せない。

完全に、嫌がらせの為に居るとしか思えなくなって来た。

《識別》で見える情報が増えたら何か情報があるのかもしれないが、見えないものはしょうがない。

敢えて言うなら《混沌の結晶》が怪しい位か。

混沌と言うくらいだから、弱点又は効く属性が変化してるのかな?

それに賭けてとにかく効くまで撃ちまくってもいいが、ここでMPを使い切ってしまうのは不味い。

まだ今日は全然進んでいないのだから。


 こいつの困った所は、攻撃速度は遅いのに、移動速度はかなり速い事だ。

球なので、思いっきり転がってくるんですよ……。

粘着質ではなく、本当に寒天みたいな感じだ。

攻撃の時だけ一部変形して、ウニョ~って感じに伸びてくる。

振り切る事が出来ないので、他の魔物との戦闘の時に邪魔になってしまうのが問題だ。

どうしたものかと思案していると、ルークが《スティールMP》を使った。

私としては、流石にMPを吸うのは躊躇われていた。

MPがあるか判らないし、下手したらこっちが減りそうなイメージなんだよね、混沌の言葉の響きで。


「スライムにMPなんてあるの……?」


一応、ルークにはそう聞いてみた。

結果は吸えたとの事…………。

弱点が見えた!

そして、二人で吸いまくった結果……気絶したらしく、動かなくなった。

私は明後日の方向を向いて、


「強敵だったわ…………」


そうつぶやいた。


 それにしてもこいつ、面白いな……。

正直にそう思う。

《混沌の結晶》って言うのが怪しい。

その能力を取り出すなり、抽出するなりできないだろうか?

あの無効化能力はすごかった。

何とか解析してみたい。

そう思っていると、ルークが剣で切り出した。

まぁ、気持ちはわかる。

放置したら不味いものではある。

私としては持ち帰りたいのだが、この大きさを持ち運ぶのはきつい。

ちなみに、直径一mの球だ。

……そういやこれ、生物なのか?

普通ならそうだ。

ただ、魔法生物の階層にいる。

《混沌の結晶》と言う、怪しい情報も持っている。

生物的なゴーレムの可能性はないか?

色々考えた結果…………考えるのをやめた!

《アイテム》に生物は入らない。

即ち、生きてたらこれも入らないだろう。

そう思って《アイテム》へチャレンジ。

……はい、入りました!!

アイテム名は『活動停止中のカオススライム』。

生き物かどうかも分からないが、入ったから解決だ。

OK。

細かい事は気にスンナ!

そこのルーク、君の事だ!!




 ☆ ☆ ☆




 後半はゴーレムが多かった。

特にアイアンゴーレムが多い。

その質量は相当なものだ。

それが全部高純度の鉄で、しかも魔法物質入り。

美味しい……美味しすぎる!

それがすでにどの位倒したのかを、数えたくない無いアイテムに貯まっている。

まぁ、数字でスタック数が出るから、数える必要はないんだが!


「これ、どの位で売れると思う?」


そう、ルークに何気なく質問した。

これだけ量があれば、正直私にはどれ程の金額になるのか想像が出来ない。

下手をすると、これだけで実家が数十年暮らせるかもしれない。

私の目標の一つがコンプリートされているかも知れないのだ!

とはいえ、あくまで生きて出られたらなので、気を抜かないでこのまま頑張ろう。




 ☆ ☆ ☆




 相当な回数の戦闘を繰り返した結果、ようやく階段を見つけた。

そこには……今までより明らかに値段が高そうな材質の存在が待っていた!


ゴーレム族:シルバーゴーレム:性別無し LV30

 特殊情報:《迷宮の虜》


ゴーレム族:ゴールドゴーレム:男 LV30

 特殊情報:《黄金の心臓》《迷宮の虜》


今までのゴーレムより大きく、ゴールドは甲冑を着た騎士、シルバーは馬に防具や馬上槍をくくり付けた姿だ。

……まぁ、乗って突進だよねぇ、これ。


 予想通りだった。

戦闘開始と同時にゴールドがシルバーに乗り、一気に突撃してきた。


スキル:戦闘馬術 スキル:騎乗槍


二つのスキルが、使用スキル欄に現れる。

現在の通路は百m程の直線の一本道。

こいつのランスチャージが、往復でやって来るのだ。

私の魔素は肉体を通して馬車に流れているので、存在自体はある。

一度私の身体に貯まって、そこから腕輪から流れているからだ。

この魔素のお陰で私の素の防御力はそれなりに上がっているので、例えこの攻撃が当たったとしても死ぬ程ではないはずだ。

格上の敵なので、あくまで即死ではない位には食らうはずだけどね……。

そして、《フルブースト》を使用出来ない為に、私の回避能力は皆無。

結果、耐えられるかもしれなくても、そうそう喰らう訳にはいかない。

そこで、自分の前に斜めに置いた《アースシールド》を複数かけて、何とか軌道を逸らしながら耐える。

ルークも同じ位置に《アースシールド》をかけてくれているので何とか軌道を変えられている。

ゲルボドとルークは流石に回避型の戦いに慣れているので、危なげ無く回避しているようだ。

やっぱり、こういう時に肉体自体を鍛えていないと差が出てしまうなぁ。


 その後も数回攻撃をやり過ごしながら、階段側に少しづつ移動を続けている。

階段から降りれば相手の機動力を、一時的にではあるが奪えるかもしれない。

それに賭けています。

そして、こういった場合にはどうするかを、ゲルボドには言ってある。

……忘れてないよね? ……そう信じよう。


「階段を一気に駆け下りて!!」


私がそう叫んだ。

ゲルボドは予定通り私を、お姫様抱っこで抱きかかえながら、


「OKシャ――――!」


そう返事をして、一気に駆け下りる。

そして、階に降り切った瞬間に、私を降ろして反転した。


「ルーク、敵の前にリキャスト毎に《アースシールド》!!」


ルークにそう指示する。

ルークのMPで攻撃にも使用すると、《アースシールド》での足止めが足りなくなるかも知れないから、ここは私とゲルボドの魔法で削る。

私は《アースシールド》と交互に大火力魔法を連発し、ゲルボドも魔法で攻撃する。

……ゲルボドの魔法は火力が上がると範囲が広くなる物が多いらしい。

《アースシールド》が一緒に削れるが、その分相手を吹っ飛ばしてバランスも崩しているので問題ない。


 こうして、ルークのMPが尽きる前に何とか沈黙させる事が出来た。

倒したゴーレムは当然、即《アイテム》に入れた!

魔法物質入りの金や銀は、本当にお宝だ!!

魔法具をコーティングする事もできるし、魔法具自体に加工もできる。

貴金属タイプの魔法具は、普通の貴金属を台座にして、魔法具をそこに嵌め込むように作っていく。

しかし、この金銀を使えばもっと効率よく小型化ができるという訳だ。


 私が金銀に夢中になっている間に、ルークが金色に輝く塊を拾ったようだ。

アイテム名:『黄金の心臓』だそうだ。

あれ?

それ、金ゴーレムに組み込まれていたはずじゃなかった?

何故外にあるかは不明だが、有り難く貰って置きました。

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