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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第二章
25/138

25◆異世界人との接触……その名はゲルボド(濁音多すぎです)

 しばらく追いかけっこを続けていると、流石にトカゲ男の速度が落ちてきた。

そうなると、今度は木を利用して横移動をメインに動き始めた。

良い感じに掴めそうになるのだが、急に挙動が変わって中々厳しい。

どうやら、尻尾を使って三点で支え、重心を巧みにずらして躱しているらしい。

そして……とても気になる点が一点……。

猫耳少女の悲しそうな眼差しが突き刺さる!!

完全に私が悪役です……。

でもなぁ、ここで放置する訳には行かないんですよ!

放っておくと、今後も同じ騒ぎを起こす事が目に見えている。

もうチョイ人間っぽい姿ならまだしも、完全にリーザードマンなのだ。

会った人に話を聞いて貰える可能性は相当低い。


 流石に正攻法は諦めた。

もう無理です。

逃がさない様に隙は作らず、意識だけ《ウィンドウ》にも向けて《ショートカット》を全て一つの魔法に置き換える。

選択した魔法は《アースシールド》。

魔素を使用した《ア-スシールド》を一気に八枚出現させる。

物理攻撃を防ぐので通り抜ける事は出来ない。

相手の逃げ道を無くす様に、私の方向以外は潰す。

次の八枚を、先に出した物に重ねて積み上げた。

一つで百五十cmなので、これで高さ三m。

流石にこの高さなら飛び越えられないだろう。


 逃げ道を失ったトカゲ男は、私の方を警戒しながら考えている様だ。

猫耳娘を下に降ろして、


「このは関係ないシャ――――! 見逃してあげてくれシャ――――!」


そう言ってきた……。


「駄目だよ! ゲルボドさんも一緒に逃げなきゃ!!」


猫耳少女がゲルボド(仮)につかまって離れない。

……いや……その、……私は何でここまで悪役なの!!


 その後もしばらく説得を続けて、ようやく警戒を解いてくれた……。  


「疑ってしまって御免なさい……。ずっと騙されたり追いかけられたりしていたもので……」


「悪かったシャ――――!」


……爬虫類系の表情はイマイチ判らないが……ゲルボド(確定)は、おそらくもう特に何も気にしてないな。

どうやら、相当能天気な感じだ。

それ故、何故追いかけられていたかは、ほぼ予想通りの話だった。


「俺は特に何もしてないのに、小さな村だと怖がってみんな逃げてしまうシャ――――! 仕方が無いから兵士の詰所らしき所があったので色々相談しようとしたら、イキナリ襲い掛かられたシャ――――!」


詳しい話の前にもう一つ確認しておきたい事は、猫耳娘ことミラのこれまでの環境についてだ。

ミラは現在十一歳で、住んでいた村から事情があって出てきたばかりとの事。

人間の街へ向かう最中にガラの悪い連中に捕まって、街に着いたら売られる所だったがゲルボドに助けられたらしい。

今の最終目的は、ミラを街に届けるとの事。

OK。

理解した。

この二人、リザードマンが亜人で、人と会ったら必ず戦いになる事を知らなかったようだ。

その事を二人に伝えると、


「シャ――――? 俺はリザードマンじゃないシャ――――? リズーマンだシャ――――!」


との事。

《識別》で調べても、確かにそうなっていた。

そして、あからさまに異世界人を主張している。


鱗人種:リズーマン族:男 LV20(異世界LV85:現在弱体中)

 特殊情報:《セト神の信徒(異世界)》《称号保有者(異世界)》


ここまで主張が激しいのならば、王都で人認定するのも楽だな……。

ほとんど居ないらしいが、極々まれには異世界人が確認されているらしいので問題は無いはず。

加えて、ここまで亜人と区別がつかないのならば、王都へ入るまでは人では無い扱いで行ける。

問題は、これからの方針だ。

一旦食糧なんかを渡してここで留まって貰うか、シェリーに相談して一緒に王都へ行くかを選択する必要があるな。

当然、そのまま好きにしてと言う選択は無い。

ようやく自分以外の異世界人に会ったのだ。

しかも、どう見ても邪悪なタイプでは無い。

大きな意味での今後の予定自体は好きにして貰って構わないが、必要な情報の交換などは絶対にしておきたい。

今後の行動指針が特に無いのであれば、それこそ当面は一緒に行動して貰えた方がありがたいし。

因みに、王都の手前で別れて外で待つ、と言う選択は無い。

シェリーが王都へ入る際に、同行した人を確認するスキルでのチェックを受ける。

どこまでの精度かは判らないが、出発時と到着前日の人数と到着時の人数が合わないと、色々と追加で審査を受ける事になる。

スキルでゲルボドが人扱いを受けるかどうかが判らない以上、直前に分かれるよりも堂々と亜人として入った方が良い。

亜人自体は危険性が少ない状態で、しっかりと責任を持つ人間が居るなら持ち込みが可能だとの事前情報は見ている。

師匠の情報と、領主から渡された旅のしおり的な物に記載されている。

正確には、人として扱われない存在に対しての表記に含まれている内容だ。


 その後は、色々話を聞いておきたいので腰を下ろせる場所に移動して、二人共あまり食事はしていなかった様なので軽い食べ物と飲み物を用意した。

この後、小屋についたら食事もするのでガッツリとはいかない。

そして、あまり遅いとルーク達が心配するので、まずは連絡だけを入れておく事にする。


『さっきのリザードマン(説明が面倒なのでリザードマン扱い)と合流したわ。予想通り言葉も通じるし危険の無い相手よ。一緒にいる獣人の子もさらわれた訳じゃなく、盗賊に奴隷として売られる所を保護して連れているらしいの。まぁ詳しい話はそちらに着いてからするわ』


《通話》で取り敢えず簡単に説明した。

現在位置を教えて貰い、おそらく場所は判るだろうと判断して《通話》を切った。


 ミラの話には若干の疑問点はあるが、所詮この世界の事情なので難しい話は無かった。

疑問点は、この国では奴隷が認められていない。

隣国まで行く気だったのか? 非合法な奴隷なのか? そこだけは不明だ。

問題のゲルボドなのだが、自分の世界で迷宮探索中に転移系の仕掛けがある部屋に入ると突然迷宮の外に出されていたらしく、仲間は誰も居ないし近くに居た人に話しかけても言葉が通じなかったらしい。

そこでゲルボドの世界のスキル習得方法である、技能ポイントを使って言葉を覚えたら全く知らない土地だったという事だ。

しかも、その技能ポイントも今は使えないとの事。

予想としては、入ってきた際はまだ世界の壁が不安定だったが、今は世界の壁のせいで神様の力が届かないのではないか?

又は、他の世界に干渉する事が出来ないルールなのかもしれない。

ちなみに、ゲルボドは世界を渡る方法を知らなかった。

まぁ予想はしていた。

それでも、世界を渡るヒントになる可能性が隠れている事を期待して、色々話をしたが特に収穫になるような内容は無かった。


 ルークに連絡してから結構時間も経ってしまったので、いい加減移動しようとして思い出した。

取り敢えず、ルークにゲルボドを納得させるのに手っ取り早い方法は……スキルでも見せればいいか。


「ゲルボド、さっき《移動力強化(異世界)》ってスキル使ってたわよね? あれって後で弟に見せたいんだけど又使える?」


「シャ――――? あれは戦闘時専用だシャ――――!」


ああ、さっきも戦闘時の逃走扱いだったのか。

そこでふと気が付いた。

他のスキルはどうなのだろう?


「ゲルボド。軽く模擬戦をして欲しいんだけどいい? 本当に軽く、スキルを確かめる程度でいいわ」


「分かったシャ――――!」


そうして、対峙した後の一振りで満足がいった。


スキル:片手剣(異世界)…………現在習得不可能


現在習得不可能ってのが気に入らないが、私の《格闘術(異世界)》もそうだとルークが言っていたから、何らかの条件があるのだろう。

ちなみに、私の《魔素の泉》は習得不可能表示。

ゲルボドの《移動力強化(異世界)》は可能表示だった。

ん?

そういや私の《魔素の泉》はなんで(異世界)表示がないんだろう?

謎だ……。

取り敢えず、ルークには今みたいに模擬戦っぽくやればすぐに理解させられるな。

では帰ろう。




 ☆ ☆ ☆




 陽が落ちて行き、そろそろ灯り無しではきつくなり始めた頃にようやく着いた。

ルークはやはり警戒している感じだ。


「俺はゲルボドシャ――! 宜しくシャ――!」


まずはゲルボドが、フレンドリーに挨拶した。


「ルーク、さっきも多少伝えたけど、ゲルボドに危険性は無いわ。実際の所、亜人でも無いし」


その台詞を聞いても、やはり困惑と言った感じが抜けてないな。


「ゲルボド、ちょっと武器を抜いて私と軽く模擬戦をして頂戴。それでルークは納得できるわ」


「わかったシャ――!」


そう言って《フルブースト》を使い、戦闘準備をする。

剣を構えたゲルボドと対峙した。

ゆっくりとゲルボドに近寄って行き、軽く攻撃を行う。

ゲルボドも攻撃をした段階でルークが理解した顔をした。

ゲルボドの使用スキル欄には、こう表示されているだろう。


スキル:片手剣(異世界)…………現在習得不可能


と。


「どうやらゲルボドは異世界人なのよ。自分の世界にあった遺跡の迷宮の中で急に転移させられてこの世界にいたらしいの」


「そうだシャ――! 気が付いたら迷宮から出ていて、近くの人に話しかけたら全く言葉が通じなかったシャ――!」


「で、ゲルボドの世界には技能ポイントって言う、まぁ神様からの加護みたいな物が存在していて、自由に便利なスキルを取れるらしくてこっちの言葉を習得したから今の様に話せるみたい」


「でも、今は何故か技能ポイントが使えなくなっているシャ――!」


「予想としては、こちらに来たすぐにはまだ世界の壁に穴が開いていたから向こうの神様の力が届いたんじゃないかなと思う。で、今はもうこちらの世界に干渉出来ないから使用不可能になって居る……と」


ルークは呆然としながらこちらを見ていたが、まぁ聞いては居るみたいだから問題ないだろう。


……ここでようやく気が付いた!

ルークも《識別》を持っていた!!

模擬戦とか無駄でした。

まぁ、今更どうでもいいや……。

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