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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第一章
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2◆ルークの瞳に映るもの……原因は私の様です

 前世の名前を風祭 絵里奈。

現在エルとして転生した私も、こちらの世界での生活にすっかり慣れました。


「お姉ちゃん、あそこにもあるよ!」


現在、弟のルークと一緒に子供でも危険が無い場所にある、まばらに木が生えるだけの小さな丘に来ている。


まだ家の手伝いもあまり出来ない私達でも簡単に探せる程度の食べ物や役に立つ草等を集めながら遊び、家で邪魔をしない事が今の私達の仕事だ。


「お姉ちゃん! これも食べられるよね!」


そう言って数日前に教えたばかりの食べられる野草を嬉しそうに持ってくる。

若干甘えん坊で泣き虫なかわいい弟。

いつも私について来る寂しがり屋さん。

中身が二十二歳女性である私には、まるで自分に子供が居るような錯覚すら起きる今日この頃だ。


 私達姉弟も四歳になった。

この村の生活は日本の生活に慣れていた私には不便ではあったが新鮮でもあった。

現在、私達の家族は全員で五人。

細身ではあるが畑仕事をしている為に筋肉質で頼れる父親のリグ。

常に優しく微笑みを絶やさずに私やルークと接してくれる母親のエレナ。

静かに包み込むような愛で私達を見守ってくれるユーナお婆ちゃん。

今では私にとっても大切な家族だ。


 流石に四歳にもなれば色々と話を聞いても子供の興味本位の質問として捉えてくれる。

最近では特に色々な事を大人達に聞くようにしている。

まずはこの土地の領主についてだが、善良で堅実な名領主らしい。

お陰で余程の不作以外では飢える事無くなんとかなっている。

しかしそうなると、余程の不作の原因とは何かという事になるのだが、この地方は比較的安定した気候をしており、嵐や台風等はほぼ無い。

結論としては、数年に一度起こるのが日照りによる水不足だ。

この村周辺にはあまり大きな山が無い為に、干上がっていく川からの水では全ての畑を潤す程の水量は確保出来ない。

そういう年は生かせる畑以外は切り捨て、収穫が終わると同時に働ける人達は領主の治める街まで出稼ぎに出て冬を何とかやり過ごすようだ。

領主側では食糧を中心とした蓄えを出来るだけ多く保持しているらしく、それに加えて不作が予想される時は魔物討伐や畑以外での収穫に力を入れて、出稼ぎで溢れる時期に出来る事は後回しにする事で対応する柔軟な対応が出来る体制を持っているらしい。

皆が裕福にとまでは言えないまでも、不満で満ち溢れるような統治は行っていないようだ。

 

 次に、この世界には魔法が存在する。

私にも使えるかどうかがとても気になって居た。

当然その事を確認する為に色々聞いて回った。

結果としては、この村で魔法が使えるのは生活魔法と呼ばれる簡易的な魔法だけであった。

本来の魔法技能とはかけ離れたスキルになっており、これが使えるようになっても純粋な魔法を覚える際に楽になるとか言う話は無いそうだ。

まぁ、それでも覚えておいて損は無いだろうからそのうち教えて貰えるなら覚えよう。

その他にも色々聞いて居るが割愛。

日が暮れたらお婆ちゃんから色々話を聞いているから切りが無いし。




 ☆ ☆ ☆




 今日も家でやれる手伝いを終えた私達は色々な場所を移動しながら採取できる物を探していた。


「ルーク、そこにある木の実拾っておいて」


ルークにそう頼むと指差した方向を彼が確認した。

そして視線を動かさずに首だけを少し横に動かす。

その動きはルークが時々する癖の様なものらしい。

毎回はしないのだが、小さな物を見る時にたまにするのだ。

ただの癖ならば仕方がないとは思うが、もし首に違和感があるとかだと早めに対応が必要かもしれない。


「ルーク、たまに視線を動かさずに首を動かす時があるでしょ? 首に違和感とかがあるの?」


ルークは首を横に振り、


「四角い模様が時々邪魔な時があるんだ。だからそれを避ける為だよ」


…………ん?

意味が解らないな。


 少しの間考え込んでいたらしい。

ルークの方もその態度に疑問を持ったらしく、


「お姉ちゃんは四角い模様が見えないの……?」


そう聞いてきた。


 私にはその四角い模様と言うのが分からない事を伝えてから説明して貰った。

どうやらルークには目の前に四角い模様が沢山見えるらしい。

それは目に直接映っている訳ではなく、顔の向いている方向に固定されており、視線を固定したまま顔を横にずらすと模様も一緒に動く不思議なもののようだ。

どうやら記憶に残る最初からあるらしく、今まで疑問に感じていなかったらしい。

視線と一緒に動くのであれば網膜に何かが焼き付いている可能性も考えられたが、顔の向きに同調するとなると予想もつかなくなる。

詳しく教えて貰う為に地面にその四角い模様の集まりを出来るだけ正確に描いて貰う。

何か少しでもヒントになるものが有れば、と思ったのだが……驚愕の事実が待っていた。

四角い模様と言うのは、どう見てもゲームの画面としか言えない構成になっており、四角に囲まれた中にはハッキリと日本語が書かれている。

《ターゲット》《使用スキル》《攻撃》《スキル》《魔法》《アイテム》等だ。

あ~、これ原因は私なのね……。

病気等の心配は無い事が判ったが他の問題が勃発しました。


 画面構成に見覚えはある気がするがよく解らない。

とりあえず前世の記憶からゲームに関する情報を検索する。

……地味に結構あるな……。

私、そこまでゲーマーじゃ無かった筈なんだけど、友達が好きだったから一緒に情報誌位は読んでたせいかもしれない。

仕方が無いから片っ端から見ていく事にしたが、ルークを待たせたまま放置は不味い。

家に帰ってからゆっくり見ることにしよう。


 夜の間に結構な量の記憶を確かめた結果、有りました!

どうやらこのゲーム、《紅の剣》と言う奴だ。

記憶に残ってないのも仕方が無いと、自信を持って言える程度のプレイ状況だった。

何でこのゲームがルークに見えるようになったのかが意味不明と言える。

問題は今後何かの役に立つのかどうか? 害は無いのか? そこを見極めて行かなくてはいけない。




 ☆ ☆ ☆




 翌日はルークに色々と実験をして貰う。

実験と言っても危ない事はさせない。

まずは《紅の剣》の画面が見えるだけなのか? それとも何かしらの効果を持った物なのかを確認する。

なんせここは魔法がある世界だ。

何があってもおかしくは無い。


 まず、私がこのゲームをやったのはスマートフォンだった。

そして、ルークが描いた図には左上に時間が出ていた。

昨夜見た画面構成にも同じ場所に時間が出ていたので、スマホの機能を継承しているかを確認する。

実際には触れないのだろうが、まずは軽く指を重ねるように触らせた、変化無し。

次に『押す』という意志を持って触らせる、変化有り。

最初に押した場所は《アイテム》だったが全て空欄だったようだ。

持てる数らしい数字は二百五十六個……時代を感じる……。

そのまま色々と押してみたところ、《スキル》の欄に《農作業》と《採取》というスキルがあったらしい。

スキル……か。

ゲームにおけるスキルはほぼ戦闘に関する事だった。

《農作業》や《採取》は私達の生活を考えるとそこから得られたと考えられる。

しかしこのゲームの醍醐味は敵からスキルを奪う事だったはず。

そうなると戦闘スキル等も覚えられるのかもしれない。

しかし、ルークの年齢はまだ四歳……流石に今から戦闘スキル云々を教えても不味いかなぁと思う。

もう少し色々調べておく必要はあるけれど、実際に何かをするのはもう暫く待った方が良いだろう。

区切りが良い所で小学校入学位?

そう考えてルークには六歳の誕生日になったら色々教えてあげる事を条件に、この事は人に話さないと約束させた。


 ……これは上手くいくと面白い事になりそうね。


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