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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第五章
138/138

125◆王都迷宮十九層 若干面倒な仕掛けあり

 現在は王都近郊の迷宮十九層を探索中。

基本的には何の問題も無く進行中だ。


 基本的に、倒した魔物は何の処理もせずに《アイテム》へ投入。

休憩時には自分の移動迷宮を呼んで安全に休み、その日の探索が終わればゲルボドの転移魔法でダンジョン外に出てから帰還。

まぁ、実際には中で呼んだ迷宮経由で戻ってもいいのだが、二十一層までは過去に探索実績もあるので、念の為にそこを過ぎてからということにしている。

流石に迷宮内で更に迷宮の入り口とか、怪しすぎるからね!


 現在の階層だと敵のレベルは35を中心に上に2レベル下3レベル程度の幅がある感じなのだが、私達の持つ若い迷宮と違って一層毎の広さも大きく、出てくる魔物も多種多様といった感じで統一性は無い。

種族的にすら統一感が無い為、狙った獲物を探し出すのも困難な位不便である事から、私達も余程の事が無い限り素材狙いで来ることは無いだろう。


 まぁ、ここまでにそれ程魅力的な素材は入手できていない事と、レベル的にも私達の迷宮よりもそこまで高くはない事が素材稼ぎに来ないであろう理由である為、今後出てくる可能性があるレベル40オーバーの魔物や未見の素材次第とも言える事から、余程の事に当てはまる状況にならないとは断言できない所ではある。

ただ、魔石狙いなら亜人部隊で進めている故郷の迷宮で十分確保できている為、やっぱり素材次第といえるかな。


 さて、現在攻略中の十九層は天然の洞窟の様な感じで整備が全くされておらず、曲がりくねり、断面的には歪んだ筒状の通路をひたすら進む構造になっている。

たまに分岐があるので構造上は一本道ではないのだが、そこまでに結構な距離がある為敵は全て殲滅しなくてはならないという構造で、過去にここまで来た集団が残した地図で予想はしていたが……どう見てもアミダクジにしか見えない作りになっていた。


 アミダクジにしか見えない理由はもう一つあり、分岐点があると必ず直進ルートと入口のあった方向には壁や天井から壁材が迫り出してきて道を塞ぐ罠があるのだ。

過去の探索では数人がこの罠にハマって死んだらしく、ルールが分かるまで相当な苦悩と損害があったとの事。

なんせ発動がスイッチによるトリガーではなく、特定エリアへの進入自体で発動する為に《罠発見》スキルで見破り難い上、稼働時に迫り出す境目も迷宮自体が隙間を埋めて補修してしまう為に違和感なく存在する。

それならばと色々な物を放り投げて確かめてみても動かない物には発動せず……結局は斥候職が色々と試行錯誤しながらルールの発見に至るまで、甚大な被害が出る結果となってしまったのだ。


 もっともそういった事前情報があったとしても、直進以外が絶対安全と完全に信じている訳ではないので私達は別に対策をとりながら進んではいる。

その対策とはリーナに《迷宮の虜》を使用した従魔を呼び出して貰い、先行させて生贄……もとい! 尊い罠発見要員として進んで貰う方法をとっているのだ!!


 リーナである理由は簡単で、現状リーナは《迷宮の虜》を二体しか持っていない上、外に出した事が無い。

それに対して私とルークは迷宮外へ呼び出せる上限である五体をメインメンバーとして保持している為、リーナによろしくという流れになったのだ。

もっとも、ルークは現状で迷宮外に《迷宮の虜》達を出していないので、そちらの選択肢も無い訳ではなかったのだが……仲間を失う事に対して、密かにトラウマめいたものを抱えている可能性があるので刺激しない為に配慮をしたとも言える。


 因みに、リーナが《迷宮の虜》を増やさないのには理由がある。

いずれ来るであろう亜人部隊のお披露目の際に備えて、ワザと空きを作ってあるのだ。

ルークには《浸食共有》の効果を教えていないし、リーナが使用する《迷宮の虜》の亜種か似た効果だと認識させておきたいという思惑もある。

流石に《浸食共有》を人間に対して使用した時の危険性が不明なので、出来るだけルークにも教えたくないからだ。


 そういう訳でリーナの《迷宮の虜》に先行させている訳だが、念の為ルークのトラウマもどきを刺激しない様に、罠が発動する事を確認した上でとある種族に決定した。

その種族とは……スケルトン系である!

いや~、いくら生贄つかいすて要員とはいえ、無駄にグロシーンとか嫌じゃない!! という建前の元、少数ながら発生させていたコイツ等に白羽の矢を立てた訳だ。


 最初に確かめたのは、スケルトンでも発動するのかどうか?

カチャカチャ歩いていくと、問題無く潰された。

ナ~ム~……まぁ、元々死んではいるが!


 では次に、無機物による重さで発動はするのか?

《アイテム》に突っ込んであった岩を丸く加工して半径五十cm程にして転がし、先程スケルトンが罠にかかったルートで転がしてみたのだが……結果は発動せず。


 次に試したのは、かつてアイアンゴーレムだった物。

魔法物質を十分に含むものの、現在は金属の塊となっている物だ。

結果、これも発動しない。


 では、今度は動きについて試してみる。

まずは完全に動きを停止させた状態でスケルトンを投げ入れてみる……変化無し。

そこからジャンプというかスキップしながらこちらに戻って貰おうとした所……今度は発動!


 恐ろしい速さで、目の前に壁が出来上がりましたよ!

これは、発動を察知してから避けるのは基本無理なスピードだね!!

発動から潰されるのにコンマ数秒か、下手したらそれでも生温いといえる位のスピードが出ているかもしれない。


 さて、ここまでで判明したのは物体自体に動きが無いものには反応せず、これは床の上を滑ったり放物線を描く様に投げ入れられても反応はしないという事かな。

逆に動く物なら歩いてても、宙に浮いてても発動してると思う。


 後はどこまで進むと発動するのかを計測。

過去の探索では二~三m進んだ辺りという事になっていたのだが、もう少し正確に計っておいた方が良いだろう。


 計測方法は単純な方法でいく。

リーナにスケルトン系の魔物をいちいち追加するのは面倒なので最大の五体を連れてきて貰い、まずは二体を洞窟の奥に放り投げる。

距離にして十m程。


 この段階で二体とも奥に向かって動き出して貰ったのだが、反応は無し。

次に一体はそのまま奥に移動した位置、もう一体には戻ってきて貰う。

その際、罠が発動した時、止まっているもう一体にはトラップの境目まで移動する様に指示した。


 結果は惨敗!

何故か二体とも完膚なきまでに粉砕されていたのだ。


 そうなると、思ったよりも奥の方まで潰されている事になる。

発動自体は事前情報通りにこちらから二~三m進んだ辺りだけだったのだが、予想以上に奥行きが酷い様なので、もう少しだけ調べておくことにした。


 トリガーとなる発動範囲は相当狭い様なので、取り敢えず一体を再び奥まで放り投げる。

放り投げた十m位先から移動を開始し、百m位(適当)先の通路が曲がって見えなくなる直前まで移動させる。

次はこちら側からスケルトンに移動して貰うのだが、もう一度確認の為に二m弱進んでからジャンプさせ、トリガーとなっているエリアには空中で侵入して貰った結果……両者粉砕!


 結論……分岐部から約二~三mの範囲が起動のトリガー。

完全に動きを抑制した場合には反応しないが動きがある場合は反応する事から、自分で動く物に反応……または動く意思を感知して反応する(生者死者は問わない)。

床への接触ではなく、空中も含めた指定空間への進入で罠が発動。

視界が通る範囲は全て罠の範囲内となっている事から、最悪反対の分岐部分まで全てアウトの可能性もあり。

骨は完全に粉々になっている事から、圧迫される範囲はほぼ隙間なし。

まぁ、こんなところかな。


 それでは確認も終わったし、後はあまり気にせずに進んで行きましょうかね。

なんせ、分岐はあっても一つ以外はハズレ確定なのだから、結果的には一本道でしかないのだ。

元々経験稼ぎの為に戦闘を回避するつもりは無いけど、敵は全て撃破する必要がある。

やる事が確定しているのならば進むしか無いという訳だ。


 そんな訳で残ったスケルトンを先頭にし、ルークとゲルボドが二列目、ミラと王女が三列目に位置し、最後尾は私とリーナとなって進む。

この順番の理由は、後ろからの警戒の意味が強い。

先程調べた罠のお蔭で私達は遠回りさせられるのに対し、迷宮内にいる魔物は素通りしてくる事があるからだ。


 《迷宮創造》や《迷宮の主》スキルを持つ私達は、内部に居る魔物に対してどのような設定を施せるかをある程度知っているのだが、魔物が罠にかかる・かからないといった選択や、魔物同士で戦う・戦わないなどの様々な選択が出来る。

罠エリアを平気で通ってくる魔物が引っかからないのは、その為だ。

普通に考えて、わざわざ罠の設置を設定しながら自分の配下の魔物に反応させる様なマスターは居ない為、亜人系等の知恵を持つ魔物が独自に設置した罠以外は反応しない様になっている。

その関係なのだろうが、一本道にも関わらずに思ったよりも迂回してくる魔物が多いのだ。


 そんな訳で、この隊列ならば敵が来た方へ王女が前に出るだけでどちらでも対応出来るし、後列になった二人がミラの横に並んで魔法で援護すれば何の問題も無い。

全員が殴り系と魔法スキルを万遍なく上げられるのだから丁度良いとも言えた。

敵のレベル的にはもうしばらく余裕がありそうなので、きつくなるまではこのままで良いかなと考えている。

そこまでは頑張ってレベルと熟練度を稼いで貰いましょう!

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