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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
133/138

123◆エルナリア領迷宮一般公開への準備作業

 現在、ルークが戻ってから十日程過ぎている。

一週間程で王女の訓練は終わったのだが、エルナリア領に戻った師匠からの頼みで色々と製作していていた事が原因である。


 主な製作品としては、公開する迷宮を囲むように作ったアイアンゴーレム素材から作った鉄格子や扉。

治安維持の為に、警備隊の戦力を強化するためのゴーレム。

更には迷宮周辺の地面を平坦に整備し、そこにストーンゴーレム素材等で作った建物の基礎部分を埋め込む作業。

それに加え、回復魔法を封入した魔法具までそれなりの数を作る事になった。


 元々迷宮入口は領主側が管理する建物内となっているのだが、冒険者の中にはとてもとても常識の無い人物が紛れている事を王都に居る間にギルドで学んだらしく、普通では破壊不可能な土属性で強化された檻を設ける事にしたらしい。


 次にゴーレムなのだが、現在も配置する警備隊を増員して教育しているらしいのだが、どうしても一流の冒険者の相手が出来る域には到達出来ない。

そもそも強い魔物が少なく、迷宮も無かったエルナリア領には一流と呼べる実力者は皆無なのだ。

ぶっちゃけると、冒険者も含めて戦闘能力の方面で二十レベルに達している者が片手で足りるほどしか居なかった。


 そこで、三十レベル程度の強さを持つ戦闘用ゴーレムを作り、対になる専用の認証用魔石を持つ相手だけが指示を出せる仕様で製作しておいた。

当然、認証用の魔石にも盗難防止用に個別パスワードを設け、奪われても使えない様にしてある。


 因みに、このゴーレムの動力の一部は内部に格納された魔素石となっている。

その理由は簡単で、これを運用するのは迷宮周辺である為、魔物が活動出来ない魔法物質低下エリア内である為だ。

そこで周囲から取り込んだ魔法物質では足りない分を、私が作り出した魔素石を電池代わりに使う事で稼働を可能にしている訳だ。

もっとも、私が居ないと継続できないこの方式をいつまでもとる気は無いので、これから師匠や先生と一緒に研究して、もっと良い方法を探し出す予定ではいる。

理想としては、迷宮に置いてある魔送石から充電するかの様に、魔素を吸収して再度使用できる作りが良いだろう。


 後は迷宮周辺の整備だが、領主が王都へ避難していた為に遅れた予定を取り戻す目的のようだ。

ヴァルツァー五爵の手の者が暗躍している中で動く危険を考慮して、敢えて取り掛からなかったとも言えるこの作業なのだが、元々平地を選んで場所を決定してあるので比較的平らではある。

しかし、当然だが真っ平らなわけは無いのでそこから始めていく必要がある訳だ。

まずは地面を平坦にする為に新しく稼働させた重機ゴーレムを三体を用意し、地面を削りながら平らにするためのオプションを装備させる。

設計の元になっているのはブルドーザの排土板で、出っ張りを削りながら平らにしていく目的で使用する物だ。


 最初は迷宮を中心にした一辺五十m程の正四角形で作業を指示し、その作業をたまに確認しながら回復魔法を封入した魔法具の作成を行った。

この魔法具なのだが、現在は非常に希少であまり存在していないらしい。

本来魔法に必要な詠唱の代わりをする魔法回路の部分の難易度が高く、更に等級の高い魔石でなくては安定した効果を発揮しない事が理由との事。


 それらしい説として、火を作り出す、敏捷度を強化する、光で周囲を明るくするといった一律の効果を出力する魔法と違い、傷の大小やダメージの種類に応じて効果が変動する回復系は術者が無意識に調整している可能性が高いというものがあげられている。

他にも、回復魔法は女神が力を貸してくれている為、術者による願いが込められていない魔法具では効果が十分に得られない等と言った諸説もある様だが、私にも答えは全く分からないと言うのが実情だ。


 因みに、回復魔法に女神が絡んでいるというのは女神神殿の関係者がその説を唱え、実際に一般の冒険者が使用する回復魔法よりも効果が高い事が多い為に信じられている説である。

私の見解では、眉唾物だと考えているけどね。

おそらくだが、使用頻度が高い回復魔法に対して特化した修錬法か何かがあり、意図的に効果を高めていると考えている。

もっとも、女神への祈り云々といった修行内容の中にそれらしい物がある事が私の説の根拠となっている為、事実は全く分からないとも言えるのだが。

女神を信用していない私の回復魔法が異常に効果の高い点に関しても、《女神の祝福》や魔素の影響が検証されない限り結論を出せない為、参考にすらならない。

まぁ、現状の私にはこの回復の魔法具が作れてしまうので、急いで理由を解明する必要性も無いんだけどね。




 ☆ ☆ ☆




 一人でやるには時間がかかる回復魔法の魔法具を作りつつゴーレムの作業を見守っていると、平坦に削る作業が終了したようだ。

今度はゴーレムのパーツを換装し、土を踏み固める物に変える。

四本、又は六本の足にはそれぞれ鉄の板の様な物を履かせ、グランド整備用のローラー(私が実物を見た事は無い)を参考に作った鉄製の巨大な筒が回り続けて押し固める仕様の物をセットした。


 この作業は念入りやっておいた方が良いので、同じ場所を複数回重複して行う様に指示して迷宮へ入る。

迷宮での目的は、路面に敷く石の板を確保する事だった。


 迷宮の材質は《迷宮創造》によってマスターが任意で決められるのだが、私は大体石の壁や床に設定してある。

理由は簡単で、移動しやすく自分達が汚れにくいからだ。

土壁とかだと結構汚れるから嫌なのです。


 そんな訳で大量の石の壁や床がある訳なのだが、これを石畳に有効活用してしまおうというのが今回の趣旨という訳だ。

迷宮の壁がそんなに簡単に取り外せるのか? と言えば、本来の答えはNOだ。

しかし、《迷宮創造》によるマスター権限で迷宮の材質や構造を変更するとどうなるのか?

当然安定性が失われ、徐々に分解されて別の位置への再構築や別の材質に再構築される。

この際には固定されていた壁材の安定性が緩み、私の簡易錬金窯に取り込みながら切断していく事で綺麗な石畳がいくらでも採取可能という訳なのだ!


 あとの補修の事も考えて一m四方の石材を、取り敢えず五十m四方分用意して迷宮を出る。

勿論、採取に使用した部分も明日には再構築されて綺麗になっているはずなので、このまま放っておいても問題は無いはずだ。


 工事現場に戻ると重機ゴーレム達は既に作業を終え、駐機状態で整列していた。

私は整えられた地面に満足し、仕上げの為に《変換魔法》で地面を硬化させていく。

土魔法と火魔法を使用したこの《変換魔法》は私のオリジナル魔法で、加熱しながら押し固めていく目的で作った魔法だ。


 一回の範囲は二m四方程にしてあるのだが、《ショートカット》八個全てにこのオリジナル魔法を入れる事でほぼ同時に八か所を指定できる。

冷却に関しては自然冷却に任せる為、硬化作業が終わると同時に次の場所を開始するので時間的にはそれ程かからずに終了した。


 この段階で一度エルナリア領主館に移動し、実際に建物を建てる人を送って貰う様に依頼して再び現場へ戻った。

建物の基礎を埋め込む場所を指定して貰う為の人員が来るまで回復魔法の魔法具を作り、それを終えてから状態異常の魔法具の製作に取り掛かった頃に作業員が馬車で来てくれた。


 あまりにも綺麗に整地された現場に驚きつつも作業員が指定してくれた位置に、後からゴーレム産の石や鉄で作成した基礎を埋めていく予定だ。

この基礎部品は魔法で強化してある為、そうそう痛む事は無い。

いつまでも安心の、優良素材である。


 作業員を見送った後、簡易錬金窯で指定された場所に基礎の形に穴を空け、《アイテム》から直接基礎を出す事で手間を省いている。

因みにこの世界の基礎は木や石の杭を撃ちつけて終わりであり、前世におけるコンクリートで作成した床下部分全てを指す訳では無い為、地面より下に打ち込んだ柱の様な物だけを指す。

今回私が作ったのは打ち込んだ一番奥の部分に膨らみを持たせているので安定感は増すはずなのだが、そこまでしなくても大丈夫なそうなので、単に気分の問題となっていた。


 作業は順調に終わり、リーナからドール二号と三号の自意識が覚醒して《迷宮創造》スキルが使用可能になった事を聞き、早速移動迷宮を作成させた。

後で破棄しても良いので、まずは作成して迷宮内に魔送石を設置する事で熟練度を伸ばし、第二第三の迷宮を作れるようにしたい。


 ここ三日程は王女の面倒をミラとゲルボドに任せていたのだが、意外な事に弓をそれなりにマスターしていた事には驚いた。

命中精度はまだまだこれからだが、一人だけ遠距離攻撃が出来なかった事を考えるとこれは悪くない進歩と言えるだろう。

そもそもが、私自身が弓を扱えないのでそのうち魔法でも使える様になればいいや程度としか考えて居なかった。


 下準備は整った。

後は本格的な実力の底上げと、竜を探す事になるだろう。

ようやく……といった感はあるが、王女の参入は戦力的にプラスとなる可能性が高い。

遠回りはしたが、良しとしよう!

さぁ、頑張っていきましょうかね!!

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