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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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117◆ルークとの再会と撤収準備、後の事を考えてその他も色々

 数日ぶりに会ったルークに、


「お疲れ様」


と後ろから声を掛けた。


 まぁ、話自体は《通話》で度々しているし、昨日の晩にも会話はしていた。

もっとも、昨日は丁度食事をする直前だったらしく、


『ああ、それじゃ詳しくは後にするわ。簡単に言えば、そこの領主と悪政に加担していた貴族連中は排除されたって話だから。流石に小悪党クラスの雑魚までは手が回って無いけど、領主の血族の中でもまともな人が爵位と領地を継いだ上で、当面は王都の役人が全ての事に口を出して改善させていくらしいから一安心って話かな』


とだけ伝えておいた。


 その内容について、本当は二人の聖職者が帰って来てからルークへ伝えるつもりだったのだが、王子が事前に色々と手を回したいとの事なので、護衛に付いて行った人員以外の地下幽閉施設関係者を領主館近くに送り出してあり、色々と手を回した結果がある程度報告できる状態になっていた為、出来るだけ早く知りたがっていたルークにも伝えたのだ。


 最も、王子の行動はどう考えても時間的な計算が合わなくなると思うのだが、そこら辺の都合はどうとでもなるとの事なので任せてあり、結果としては既に後継者も決めてあるとの事。

更に、領主の配下として甘い汁を吸っていた領地持ちではない貴族が何人か居たらしいのだが、こちらは既に全員が魔法具による拘束状態にあるらしい。


 使用している魔法具は言動や行動を支配する事が出来る系の結構やばそうなアイテムなのだが、条件が厳しすぎて悪用は出来ない代物の様だ。

その条件とは、貴族となる際に王と国に対して恥じない行いする事を宣誓するのだが、それを破った者に対してしか発動しないとの事。

その分、強力らしいけどね。


 更に、発動時に魔法具を相手に接触させる必要がある上、光耐性が高い場合には抵抗される可能性もある。

その上、どんな違反をしたのかを正確に把握していなくてはならないため、有効に使える状況が恐ろしく少ない代物らしい。

ヴァルツァー五爵に対して使わなかったことにも納得できる難易度だろう。


 ただ、今回の場合は領主の悪事に加担したという事で十分発動できる為、余裕で全員を支配して逃亡も反抗も出来ない状態のまま、部下の動きも含めて現状を維持しているとの事。

領主が行方不明になった事を知った貴族達が何をするか判らなかった為、こうした方法を取ったと王子は言っていた。

確かに上手い手ではあるかな。


 後は後継者についてだが、一番序列が低い側室の息子が領主館の外にある小さな屋敷に隔離されていたらしいのだが、根は真面目で心優しい性格であった為、他からは疎まれ、特に正室からは嫌われていた為に軟禁されていたらしい。

十五歳の六男との事なのだが、生来の体質で外を歩く事も出来ないと外部には伝えられていたらしく、王都には何の情報もなかったとの事。

もっとも、王国内に沢山いる貴族の、しかも六男程度では成人すれば貴族扱いされない事が多い事を考えたら、どちらにしてもほとんど情報など無かった可能性も高いんだろうけどね。


 因みに、長男と次男は私が確保してあるのだが、他の兄達は領外へ出ているらしい。

ただ、この兄達も性根が腐っているらしいので、屋敷から見つかった資料を証拠として、捕縛命令がすでに出されていた。

後から余計な横槍を入れさせない為にも、必須な行動ではあるだろう。


 そして、当の六男には今後後見人をつけながら領主としての教育を受けて貰う事になるのだが、丁度良い事に糞領主の叔父にあたる人物がいるらしく、この人物はまともであるが故に領主とは絶縁状態だったらしい。

しかも、つい先日まで王都の軍で文官系の職にあり、現在は年齢的な理由で退役を済ませたばかりであった。

この人物に数年間指導させ、それ以外にも王都から監視役兼指導員を派遣する事で対応予定との事。

数年は王国からも援助物資が支給される予定なので、上手く立ちなおして欲しいものである。


 さて、話を戻すが、ルークは私に声を掛けられて少しだけ驚いた表情をしたものの、


「ごめん、姉さん。見ての通り、まだまだ落ち着きそうも無いんだ。もうしばらく待って貰ってもいいかな?」


と言ってきたので、


「ああ、その点に関しては大丈夫よ。こちらでも相当量の保存食を用意してあるから」


と言い、ルークの移動迷宮の横に自分の移動迷宮を呼び出した。


 呼び出した移動迷宮自体は、実の所ただのダミーだ。

私はその中に入り、《アイテム》に入れないで保管してある保存食をこちらに出す為、リーナへ連絡を入れた。


『リーナ、ミノ太達が作った保存食を《アイテム》に入れて頂戴。こちらで出していくから』


と、伝えると、


『……うん、分かった』


そう言って、迷宮の中でも湿気が無くてかなり涼しい場所に保管しておいた大量の箱を投入してくれた。


 何故《アイテム》へ入れなかったかと言えば、塩分の有り無しで二種類に分かれた上、各種類が九十九個で収まりきらないのだ。

材料があるとはいえよくここまで作ったな、亜人部隊の諸君よ……。

まぁ、実際は塩分の無い方は元々暇を見て大量に保管してあったらしい。

最近暇な時間が多かったので、倒した魔物の肉がもったいないから加工していたとの事。


 その頑張りのお蔭で恐ろしい量になっているのだが、あまりにも多い上に今回は使わない可能性も高かった為、敢えて《アイテム》へは入れておかなかったのだ。


 しかし、必要であれば容赦する気は無い。

エースとオシリスをこちらの迷宮へ呼び込み、二m四方の箱に目一杯保存食を詰め込んだ物をガンガン運び出させていった。


 結果は、二割を放出する前に必要分は揃い、今後もこの村を目指してくる人が居る可能性も高い為、村で使用していない建物を改造して幾つか倉庫を作り、塩分を含んだ長く保存のきく方を大量に置いていく事にした。

それ以外にも各家で保管できる分は最大量持っていかせ、倉庫の分は出来るだけ今後来た人に配って貰えるように頼んだ。


 ここまでくれば私達にやれる事はしたと言い切れるのだが、折角加工した保存食がまだまだ大量にあるのだ、もう少し様子を見る事にしよう。

もっと詳しく言えば、ドール五号を起動し、小屋を一つ借りて配置しておく事にした。

このドール五号は当面育てず、《浸食共有》でこちらの様子を確認するためだけに使う予定だ。

まずは一号~三号を育て、リーナへの負荷がどうなるのかを確認するまでは増やしても育てない方向で、というのが今の方針になっているからだ。


 因みに、一号のスキル熟練度とレベルは結構上がっているがリーナへの負荷はほとんど変わっていない事が判明しているので、おそらくまだまだ余裕があると予想している。

今後は更に大量に起動できるならば、ドールを各地に配置する事で移動できる場所が圧倒的に増やせる可能性もある訳だし、色々と夢は広がるね!

個人的には、隣の大陸とかにも行ってみたいし!!


 もっとも、それはまだまだ先に話になるので、今はやるべき事を順番に終わらせるべきだろう。

ルークには、


「まぁ、領主が交代した上で今年の税金は免除になるはずだし、近いうちに各村へ援助物資が運ばれるらしいから生活は大分楽になるはずよ」


と伝えて納得して貰っているので、そろそろここはお暇させて貰う事になる。

今やってる作業が終わったら後片付けに入るはずなので、もうそれ程時間はかからないだろう。




 ☆ ☆ ☆




 作業を終えたコンロから順番に迷宮内へ運び、サクサクと《アイテム》へ投入して片付け、ようやくこの村での作業は完了した。

私は後でもう一度ドール五号を配置する為に来る予定なので、それまでは迷宮はこちらへ置いておくのだが、ここまで堂々と見せた以上は今更隠しても仕方がない為、そのまま広場から移さずにいつもの様に上空へ置いておく予定だ。


 ようやく準備が出来た段階では既に他の村から来た人の送り出しが完了し、周囲に居るのはこの村の住人達だけなのだが、相当な人数が周囲を取り囲む様に集まっており、村長を筆頭に感謝の言葉で埋め尽くされていた。


 私もルークも後で問題が起こらない様に、顔が完全に隠れる様な普段は着けていない変装用装備とでも言うべき物を着けている為、若干怪しい人見えるかもしれないが事実やっている事が怪しい事ばかりなので否定はしない。

村長には後で許可を貰った場所に小さな小屋を建てる事を念の為にもう一度伝え、感謝の言葉を背にしながら私の迷宮へと入る。


 そこでルークの移動迷宮を呼んで貰い、王女&老魔術師じじいと対面する訳だが……私が興味を持っているのは老魔術師じじいの方だ。

彼とは、色々と話をしなくてはならない事がある。

期待通りの答えが返って来るとは思ってはいないが、少しの期待位は持っていてもいいだろう。

これが今後も長い付き合いとなる、まともな状態の老魔術師じじいとの初めての対面であった。

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