表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
120/138

110◆ルークとからの相談と、それに関する王子との相談2

 王子との話は続き、ルークから確認する様に頼まれた現在いる場所に関する話となった。


「ルークの話では相当な重税で苦しんでいる……もっと正確に言えば、生かさず殺さずを実践している場所に居るという話でした。とても私達が生まれ育った国と同じ法のもとにあると思えない状況だそうです。その事実を王子はご存知でしょうか?」


そう問うと、


「知ってはいる。ただ、誤解しないで欲しいのは、あれを王国側が許可している訳ではないという事だ。長い王国の歴史が生んだ欠点を突く形での逃げ道を利用し、のらりくらりと逃げられ続けて居るのが現状なのだよ」


との事。


 要約すると、ヴァルツァー五爵みたいな完璧に悪事に手を出している場合と違い、税率は基本的に領主が決める事が出来る為、過去に例のある戦時中にかけられた税率と同程度な為に絶対に駄目だと強く弾圧できる法は無く、多くの領民が飢え死にするような事態にならないと王国側から領主の資質無しと処罰する事が出来ないとの事。

では、完全放置しているのかと言えばそうではなく、ヴァルツァー五爵の様な、裏で色々悪事を働いている貴族の対応だけで優秀な人材の派遣は手一杯な為、それらに次ぐ位に優秀な人材でこういった表だって重税をかけるような悪徳領主に対する調査や警告を行っているらしいのだが……領主の側でも色々と大義名分や理由を付けて誤魔化す為に遅々として進まないのが現状らしい。

国をべる王家とはいっても全てを強行出来る訳ではない為、根気良く潰していくしかないとの事。


 その結果、こういった相手に対しては良くて一割の処罰、四割をやや改善、残り五割を現状維持しているという状況らしい。 


「ルーク君が居るという場所も現状維持をしている……正直に言えば、即潰してしまいたい中でも筆頭クラスの人物なのだよ」


だそうだ。


 まぁ、王国側が認識した上でどうにも出来ない以上、私達がどうこうするのは難しいかな。

そう考えていた所に王子から爆弾発言が……。


「そこでエル君に相談があるのだが……君の手札に、人知れず領主が行方不明に出来るようなものは無いかな?」


と、きやがりました。


 出来るかどうかで言えば……出来るだろう。

基本的に、全員を昏倒させてしまえば良いのだから。


 もし闇耐性が異常に高い装備や魔法無効化の魔法具があったら?

その時は、亜人部隊とドールで沈黙させるだけだ。


 何故私自身ではなくドールなのかと言えば、同行して万が一バレた場合に困るからだ。

しかし、ドールと亜人部隊ならば魔物の仕業という事でで押し通せる。

うん、余裕だな。


 しかし、それを王子に言って良いかについては悩む所だ。

王家が後ろ盾になると言われたら考えないでもないが、切り捨てられでもしたらたまったものではない。

実家に迷惑がかかるし、ルークとシェリーの恋に関しても、連れ去る等といった強引な手をつかわなくては成就しない事になる。


「無いとは言いませんが、犯罪を犯す気はありませんよ。家族や仲間に迷惑もかかりますし」


と、相手の出方を伺う為、ある事を匂わせつつもやらないと言っておく事が一番無難であると考え、取り敢えずそう答えておく。


 王子はニッコリと微笑みながら、


「やはり持っているのか……ならば、王家がその行いを承認した上で、協力して貰う事は可能かな?」


と言ってきた。


 王家ぐるみと言うのであれば受けても良いのだが……やはり条件次第であろう。

おそらくだが、王家が承認しつつも表には出せない事例という事になるのだろうから、切り捨てられない為の保証にはならないはずだ。


「王家に認めて貰うのは良いのですが、現状でも対処出来ない事を裏で処罰する以上、どう考えても表沙汰には出来ないと思うのですが。そうなると、実行する私の安全が確保出来なければとても協力する事など出来ません。そこら辺はどうするおつもりですか?」


と、私がそう問うと、


「もちろん、大義名分は用意する。今回の場合は、丁度勇者様が降臨されている魔王復活の期間だしね」


との事。


 意味が良く分からなかったので確認した所、今回の領主の様に民衆をないがしろにするやからはある程度の邪気をはらむのが普通らしい。

一時の憎しみや悪意の感情を抱いただけでも多少の邪気は発生するらしいので、生かさず殺さず自分は贅沢に等と言っている奴等は間違いなくアウトらしい。


 そこで女神神殿に協力を仰ぎ、勇者の邪魔をする悪しき存在を裁くという名目の下、邪気判定に引っかかった者達を処罰してしまおうと言う事らしい。

女神神殿からも処罰する事の許可を得る事で、秘密裏に行うのは混乱を避ける為であって行い自体は正当である事という事になるようだ。

実に素晴らしい言い分ではあった。


 確かにそれならば協力する事のリスクは少なく、国の正常化にも役立つ。

ルークがこの件を気にしている以上、放置する事も出来ないのでそれが最良ではあるかな……。


「そういう事ならば協力しても良いのですが、実際にはどの様に行うのですか?」


と、更に問うと、


「まずはのらりくらりとこちらを手玉にとっている奴等の所に女神神殿の聖職者を派遣して貰い、邪気判定に引っかかった奴等を指定するので、足がつかない方法で処理して貰いたい。そこで、こちらも一蓮托生となる以上、どの様な手を使うのかは明かして貰いたいのだが、良いかね?」


と言ってきた。


 迷宮の事がバレている為に隠す必要も無いので、


「基本的には迷宮を使用して実行部隊を移動させます。この際に迷宮を呼び出す為に移動するのはドールと呼んでいる人型ゴーレムの一種なので、見た目には人でありながら識別系のスキルではゴーレム……即ち、人以外の存在として認識されます。これには私やリーナが同調する事が出来る為、直接行動を制御できますから戦闘力の点でも問題なく、《スティールMP》という魔法で遠距離からMPを削って昏倒させる事が出来ます。また、一緒に行動させる予定なのは全て亜人なので、誰かに見られても魔物の襲撃にしか見えません。むしろわざと見せてしまった方が、こちらの正体を隠せるかもしれないですね」


と答えた。


 王子は満足そうに頷き、


「流石は勇者様の力を持つ者だ。そして、勇者様には無い柔軟性も持ち合わせている。君に相談して良かったよ」


と言ってきた。


 この件に関しては出来るだけ知る者は少ない方が良いこともあり、私達とリーナ以外には国王と極一部の関連責任者と実行部隊、女神神殿の一部だけで行う事になった。

即ち、ルークすら除外されたのだ。

理由は簡単で、ルークは素直すぎる面があるので、今回のような裏で行う汚れ仕事にはあまりいい顔をしない可能性がある。

納得してくれる可能性もあるが、ぶっちゃけルークの協力が必要無い上に亜人部隊をルークに知らせてない現状、わざわざ教える必要は無いということも大きい。

結果、亜人部隊のお披露目は、こんな事もあろうかと! と言えるような状況まで取っておく事にする。

何故ならその方が面白いからだ!!


 そんな訳で、王子は早速その準備に動くという事になった。

リーナの迷宮を利用する事でドール一号の迷宮をこちらの迷宮とつなぐ事が出来る為、早ければ二日もあれば実行が可能だからだ。

ルークと合流できる前に片付けられるのならば、それに越した事はないという理由も大きい。

問題を抱えたままだと、ルークが次の活動に集中してくれない可能性があるからね。


 さて、王子は準備の為にここから去る事だし、私も工房に戻って新たに作らなくてはならなくなった品を作っておきましょうかね。




 ☆ ☆ ☆




 工房に戻った私は、ドールと亜人部隊に装備させる……襲撃用装備を作っていた。

この装備のコンセプトは、実用性よりも見た目が凶悪であったり不気味であったりする事だ。


 まずは、一番目立つミノ太。

その図体の大きさを強調するように、ガチガチの金属鎧に彼の身長を超える柄を備えた両手斧を作成。


 次にオガ吉。

オガ吉も身体は大きいのだが、《闇の魔手》を使用して昏倒作業を手伝って貰う事を考えると重装備はよろしくない為、真っ黒でわざとボロボロな布を何枚か重ねる感じでいく事にする。

結構不気味な感じになって、中々良い感じだ。


 その次はマツリなのだが、ここは敢えて白いドレスにしてみた。

清楚な感じのドレスのスカートから、蛇の長い身体が伸びていく様は結構異質な感じがする。

髪は結い上げ、顔には白いベールをつける事でより一層雰囲気がでるだろう。


 ゴブ助は……。

ミノ太やオガ吉だけでなく、マツリも蛇身部分にボリュームがある為に大きさ的には相当な物となっている。

その為、一人だけ圧倒的に小さい。

正直、どんな格好をしても目立たないだろう。

そうなると……ここは私の趣味でいいんじゃないかな? うん、いいよね!


 そんな訳で、小柄でこういった雰囲気に合うのはと考え、選んだのはカボチャ頭のジャック・オー・ランタン風な奴だ。

この世界にもカボチャはあるのだが緑色をした奴しか見た事が無いため、敢えてオレンジっぽい色に塗った上で腐敗防止の為に水分を抜いてから、透明で硬くなる素材でコーティングしておく。

その天辺てっぺんには魔女風の帽子を乗せ、ボロボロに見える様に加工した足もとまで隠れるマントを準備し、同じ素材で全身が包み込まれて地肌が見えない服を用意した。

中々可愛い姿になると思われる出来栄えに満足。


 後はドールなのだが、私とリーナの中間位の大きさなので正直な所小柄で細い。

ゴブ助は背が低い代わりに横にそこそこあるのでズングリムックリと言う感じなのだが、こちらは本当に小さくて細い為、更に目立たない姿をしている。

見ため的には人だと思われない様にしたいのだが、そこら辺がちょっと悩ましい。


 結局の所、見た目に反した中身だと逆に怪しくなってしまうので、敢えてドールは直球で行く事にした。

人に見えるからゴーレム系と認識されにくいのならば、ゴーレムに見えるようにしてしまえという訳で……木を粉末状にしてから再形成した外部装甲をつくり、敢えてウッドゴーレムに見えるようにしたのだ。

これで《識別》されようと違和感は無いはず。

なら、他の亜人もその方向で良いじゃないかと言われるかもしれないが、それはそれ! これはこれである!!


 正直な所、ドール以外は怪しまれても問題が無いからどうでも良いのだ。

私の顔をそのままコピーして幼くした感じのドールだけは、流石に不味いという感じなので特例って事で。


 そこまでで必要な物は大体揃ったのだが、興が乗ってきてしまったので更に色々作ってしまった。

だが、後悔はしていない!

そして今後もする気は無い!!

問題は、この製作物がお披露目される日が来るかどうかだけである!!!

……無い可能性は高いかな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ